読書感想文 11

日本人はなぜ海外で通用しないのか?(2012) 森和明著、田中良和共著、日経BP発行


 今回は、日本サードパーティの代表取締役 森和明さんとエグゼクティブディレクター田中良和さんが共同で書かれた本です。
これは、いわゆる「表紙買い」で図書館で借りました。
 このごろ円安の影響か、海外留学やワーキングホリデーに向かう人が増えてきて、日本人が海外に目を向けているとはいえ、あまり海外に移住して、仕事してる人の話を聞きません(noteには、チョコチョコいらっしゃいますが)。
 世間に聞いても、外資系コンサルや日系大企業による出向、ひろゆきさんとかGACKTさんなど有名人、あまり身近に感じられない出来事ばかりです。
 では、個人で海外で働くには何が必要なのかなぁと、考えていたらこの本が目に入ったのです!
 著者がまとめた情報を一部抜粋して、感想を述べていきます。電子書籍がなさそうだったので、紙の本のリンクを貼ります。

低迷し続ける国際競争力

 この本で紹介されているスイスのビジネススクール国際経営開発研究所発行の国際競争力年鑑(IMD世界競争力ランキング)によると、2011年度の日本の順位は59カ国中26位だとのこと。真ん中くらいですが、この時すでに他のアジア圏の国々からは突き放されてしました。
 1990-1993は 世界第1位だったのに
(JAPAN AS NO.1と現在50代の人が新卒の時代)
 2001年までに 23位に転落
 2011年度には  26位となっています。
 ちなみに、2011年度の1位は香港、米国、3位はシンガポール、6位は台湾、9位はオーストラリアです。日本はアジア圏最下位らへんと言っても過言ではないとおもいます。
 2023年度は  何位でしょう?
 答えは35位です。12年で10位のランクダウン!まあ今時ランキングとかで比べるのは精神衛生上よろしくないですが、世界の認識的に日本国の地位がわかる指標の一つですね。
 リンクを埋め込みましたので、そちらから詳細に行けます。
 ちなみに2023年度の26位はエストニアでした。流石は電子ビザ先端国ですね。

 著者はこのランキングの評価項目の「起業家精神」と「語学力」に着目し、これを「人材力」の低下と指摘しています。人材力とは企業や組織が個人の能力を活かす力と述べています。
 この問題を調べるため
  1.採用システム
  2.人材育成
  3.人事評価
 の3点から著者は解決策を探りました。

コミュニケーション能力とは何か?

 著者は多くの若者が勘違いしている能力は、「コミュニーケーション」だといいます。著者は以下のように述べています。

 大半の学生は「コミュニケーション」=「明るさ」「社交性」と勘違いしているようです。国語辞典によれば、コミュニケーションとは「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。」(『大辞泉』小学館)
 企業活動に当てはめると「プロジェクトや会社の目的、考え、方針を十分に理解し、なおかつ同じチームで働く仲間や上司、取引先、ユーザーに正しく伝えることができること。さらに異なる意見があればそれを受け止めた上で、より良い仕事を進めることができる力を持っていること。」となるのではないでしょうか。

P.37

 これを見た瞬間、求められるレベル高いなぁと思いました。私も勘違いしていた学生だったので、ESと履歴書には「高いコミュニケーション能力」と書いてましたね(笑)
 普段、管理職と上司に報連相すると大体、ちょっと考えなおしてきなさい!とか、そんなこと言われても困る!などの第一声が飛んでくるので、著者の言うコミュニケーション能力は、私は低いといえるでしょう!
 新たなスキルを得るリスキリングではなく、すでにあるスキルのレベルアップをしなければ!とおもいました。もしかしたら、学生時代に、ボッチだった経験が響いているのかもですが(笑)だがいい経験だったので悔いはないです。

