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オーバーツーリズム抑制に通訳案内士ができること

インバウンドが活況を呈しています。コロナ明けの旅行意欲の高まりや、歴史的な円安、それに世界的な日本ブームなど、追い風にのってインバウンド系の旅行会社や国内ホテル業界は、大変な好景気に沸いています。
 
通訳案内士も、仕事を得るのに苦労しなくなりました。黙っていても、あちこちの旅行会社から、仕事の紹介があるでしょう。うっかりしていると休みがなくなってしまうので、あえて仕事を断る勇気も必要です。数年前には考えられなかった素晴らしい仕事環境になりました。
 
ですが、ふと現実に返って実態を眺めると、どうでしょうか?有名観光地はどこも大混雑、人気の施設は長蛇の列で時間をロス、移動手段もままならないという、オーバーツーリズムと呼ばれる状況になってしまいました。これで日本旅行を心から楽しんでもらうことができるでしょうか?
 
最前線にいるガイドとして、お客様に本当に日本を楽しんで頂くためには、旅行会社が作るありきたりのコースでいいのか?そんな疑問を感じることがある方は、ぜひこの投稿を読んで、実践してみてください。


オーバーツーリズムはなぜ起きるのか

 
多くの有名観光地で、オーバーツーリズムの問題が顕在化しています。公共交通の機能不全で地元住民の生活が脅かされる、旅行者のマナー違反による迷惑行為が目に余る、ホテルが満室で出張の宿が確保できない、等の問題が起き始めています。
 
特に京都はひどい状況で、真夏の炎天下で長時間立ったままで車を待つような状況になると、熱中症のリスクすらあります。東京は京都に比べればややましですが、それでも築地市場や竹下通り、仲見世といった場所は歩くのが困難なくらいの混雑です。
 
なぜこのようなことになっているのでしょうか?
 
第一に、訪日客の数が急増しているためです。円安もあって日本は特に人気の観光地となっていて、2024年は過去最高だったコロナ前の2019年よりも、約10%多くの外国人が来日しています。コロナ期間を考えれば、昨年来の急激な増加に、受け手側の体制が追い付かないのも仕方ありません。
 
また、昨今はSNSの影響で、特定のスポットがインターネット上で人気が出ると、その場所に観光客が殺到するといった現象が見られます。飛騨高山とか、富士山とかは、まさにその典型ではないでしょうか。もはや秘密のスポットなど無くなったと言えるでしょう。

お客さんに地方へ行ってもらうためには

 
特定のエリアやスポットに集中している訪日客に、ぜひ違った場所へ、まだあまりインバウンドが訪れていない地方に行ってもらいたいものです。メジャースポットからちょっと離れただけで、魅力的な場所がたくさんあると思うからです。
 
では、どうすれば訪日客に、そうした地域へ行ってもらえるのでしょうか。
 
大手旅行会社が企画を立てれば良いではないか、と思うかもしれません。ですが、旅行会社の旅行プランは、一年前からスタートしています。つまり、今から新たなプランを考えても、それが世に出るのは一年後になるということです。また、大手旅行会社は実績のあるプランに頼りがちで、新たな企画に取り組むのは大変です。
 
一方、受け手側の地域も、大手旅行会社が得意とする団体旅行で、訪日客が訪れることを望んでいるでしょうか?そうではないと思います。それぞれの地方は、自分たちの独自の魅力を理解してくれる旅行者を望んでいます。団体旅行はバスで訪れ、表面的な観光をして、短時間で次へと移動していきます。地域側の期待値とは、明確にギャップがあるのです。
 
そもそもキャパの限られた地域に、観光客が大挙して訪れても、新たなオーバーツーリズムを生むだけです。多くの地域が期待しているのは、個人や少人数のグループに、じっくりとその地方の良さを紹介し、地域のファンになってもらうことではないでしょうか。ここに、個人客の案内を得意とする、通訳案内士の役割があると思います。

通訳案内士が地方の魅力あるスポットを紹介しよう

 
では、通訳案内士ができることに、具体的に何があるでしょうか。
 
通訳案内士、特に地域に根差した活動をしている案内士さんは、地域の歴史・文化に精通しており、地域に対する強い愛情を感じているはずです。質の高い訪日客の方々は、こうした案内士さんの情報を何よりも喜びます。ですから、地域の案内士さんには、ぜひFIT(個人や少人数グループの自由旅行)相手のガイドを目指して欲しいです。
 
そのためには、自ら情報発信をして、個人旅行客と直接つながる方法を考えましょう。旅行会社の仕事を請け負っているだけでは、有名観光地を案内する仕事ばかりになってしまいます。FITなら、来日前からお客さんとの対話ができ、自身が勧める地域のスポットに足を伸ばしてもらえる可能性があります。
 
手前みそですが、通訳案内士のこうした仕事の仕方を促進するため、私の会社では地方のガイドを探している、個人訪日客の紹介業務をしています。旅行プランの作成は、ガイドさん自身が行うというところがポイントです。興味のある案内士さんは、以下のウェブサイトをご覧ください。気にいった方は、ご登録いただけると、地元での業務をご紹介いたします。

まとめ

 
「オーバーツーリズム解決に、通訳案内士にできることがある!個人旅行客とつながり、自分の勧める地域に訪日客を案内しよう。」 でした。
 
最後まで読んでくれてありがとうございます。よかったら「スキ」も押してくれると嬉しいです。

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