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当方128の『ちょっとだけ怖い話』

 10数年前、職場でパワハラを受けていた。

 当時、ゴリゴリの現場系の仕事を2つ経験していた。一つは主に大型の「テント倉庫」を建設する仕事、もう一つは建設現場の「足場」を組み立てる(「とび職」とも呼ばれる)仕事である。特に後者は日中、街を歩けば一度は見かけるお馴染みの職業だと思う。

テント倉庫
テント倉庫(左)と足場(右)

 こういう現場系の仕事には、いわゆる元ヤンや不良経験者などの強面や、気性の荒いおじさんが多数従事している。そこに気弱で臆病な人見知りの私が加わるとどんな人間関係になるかはお察しだった。

 とはいえ、パワハラの9割は「怖い」よりは「面白い」の感情が勝っていた。17時に仕事が終わるや否や私はコンビニへスーパードライを買いに行かされ、上司3人と1時間ほどの強制プチ飲み会。ほぼ毎日そうだった。ある日はカラオケパブやカタカナ4文字のあの店なんかにも連れて行かれたが、自発的には絶対にしない貴重な経験だったので、それ自体を苦には思わなかった。誰かの「お前、地味だから髪型変えろよ」の一言が盛り上がり、その日のうちに床屋へ連れて行かされパンチパーマになったこともあったし、人生初の茶髪染めも上司の手によるものだった。

 その一方で、確実に「怖い」パワハラも存在した。車を運転させられるのはまだ良いとしても、エンジンを2000回転以上吹かすだけで燃費がどうとか文句を言われる。これは実際にやってみれば分かるが、アクセルをミリ単位で優しく踏まないと3000回転は余裕で超えてしまう。ナビがあるのに何故か使用せず、現場までのルートは全て暗記しなければならない。現場はどんなに疲れても走って移動、15kgの資材を担いでいても例外ではない。他にも返事は大声で、休憩中も作業の説明を逐一聞かなければならず気を抜けない、1時間あるはずの昼休みが10分に削られるなど、枚挙に暇がない。怒られるのは当たり前で殴られる、蹴られる、胸ぐらを捕まれることもあり、精神的なダメージは大きかった。

 そんなこともあり、この2つの仕事は長く続かなかったが、打たれ強くなったり肉体が鍛えられたりと、得るものもあった。

 その後、1年間だけ漫画喫茶で働いていた。そこでもパワハラはあったのだが過去の記事に書いていたので省略する。そのあとの10年間は幸運なことに少しはまともな会社に入社できた。コンビニに5年半、そして現在も勤務する小売店は今月でちょうど5年になる。しかし、実は真の「怖い」を味わったのはその2つの仕事だったのである。

 まず、コンビニにはクレーマーという恐怖の存在があった。これも挙げたらキリが無いのだが、その片鱗は過去記事に残していたので詳細は省く。

 そして今の小売店が会社組織としても私の人生で一番まともである。社員が多い割にはパワハラをする人が全く居ない。だからこそ、時々ある「上司の本気の怒り」がトラウマレベルで怖いのである。「あなたは最低な人間」「その言葉が出るということは、俺の話を本当に理解しているのか」「新入社員ならまだしも、何年もやってこの程度とは」……厳しくも全てが正論の言葉の数々は、100%ストレートに喰らい、ガードも受け身さえも取れずに倒れるしか無かった。しかも気持ちを引き摺り、1~2週間は立ち直れない。

 ***

 何が言いたいかと言うと、「滅多に怒らない上司がたまに正論で怒る時」が一番怖いのである。それを知った今、改めて10数年前のパワハラの日々を振り返る。確かに毎日怒られたり殴られたりするのは辛かったが、そんなの慣れてしまえばどうってこと無かったはずだと今の私なら思える。未熟さ故に味わった当時の「怖い」は、心の成長した今なら「ちょっとだけ怖い」に置き換えられるのだろう。今の仕事の上司もいつか「ちょっとだけ怖い」と思えるように、もっと強い心を持ちたい。


 みょー様の企画に参加させていただきました。コンテスト常連の方々が早々に記事をUPしており焦りました。出遅れた感があり申し訳ありません。これまでで一番難しかったお題なので、これで良いのかも分かりません。もし何かあれば遠慮なくお申し付け下さい。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

#ちょっとだけコンテスト


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