日本と海外の採用システム

新卒一括採用は世界の非常識
 海外では、日本の大卒就活生のような、スキルや経験のない人材を雇うことはほぼないと言います。
 このため海外の学生は、自分の将来性を雇用の判断基準としてくれる国や企業に流れる傾向があると筆者は述べています。
 この本の巻末では、米国の企業のITエンジニアやSEに応募するための条件が載っています。たしかに、どれもコンピューターサイエンス等の学部を卒業し、何かしらの実績や開発経験がないと応募できないようになっていました。
 私もメルボルンの大学時代に、キャリアセンターへ就活について聞いたところ、とにかくインターンに行け!と言われましたね。あれはおそらく、コネ作りや実績つくりがメインだったのでしょう。まだ大学1年の後期だったのですが、意識の違いが如実に表れているエピソードですね。

 それと比べると日本の新卒一括採用は、楽なように見えますが、新卒一括採用もいろいろな弊害があるといいます。
 その1つとしては、日本の就活生は、企業の情報が入手しづらいこと。
 リクナビやマイナビなどは、まとめサイトとしては最適ですが、企業ひとつひとつ調べるには膨大な時間がかかります。
 このため、著者も述べていますが、CMを出してるような有名企業でないと学生は知らないので、BtoBのような会社は選ばれない傾向があるとのこと。BtoBの会社は、有名企業の屋台骨なので人手不足で大量引退になると、全てがストップするでしょう。
 私も1社目の会社は、日系のBtoBの企業に勤めましたが、出会い方は、説明会で人事の方と面談したからでした。知名度がないのがネックだわぁと人事の方も嘆いていました(笑)

日本の人事は、現場との相違を恐れて、無難な人を選ばないといけない。
 会社の人材方針は現場の望む人材とかけ離れることが多いという。
これは何も経営者と現場の折り合いが悪いからというわけではないと思います。
 著者は、会社が「新しい価値観を持った変革を求めている人」を求めていて、その人を雇ったとしても、現場からは「即戦力にも、基本的なこともできないやつ」として文句を言われることがある、これが人事のジレンマだ。
 このジレンマ回避のため、統計的に問題のある人が多いとされる「高学歴ではない人」「既卒者」「留年経験者」「個性の強い人」は採用から疎遠となっていく。この現象を、著者は、マイナス思考、原点思考の典型的な弊害と述べている。
 一般的に難関大学の入試問題は、記憶力や情報処理能力を駆使して解く問題が多く試験を突破した人はその能力が高いため、日本の人事評価の「職務遂行能力」が優れているとされてきたという。

しかし、今のAIやITの進展により記憶力や情報処理能力の価値はほぼなくなってきている。
この考え方は教育に浸透して欲しいと私は思います。

 それでも、勤勉さの尺度(高学歴は幼少時から真面目に取り組んできた人が多い〕として、学歴を重視した選考になっている。
 これは明治期の国力増進のための官僚養成機関として国立大学の時の入試条件となんら変わっていないらしい。
 政治の腐敗と官僚の質の低下と大学の質低下の相関性が気になりますね。

日本と海外の人材育成

 日本では、人事評価が職務遂行能力(次に説明します)のため、職務の能力があることを示す資格は意味がないや、社員に教育を受けさせても、思った通りの効果が出ないなどの意見が多々あるとのこと。
 しかし、これでは「グローバル化」の波に溺れて死ぬので、米国の人事育成の例を著者は紹介しています。
 「グローバル化」により、我々は日本国内の優秀な人だけでなく、日本の賃金より安く働いてくれるベトナムやインドなどの先進国や、アフリカやバングラディッシュやミャンマーなどの発展途上国の優秀な人と仕事をめぐって争うことになります。経営者目線としては、安く雇える優秀な人材が欲しいわけです。(これも日本の賃金が上がらない悪因の一つかなと思います)
 つまり、今話題の「リスキリング」の波は、自分の仕事を見つける方向性としてはあっているのです。
 ところで、なぜ米国はすぐやめるかもしれない社員に日本と比べて手厚い教育を施すのかというと、著者はこう説明しています。
 1つは積極的な人材育成が企業の業績向上に直結すると広く認識されているから。
 もう一つは優秀な人材を繋ぎ止めるため。人材櫛が豊富にない企業には、優秀な人材アイビーリーグ以上の大学生は興味がないとのこと。なぜなら自己成長できなさそうだから。
 この2つの理由からでも、競争社会と資本主義の最先端を行っているUSAの構えが見て取れますね。
 アメリカの在職年数は4.1年らしいです。私の外資コンサルの知り合いは2,3年で転職するのが普通と言っていました。これだけ短い期間しかいない社員に教育を施せるのは、実績ができなさそうならすぐ辞めさせるというものと表裏一体なのかもしれません。

