KのIするもの【ガンキッズ二次創作】

「もしもし。I-3545148です。」
「ああ。アイか。」平静を装い声を出す。
「先ほど伺ったアドレスに報告を送信しました。」
「受け取った。これで完了だな。どうだ、初仕事の感想は?」
「特にありません。」
「ふっ。優秀で嬉しいよ。これからも続けられそうか?」
「問題ありません。」
「そうか。では頑張ってくれたまえ。」
そこで電話は切れた。
息を吐き出し椅子の背もたれに身体を預ける。
「無事で良かったですね。」
隣から声がかかる。私はその声の主を睨みつける。男はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべている。
「何がいいたい?」
「いえ、あの任務を一人でこなす優秀さと、かつてのあなたと同じ物言いなのがね、血は争えないな、と。」
「ふん。余計なことを。あの子との縁はここに戻ってきたときに切れている。」
「そうですね。それでも心配して朝からずっと報告を待っていたのが親心ってやつでしょう?ね。ケイ?」
「仕事は終わりだ。出ていけ。」

・・・図星だ。今日は仕事にならなかった。
もう十何年と会っていないとはいえ、私の大事な娘だ。
心配しないはずがない。だからこそ事務的とはいえ、声が聞けてホッとしていた。
私は元ガンキッズだった。コードは「K-3545148」
14才から成人するまで活躍し引退して一度は一般社会に入った。
ガンキッズで得た金はあったから働く必要もなかったが、『普通の暮らし』がしてみたいと一般企業で働いた。
そこでつまらない男に出会ってしまった。
愛を知らない若造だった私はその男に愛を囁かれその気になってしまった。
現実を知ったのは、子を身籠り、お金も全てその男に預けてしまった後だった。
連絡のつかなくなった男を昔得たハッキング技術で見つけたら妻子ある男だった。復讐することも考えたが、既に得たお金をギャンブルで使い果たし妻子にも捨てられた後だった。
呆れ、そんな男に捕まった自分が心底バカらしく感じた。
お腹に宿った命はこの世に産まれ、私はこの子のために生きていかなければいけなくなったが生活は苦しかった。
そんなある日、どこから情報を手に入れたのかガンキッズの組織から声がかかった。
私に裏方として組織に戻れ、という。子はガンキッズ候補生として育てられることになった。私はアイにかつての私と同じコードを与えた。唯一の繋がりだった。
そうして私はまたこの世界に戻り、それから十年強。
ボスと呼ばれる座についていた。
私がガンキッズになった時と変わらない世界にうんざりしている。
「不老者」は相変わらず居続け、ガンキッズの役目も変わらない。
表面上、ボスの椅子に座らされても、かつてのボスを始末することさえ出来ず良いように操られている気がする。
「はぁ。アイもこの世界で生きていくしかない。なんとか生き延びてくれよ。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?