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誰かを想い、本を選ぶということ。

子どもたちとお別れをする日が近づいていた。

何か最後にプレゼントしたい……。

「手作り」が苦手な私は大いに悩んだ。

こんなとき、うちの母なら刺繍の入った小物をささっと作るんだろうな。
お菓子づくりが得意な人は、お菓子を作るんだろうなぁ。
文章は好きだから、一人ひとりの詩を書くのはどうだろうか…。


色々考えていたときに、ふと思いついた。

「一人ひとりにあげたい本を選ぼう!」

とっても良い案だと思い、興奮気味に相方に伝えると、

「え……選ぶの大変じゃない?」

と苦笑い。

そっか。大変か……

と一瞬思ったけれど、よーく自分の心に聴いてみると、わくわくする自分がいた。

確かに本が好きな子は少数で、大半はあまり本に普段から触れていない子だった。

でも、だからこそ、本の良さに気づく一冊目をあげられるかもしれない。

それに、プレゼントはなんだって、もらった人にヒットするかなんてわからないのだ。

私がその子にあげたいものをあげる。

シンプルにそれで良いんじゃないかと思った。


さっそく、近くの図書館へ繰り出した。
実際に開いてみないと中の文字の小ささや雰囲気がわからない。

児童書の詩のコーナーに行くと、これまで触れたことのない作家さんがたくさんいた。

子どもたちと何度か詩を書く授業をしてきたので、今回は詩集を中心に選ぶことにしていた。

ズラリ。

本を開いてみると、不思議なことに

「あ、この本はこの子にあげたい」

とその子の顔が浮かんできた。

「お花が好きな子だから、この詩集がきっと合う。あの子はこういう切ない感情もわかる子だから、こっちの詩集にしよう!」

その子にぴったりの本が見つかった時はとても嬉しい気持ちになった。


しかし、そこは図書館。
購入できるわけではないので、ネットで買えるかどうかを探していく。

「な、ない……」

残念ながら、売ってない本もいくつかあった。しょんぼり。
なんとか売っている本を何冊かカートに入れて、注文した。


そして次の日は、県内有数の本屋さんに繰り出した!

大好きな本屋さん。しかし、我が家は田舎なので、その本屋さんまで車で1時間くらいかかる。

「よっしゃ!今日でキメるぞー!」

気合いを入れて、本屋に向かった。

ズラリと並ぶ本。

ささっと決まる子もいれば、何人かはどんな本を買えば良いか検討もつかない子もいた。

「本は嫌い」

そう断言していた子もいる。

ウンウン唸りながら、店内を練り歩く。



およそ半日かけて、13人全員分の本が決まった。

低学年の子には、絵本を中心に。
本が苦手な子には、名言集や図鑑、漫画風の本を選んだ。


さぁ、最後の大仕事は、お手紙を書くこと。

どうしてこの本を選んだのか、この本の中でまず読んで欲しい、おすすめポイント。

そして、
今までのたくさんのありがとうと
最後までいれなくてごめんねと……

あなたのこんなところが大好きだよのメッセージ。


最後の最後の悪あがきだった。

私にできることは、これくらいしかなかったのだ。


本を渡すときに、子どもたちに伝えたことがある。

今すぐにこの本を全部読む必要はないよ。
ただ、そばに置いておいてくれたら嬉しい。
そして、ふとしたとき、元気が出ないとき、本をパラパラとめくってみてね。
そのときに必要な言葉がきっと見つかるよ。

子どもたちにどこまで届いたかはわからない。でも、伝えられてよかったなぁと思う。




言葉が大きな力になることは、ある。

だからこそ、私は言葉を伝え続けたい。


こんなに一気に誰かのために本を選んだことはなかったから、思ってる以上にエネルギーを使ったけれど、とても楽しかった。

もしかしたら、これから私の「好き」の中に「本を選ぶ」ということが入ってくるかもしれないなぁ。


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