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「フーテンのトラさん」03(モミジの子)

「みぃ物語」(みぃ出産編)で登場した『トラさん』の物語


前回はこちら


「トラさん、あれから気になって気になって眠れなかったわ。」

「ウソつけ!」
「お前、ぐっすり眠ってたじゃねぇか。」

「へへっ、バレてた?」

「まあいいや、分かったから話してやるよ。」



モミジの子


港にはみんなから一目置かれている『タキさん』っていう長老の猫がいたんだけどよ、
本名はえらい難しい漢字で『瀧三』っていうらしいんだ。

本名:滝三(たきぞう)


俺たちは漢字なんか分かんねぇから『タキさん』って呼んでたんだ。

タキさんは年の項もあってえらい物知りでな、人間界にもよく顔が利いたのよ。

俺たちには何も分からねぇし、心配だったからよ、
次の日に仲間と一緒にタキさんの所に聞きに行ったのさ。


なんでも、タキさんの言う事にはな、

モミジの子がよ、ちょっと前から人に触られるのを嫌がるようになったんだってよ。
そのうち元気もなくなり、とうとう食餌もとらなくなったらしい。
心配になった赤い長靴がその子を病院に連れて行った、って訳らしいんだ。

それでよ、一旦入院して様子を見ることになったらしいんだ。

なるほど。
それで昨日は赤い長靴だけが戻って来たのか。

2、3日たった頃にその子は赤い長靴と一緒に軽トラで帰ってきた。
まだ少し元気はないが、自分で飯も食えるようになったらしい。

それを聞いた時は心底ホッとしたぜ。

えっ、その子の病状について知りたいって?

俺たちには全然分かんねぇし、もちろんタキさんに聞きに行ったよ。

タキさんが言う事にはな、その子は

黄色脂肪症(おうしょくしぼうしょう)

って病気になったらしいんだ。


えっ、原因?

何でも魚ばっかり食ってるのが良くないらしいんだ。
特に、

青魚

ちなみに青魚って、マグロも含まれるぜ。

よっ、よだれが・・・


青魚には「不飽和脂肪酸」ってやつが多く含まれているんだってよ。

人間にとっては脳ミソの老化防止に良いっていわれてる

DHA」や「EPA

ってやつらしいんだけどな。

その不飽和脂肪酸ってヤツをいっぱい食べると、皮下脂肪酸化されて炎症を起こしちまうらしいんだ。
そうなると体を触られるだけでも痛くなるらしいぜ。

特に俺たち猫は下っ腹に脂肪がつきやすいだろ?
カーテンみたいに下っ腹がプラプラたるんでるやつもいるくれえだしな。

下っ腹のココ
タルタルしていて、ぷにょぷにょで触ると気持ちいいですよね


まあ、これは「ルーズスキン」っていって別に異常でもなんでもないんだけどな。


まあいいや、
話を戻すぜ。

特にこの下っ腹の脂肪が炎症を起こしやすいらしいんだ。

この病気の名前はな、
酸化して炎症を起こした脂肪が黄色く変色する事から付いたらしいんだ。

イエローファット

とも呼ばれてるらしいぜ。

成長期の猫は大人よりたくさんエネルギーを消費するから、その不飽和脂肪酸ってのが酸化しやすいんだそうだ。
だから、俺らみたいな中年オヤジよりも黄色脂肪症ってやつになりやすいんだってよ。

まあ、俺たちは魚以外にも色々食べてたけどな。

治療というか、この病気にならないようにするには簡単な事らしいよ。
酸化を防ぐ「抗酸化物質」ってのをしっかり摂取してたら大丈夫なんだって。

その抗酸化物質の代表格が「ビタミンE」っていうやつなんだってよ。
だからビタミンE不足になると、この病気になりやすいっていうわけよ。

治療ではそのビタミンEの薬を使うらしいんだけどな。

要は、

「バランスの良い食事をしろ!」

って事だな。

タキさんは面白いことも言ってたぜ。

海の向こうのアメリカって国やヨーロッパって所では、日本よりこの病気は発生しにくいらしいんだ。

海に面してない国の猫はあんまり魚を食べないからなんだってよ。
確かに日本みたいな島国は魚をよく食ってるからなぁ。

国によって俺たち猫の食生活も違ってくるんだなぁ。
あいつらはいったい何を食ってるんだろうな。

肉を食ってんのかなぁ?


魚はうめぇんだけどなぁ。


モミジの子が帰ってきてからはよ、赤い長靴はキャットフードもあげるようにしたらしいよ。
そうするように獣医さんにアドバイスされたんだってよ。

キャットフードってのはよくできてるらしいぜ。
栄養バランスなんかがすごく考えられていて、それだけ食べてればいいんだってよ。

当時の俺達にはキャットフードなんて高嶺の花だったけどな。

おわり



今は個々の動物種に対する栄養学も発達し、キャットフードの質も格段に良くなりました。
そのおかげで、黄色脂肪症などの栄養不良から引き起こされる病気は激減しました。

一昔前には、ドライのキャットフードを食べると、

膀胱結石になりやすい」

と噂になったこともあります。

一部のキャットフードの質が悪く、膀胱結石の素になるマグネシウムなどが過剰に混入していたからです。

今は成分管理もしっかりしていますので、安心できる時代になりました。

それどころか、膀胱炎膀胱結石などの「下部尿路疾患FLUTD)」に配慮されたフードも数多く販売されていますからね。

ちなみに、フードのパッケージに「総合栄養食」の記載があれば、そのフードだけで全ての栄養がまかなえる、という意味です。

ちゅ~る」などのおやつにも、「総合栄養食」がありますので、高齢で食欲がなくなった子のご飯を選ぶ時の目安にされてもいいかもしれません。

それにしても『タキゾウさん』って物知りですね😁


フォッ、フォッ、フォッ、それ程でもないがのぉ




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