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思い出の鳥を探して

 会社で転職したいという話を改めて行った。元々別の部署に移るという選択肢があるということを提示された上で、どうするか考える猶予をもらっていたが、最終的には転職するという意思を伝えた。上司は残念そうにしていたが、私と教育担当の劣悪な関係に加え、会社の経営状況もあまりよくないということを言われては、残る気もなくなるというものである。諸々あったが、退職する方向で話がまとまった。これでようやく教育担当から離れられる。嬉しい話である。

 先日、美術館に行ったということは、以下に書いた通りである。

 これに加えて、別日に博物館にも行っていたので、そのことについて書いていく。

 博物館に行ったのは、先の美術館の近くなのでアクセスがしやすかったというのもあるのだが、一つ理由がある。その博物館に昔行った際に観た展示をもう一度みたくなったのである。

 それは鳥の剥製(実際は剥製なのかどうかわからないが、便宜上剥製と書く)で、とても綺麗な色をしていたことを覚えていた。それがどこで観たものなのか覚えておらず、長らくどこにあるのかわからなかったのだが、先の美術館をネットで検索し、ついでに出てきた博物館のサイトを開いたところ、見覚えのある展示をしている部屋の写真を見つけたのである。おそらくここだとあたりをつけて、今回本当にそれがあるかを確認しに行ってみたのだ。しかもありがたいことにその展示は常設展である。つまり、いつ行っても観れる。時期を気にする必要もないので予定が空くまで待ち、今回向かった次第である。

 しかし、所在がどこなのかわからないと言いつつ、こんなに近辺のところだとは思わなかった。かなり、というより相当有名な博物館であり、昔から活動範囲ではあるので驚きはしなかったが、それならもっと早く見つけられていたような気もする。私の情報収集能力が低かったと判断せざるを得ない。

 例によって遅い時間に到着してしまった為、観ることのできる時間は2時間ほどだった。懲りもせず、2時間あれば常設展の展示くらいひと通り観れるだろうと思っていたが、案の定観れなかった。

 なにしろ、常設展だけで建物が2つ、それぞれ4階分ほどはあるくらいの量である。その中にみっちりと展示が詰まっているのだから丁寧に観ていては2、3時間ではとても足りない。最初の展示だった、生命の誕生についての話からゆっくりと観ていたが、これでは間に合わないとスキップして、お目当ての展示を先に探すことにした。

 途中見覚えのある展示をみつけて、こんなのもあったななどと思いながらエスカレーターを登り、かつて来たことのある展示室までやってきた。よく聞く話であるが、記憶よりも小さく見えた。展示物が小さくなるはずがないので、私が大きくなったということである。動物の剥製がいくつも展示されており、当時はその大きさと数に恐怖を感じたものだが、この歳になるとそんなことも全く感じない。映画『ナイト・ミュージアム』のように、動き出してこちらに走ってきたら悲鳴を上げて逃げる自信があるが、ここにエジプトの石板がない以上、彼らはガラスの向こうで静かに佇むのみである。

 展示室をぐるりと回って壁沿いに歩き、目的の展示を探した。お目当てのそれは中央にデカデカと展示されているのではなく、壁のガラスケースの中に展示されていたはずだからである。記憶の通り、鳥の剥製の展示があり、多種多様な鳥が並んでいた。

 問題はここからで、お目当ての鳥は綺麗だったとしか覚えておらず、名前を把握していない。何なら、何色だったかも定かではない。正解がわからない状態で見つけられるのかと思ったが、当時の感性がまだ私に残っているのなら、同じ鳥を綺麗だと思うはずである。一つずつ細かく観ていき、これだと思う鳥がいないかどうかを探していった。


探すこと5分、思っていたよりも早く見つかった。

 『アカノドミミカザリインコ』というのだそうだ。小さい頃、下から観て、綺麗な鳥がいると思い、見える高さまで持ち上げてもらったような気がする。もう持ち上げてもらう必要もなく、同じ目線になることができるくらいの時間が経ったけれども、今の私が観ても綺麗だと感じる鳥であることは変わらなかった。

 緑を基調とし、赤と黄色が胸と頭に混じっている。加えて、写真ではわかりにくいが、羽の先が青みかかっている。緑、赤、黄色、青という4色が含まれたカラフルな色合いを、昔の私は好んでいた。だからこそ、この鳥が気に入って覚えていたのだろう。随分と時間が経ったにも関わらず、撤去されたりせずに今でも居てくれてよかった。

別角度からの写真
こちらの方が羽が青いのがわかりやすい

 目的を達成した後は、どうせ順番通りに観て回っても閉館までに見切れないからと、気の向くままに興味のあるところへ行って展示を見ていた。やはり、小さい頃に来た時は何のこっちゃわからないようなことが多くてつまらなかったように感じたが、大なり小なり知識を身につけた状態で観るとまた違った感想がある。

 今回全てを観ることができなかったので、またの機会に見に行きたい。どうせなら企画展を観つつ、常設のものも改めてみたいが、企画はしばらく好みのものがなさそうなので、しばらく先になりそうである。加えて、今回行った時は人が多く、じっくり観ることができなかった。そういった意味でも、行くタイミングを見計らうようにしたい。

 しかし、美術館といい、こういったところに行くことが楽しいと感じられるようになったのは、教養が増えたように感じて嬉しくなる。知識など大したものを持ち合わせていないが、それとなくわかるくらいには学びを深めたいものである。

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