ささいだけれど、好きな瞬間

自転車で坂道を下る瞬間。
あの時だけは無になれる。

しばらく話していなかった友人からのLINEを見つけた瞬間。
ああ、まだつながっていられたと思うことができる。

社内電話で出た相手が知り合いの時、わたしだと気づくや否や声のトーンが下がる瞬間。
丁寧さの仮面を外してもらえてる気がする。

全く信号に引っかからず職場にたどり着けた瞬間。
今日はいい日になる気がする。

買い物をした時、おつりをぴったり払えた瞬間。
小銭が500円玉しかないだけで心も財布も軽くなる。

おばあちゃんの料理を久々に食べた瞬間。
なんであんなに美味しい料理を作れるんだろうか。

目が覚めたときに時間を確かめたら、まだ5時と分かった瞬間。
あと1時間眠れる嬉しさをかみしめながら吸い込まれていく。

年越しの時に飛び跳ねる瞬間。
年甲斐もないけれど、新しい時代へ飛び出していく感覚がする。

友達がくれた桃の紅茶の香りのハンドクリームをつける瞬間。
さわやかな香りが、わたしを満たしてくれる。

いつもありがとうございますと感謝された瞬間。
「いつも」頑張ってきて良かったと思わせられる。

久々に会う友達が、おしゃれをして来てくれていると気づいた瞬間。
わたしがあの子にとって、おしゃれをしたい存在になれていることを嬉しく思う。

だからわたしも、毎日を乗り越えられている。