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遺作に別れを告げるべきか

 いまはもうめっきりやめてしまいましたが、私はかつてアンソロジーの主催をしていたことがあります。

 当時はTwitterの知り合いを募って短編小説やエッセイをまとめて一冊の本にしていました。

 これが思った以上に大変で、締め切りを平気でぶっ飛ばしたり、お願いした宣伝にちっとも力が入っていなかったり、本当に本当に多くの人間を恨みました。

 原稿料が少なくて不満だったのか、そもそも発表することに関心がなかったのかはわからないけど。

 もちろん半分くらいは真摯な対応をしてくれるのだけれど、そういった人たちの厚意を無下にするような杜撰な対応がすべてをめちゃくちゃにしてくれたもんです。

 ともあれ、今回の本題はこれではありません。
 あやうく締切ダークサイド記事になるところでした。


 私の遺作のなかで印象に残っているのは一冊の絵本です。

 デザインを見てもらったり、文章のチェックをしてもらったりといろいろお手伝いをお願いした部分はありましたが文章・絵・配置・印刷所への依頼などほとんどを一人上手で完成させました。

 元はカクヨムで開催されていた自主企画で「異能」をテーマに書いた4000字くらいの作品でした。

 絵本に落とし込むにあたって1000字程度になるまで大幅にカットして、漢字を開いたり、大きく変更したりしてもはや別物レベルの変貌を遂げました。

 体を変身させることができるタコがひょんなことから宇宙へ冒険することになるというゆるふわSFです。

 お手伝いをしてもらった人へお礼の代わりにお渡しして、幼稚園に置いてもらったら好評だったみたいです。そういう生の声は嬉しいですね。

 文フリにも持っていったこともあって、宣伝もあまりできていない状態でしたが数冊お迎えしていただきました。

 それでも少々、と言うには困るほど在庫は抱えていましたが。

 折り畳みコンテナいっぱいに詰め込まれた在庫は2年ほど前、引っ越しのタイミングですべて荼毘に付しました。
 イベントに参加するのもタダではないですし、自室に形を持って鎮座する負債って思った以上にダメージが大きいのです。

 自作の一切合切を焼き払ったのですが、そのなかでもタコの絵本だけは10冊ほど残しておくことにしました。

 他の作品も時間と手間をかけて作ったのですが、特に思い入れが強かったんですよね。

 この記事を書いている間も懐かしさとか口惜しさとかいろんな感情が胸の奥で混ざり合って、すこし手が震えてきました。
 当時はそれくらいガチで取り組んでいたんでしょうね。

 最初で最後の絵本作品は一部でコアなファンを得られるくらいにはすごく良い子だったと思うのですが、もう少しうまく打ち出してあげられれば良かったです。

 いまではもう紙の同人誌を作ることはやめてしまいましたが、また何かの折に触れて創作は続けたいと思っています。

 ありがたいことに最近は短歌界隈の人にお声がけをいただくこともあって、歌人ではないのですがたまに三十一文字で遊ばせてもらっています。

 タコの絵本が遺作とならないようにまたどこかでちょっとだけでも復帰したいなと願いつつ、今日のところはこの辺りで。

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