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小説を書けば何かが変わると信じて

 前回の続きです。

 戦場から無事生還した(?)私が次に向かった先は図書館。

 転職を機に引っ越してから5年も経つというのに、自宅近くのこの図書館に入るのは初めてである。目的は創作小説の資料集め。決して広い、充実しているとは言い難いが、それでも参考になりそうな書籍を4冊も発見。せっかくなので他のコーナーも一通り巡回したが、普通に漫画本もあることに驚かされる(今では普通なのか?)。しかも『君に届け』全30巻あるやんけ。知っていれば昨年メルカリでまとめ買いなんてしなかったのに。

 それはそうと、前述の4冊を手に取り閲覧席へ。1冊目を開き、読みながら大事な部分をルーズリーフにメモしていく。図書館で勉強していた学生時代を思い出す。やはりアナログも悪くないと思っていた矢先、手が止まる。まだ30分も経っていない。

 ネタバレになるので詳細は省くが、私はとある社会問題を、少しだけファンタジー要素も交えながら書こうとしている。よって、調べれば調べるほど心が痛む。精神的に図書館での作業続行は不可能と判断し、利用登録をしてカードを作ってもらい、ユニクロのセルフレジみたいなシステム(機械に置くだけで書名や冊数を認識してくれる)で貸出手続きを行い、4冊を持ち帰ることに。

撮影禁止なのでイメージの近い写真をネットから借用。今や本の貸し出しもセルフの時代。


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 人には適性がある。時々エッセイを書いてスキをいただけるならそれで良いではないか。苦労して心を痛めてまで小説なんて書かなくても良いのではと思う時もあった。実際noteには5ヶ月も書いていない。もっと言うと、昨年まで6年間も創作小説を書いてこなかった。世間との実力差に挫折していた時期があったからである。


※ここからは、『私が創作小説を一旦諦め、再び書くようになるまで』をテーマに、少し長い昔話が始まるのでご了承下さい。

 2014年に即興小説トレーニングというサイトに出合ってからは、週1ペースで作品を書いていた。「お題」と「必須要素」の2つの単語がランダムで与えられ、それをもとに超短時間(最短15分~最長でも4時間)で執筆するというもので、完成品を仕上げるというよりは「書くトレーニング」をする為のサイトである。

 しかし、そのサイトでは毎週土曜の22時より『即興小説バトル』というイベントを(今でも)開催している。参加者は開始ボタンを押すと初めて現れる共通の「お題」と「必須要素」をもとに「1時間で」作品を仕上げなければならない。私はこれに一時期毎週参加していたが、どうしても考える時間が長くなってしまい、なかなか文字数を多く書けない上に未完のままタイムアップになることも度々あった。

 ちなみに貴方は、いきなり振られたお題で、1時間で何文字書けるだろうか。

 私は平均で1300文字くらいしか書けず、2000字すら滅多に超えなかった。しかし、他の参加者の作品は2000どころか3000字も余裕で超えてきている。そして何より内容である。本当に1時間で書いたのかと疑うレベルの完成度。ストーリーはもちろん、文章表現も美しい。このイベントだけは皆トレーニングではなく「完成品を仕上げて」いるのである。

 これの何が怖いかと言うと、たった1時間でこのレベルを仕上げてくるのなら、じっくり何週間、何ヶ月も時間をかければもっとクオリティーの高いものが出来上がる、それを出来る人が世の中にたくさん居るということである。もっと言うなら、それを仕事にせず趣味でやっている人たちでそれである。創作小説の世界の現実を知った2015年、私は一旦は身を引いてしまった。

 その後、私のブログではアニメや漫画、声優などの感想・考察・論説文を多く投稿するようになった。これ系の文章が上手くなれば副業でネットニュースのライターに就けたりしないかなと淡い期待を抱いていた。しかし文章力は一向に上達しない。何より創作から逃げたことで家では何もせずダラダラ過ごす時間が多くなってしまった。

 あっという間に5年が経過し、2020年7月にnoteを開設。しかし当初はブログの延長線上で感想・論説文を書いているだけだった。投稿頻度もとんでもなく少なかった。そしてまた1年と数ヶ月が過ぎ、私に大きな転機が訪れる。

 忘れもしない2021年12月9日、スピーチ社長激怒事件の発生である。

 事の顛末は上記の記事にも書いているが、私は話すのが大の苦手だったことに改めて気付かされる。この頃の絶望感と言ったら半端なかった。話せないなら、せめて文章を頑張りたいと思うようになった。悔しさをバネに、思いの丈をnoteにぶつけ、12月18日にはnote初の創作小説をUPしていた。

 そして年が明け、皆様からのスキやフォローが増え、あまつさえエッセイでグランプリをいただいたことも文章への自信に繋がり、春までに4000字以上の短編小説を2作品仕上げ、その後も2作品だけショートショートを執筆し今に至る。


 あの時社長が私のスピーチにダメ出しをしたからこそ今がある。自分には文章しかないと気付いてから、noteを本格的に書くようになってから、少しだけとはいえ確実に人生は変わった。ここでまた小説を1つ仕上げれば、やはり何かが変わるかもしれない。社会問題を取り扱うだけに、確実にメッセージ性の高いものを作ろうとしている。少なくとも自分の中では何かが変わると信じている。


 そして最大の目標は、話し上手な陽キャへの逆襲である。「お前らはただしゃべっているだけで何も残していないんだよ」と、いつか自分の作品を見せつけてやりたい。

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