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【詩】悪夢

薄暗いトンネルで 僕は見た 
ひっそり咲いた枯れかけの花をじっと見ていて
まるで僕に気づいていないんだ 
たまに君を見かけるけれど 
君は一体誰なの せめてヒントを与えてよ

眠れない夜の終わりに 僕は見た 
数値のおばけに囚われて 
まるで廃人みたいな僕を黙って見ている 
君に頼ったらどうなるの 
あの頃描いた夢を捨ててもいいかな 
せめて僕の悩みを尋ねてみてよ

ホームのはずれで 僕は見た 
今日は深く帽子をかぶっていて 
まるで駅員さんみたいな作業着を着ている 
君だと気づいて目を逸らしたけど 
たぶん君だった 
せめてもう少し上手に隠れていてよ

ビルの屋上で僕は見た 
今日の出張先をなぜだか知っていて
まるで恋人みたいに僕を見つめている 
仕事だったから無視したんだけど 
それじゃダメかな せめてもう少し遠くにいてよ

ある日の午後に僕は見た 
一本の電話に泣き崩れる僕を見て 
まるで僕の全てを分かってるんだ 
その日僕は君に祈りを託した 
彼の願いが報われますように

ある朝 部屋の扉を開けた時僕は見た 
格好は随分ふざけているのに 
君は重い何かを背負っている
僕は思わず扉を閉めたけど
もいちど開けても変わらず君はそこにいた 
君はいつもそんな顔をしていたんだね

ある朝 僕は君を見つめた
君に会うたび幾度も知らないフリをした 
まるで君が存在しないかのように
でも僕はもう目を逸らさない 
大事なことに気づいたんだ

君がいたから僕の人生は輝いた 
一度きりだと分かったから全力で走った

今の僕なら君と話ができる気がするんだ
本気で君と向き合える気がするんだ 

僕は最初から君の正体を知っていた
誰にでもあるエンドライン 
それを引くのは 他でもない君だよね 
今なら受け入れられる気がするよ 
君が告げたそのサインを。

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