ゆうれい

ある日、全国の自治体にこんなメールが届いた。
『○月○日、女子中学生・高校生を誘拐します』
学校・警察は対応に追われ大騒ぎだ。マスコミも大々的に報道している。
俺はそれを見て酷く楽しんでいた。
自分がたった一言でこれだけの人を動かす力を持ったすごい人間のように思えた。
そして誘拐事件は起こらず、警察は愉快犯と断定した。
・・・しかしそれは誤りだ。
俺は実際に誘拐をしている。
とあるカリスマ女子高生のSNSを全て乗っ取ったのだ。
その女子高生になりきり様々な投稿をする。
するとたくさんの人々が私を褒め称える。
とても気分が良い。

・・・しかしそれも長くは続かなかった。
偽物の私では人々は徐々に離れていき、コメントもあっという間に無くなった。

私はまた誘拐予告をし、またSNSを乗っ取った。
しばらくは自分はこれだけ影響力のある人間だと優越感に浸り楽しかった。
でもすぐに終わってしまう。
ある日またSNSを乗っ取った。
若者に絶大な人気を誇るカリスマ男子高生らしい。
今までは女性アカウントを狙っていたが、男性なら女性ウケすることを書けば良いのではないかと考えたのだ。
次の日から早速投稿を始めた。
すると、コメント欄に「ゆうれい」などと書き込まれることが気になった。
なんとその男子高校生は私がSNSを乗っ取った翌日に不慮の事故で亡くなっていた。
ファンの子達がそれでも更新されるSNSを注目し、大騒ぎしてくれている。
注目を浴びて、一言投稿するだけで喜ばれる。
中には彼が亡くなったのは嘘で、まだ生き続けていると信じる子までいる始末だ。
私は使命感に駆られた。俺は俺自身をこのカリスマ男子高校生だと思い込み、多くの投稿をしてファンに褒め称えられた。
しかし、半年、1年が過ぎると私は忘れ去られて行った。
ファンは居なくなり、誰からも相手にされなくなっていった。

そして・・・現実世界の俺の存在も、何の価値も無く居ても居なくても変わらない幽霊だと気づいた・・・。

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