 アメリカは在職年数4.1年と紹介されていた記事がこちら


日本と海外の人事評価

 日本の企業内では「情意考課」「業績考課」「能力考課」の3つの観点から評価されることが多いと著者は述べています。
 わかやすくすると
 情意考課=取り組み
 業績考課=成果
 能力考課=個人の能力
完璧そうだが、穴が多いのが現状です。
 その穴が以下3つです。

1.曖昧な評価基準
2.減点評価
3.  フィードバックがない、評価の内容は秘匿である。

 まあつまり、モチベーションを下げる方向でしかないということですね。

 一方の米国の場合以下の点を評価するとのこと
・人を評価するのではなく、職務を評価する
・絶対評価ではなく、相対評価で行う
・事前に明文化された職務分析、職務記述書に基づいて評価する
・同一職務に対する基本給は同一
・評価の内容はオープンである。
 これが職種ベース基準となります。
 社員のモチベーションが上がりそうな評価項目ですね。

 さて、この日本独特の評価基準はどうやってできたのでしょうか?その歴史を、著者が下の表にまとめていたので抜粋します。

日本式コンピテンシー、
 日本の場合は担当している仕事で期待してるミッションに対してどの程度達成できたかという「職務遂行度」が評価されている。「成果に結びつける過程で発揮した能力」が評価されるのが日本式コンピテンシーです。
 しかし日本式コンピテンシーでは、グローバルに通じる人材にはなれないと著者は述べています。
 最大の問題点は職務の評価がされないこと。
グローバルの人材評価基準は、「専門性」にあるため、各々「専門性の棚卸し」が必要となっています。この棚卸し方法も紹介されていますが割愛します。

日本式コンピテンシーの説明はこちらが詳しいです。

1980年代まで
年功序列型 
・年齢、役職、勤務態度を重視
・人物評価(イエスマン、忠誠)
・イレギュラー、例外を嫌う
・上司の好き嫌いが影響力を持つ

1990年代前半
能力主義型
・担当職務に求められる「能力」重視
・さまざまな職能資格制度の運用
・職能=職務遂行能力という曖昧さ
・上司の好き嫌いが影響力を持つ

1990年代後半から現在
成果主義
・行きすぎた成果重視(業績・利益)
・日本型職務主義の登場
   -欧米型職務主義とは大きく異なる
   -結局職務の遂行度を重視

p100より引用


グローバルで働ける人材になるには?

著者はグローバルスタンダードで働ける人材がこれから働けるとのべています。

世界基準を見てみようということで、
以下の二つを例に挙げていました。

英語スキルのTOEICとTOEFL

ITスキルのLxe2(エル・バイ・イー・ツー)

どちらも世界基準で設けられており、どの国でも通用する資格となっています。

これからは世界で通用する資格を取るのがメインとなって欲しいですね。

 私的には、世界で通用するためにはまず、世界基準の教育を受けるのがいいと思うので、下記に著者が紹介していたインターネットで授業が受けれる大学を紹介します。

オープンエデュケーションの試み
マサシューセッツ工科大学のオープンコースウェア(OCW)構想,

<https://ocw.mit.edu>

Currikiという米国発オープンな教育プログラム
紹介サイトはこちら
<https://www.curriki.org>

米国のをモデルに日本版を立ち上げ
紹介サイトはこちら
<https://oe-japan.netlify.app>

今までにない長文の感想文となりましたが、これは個人的には備忘録として使わせてもらおうかと思ってます。
サードパーティの会社はベンチャーとしても成功しているので、成り立ちにも興味が出てきました。

ここまで読んでいただきありがとうございました😊





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