見出し画像

演者になった日の話。

私は少女漫画嫌いだ。
恋愛小説もあんまり好きじゃない。

だって読んでるときは楽しいけど、
本を閉じた瞬間に虚しくなる。

誰かの1番になりたいのに、
誰の1番にもなれない。

一度変わろうとしたことがあった。
それまでの私は委員長タイプ。
言ってしまえば先生の犬みたいだった。

みんなから信頼はされていた。
でも誰も私の味方じゃなかった。
私をわかってくれる人は多分いなかった。

だって先生が言っていた。
リーダーは孤独だって。
それを押し付けられてた気がする。
だってみんな面倒臭いから。

中学の頃、いわゆる問題児のクラスだった。
そこで学級委員をしていた。
半ば押し付けられた形だった。

その頃は責任感も強かった。
毎時間うるさいクラス全体を注意した。
でも本当はそんなことしたくなかった。

当時は好きな人がいた。
背が高くて運動部の子だった。
元気なクラスの中心だった。

別に話す仲じゃなかった。
でも注意する時だけは話せた。
ちょっと悪い子が格好良く見える年頃だった。

毎日注意をしていると、
言い返してくるようになった。
その言い合いがちょっとした楽しみだった。

私は仲良くなれたと思っていた。
だからまさかその時は、
嫌われてるなんて思ってもなかった。

たまたま話してるのを聞いてしまった。
口うるさい母親みたいって、
ウザがってるのに気づいてないって。

とにかくすごく悲しかった。
別に望んだことじゃないのに、
私のままじゃダメだってことに。

だから変わろうと決心した。
みんなに好かれる女の子を。
少女漫画みたいな主人公を、と。

胸まであった髪の毛を
思い切ってショートにした。

注意するような口調じゃなく、
柔らかい言葉を使うようになった。

本ばかり読むのをやめて、
休み時間は女子とおしゃべり。

しかめっ面の顔を捨てて
笑顔の仮面を被るようになった。

高校生になった。
知り合いがいない学校に行った。
今日から私は生まれ変わる。
そう信じて疑わなかった。

初めましての人ばかりだけど、
生まれ変わったから大丈夫。
たくさん笑顔の練習もしたし、
明るい盛り上げ役なら演じられる。

友達が沢山できた。
毎時間どこかしらのグループと話していた。
部活にも入って先輩にも恵まれた。
同じ部活に好きな人が出来た。

周りからみてもいい感じだった。
毎日LINEもするし、
週末には電話もする。
私のことを好きなんだろうと思った。

でもいつからか気持ち悪くなった。
私を好きになるなんてどうかしてるし、
何より相手の気持ちに応えられなかった。

付き合ってないのに束縛されるし、
私の趣味は全否定。
話す話題がないのに、
毎回長くなる電話は苦痛だった。

私の拒絶を感じとったのか、
だんだん相手はフェードアウトしていった。
やっと連絡が来なくなったと思った2週間後、
相手に彼女が出来ていた。

私は気持ち悪くなった頃から
ストーリーで愚痴を聞いてくれる人を募った
そこで話を聞いてくれたのが
私の初めての彼氏だった。

まだ話したことないクラスメートの
見知らぬ男の愚痴なんかを
とても親身に聞いてくれた。

それがきっかけで仲良くなった。
とても優しいいい人だと思った。
私は恋に落ちていた。

2人で映画を見に行った。
私が見たいとせがんだ映画。
クラスメートの目を気にして、
少し遠くの映画館に行った。

生まれて初めて男の子とデートをした。
たぶん相手も初めてだった。
2人であわあわしながらプリクラも撮った。

花火も一緒にした。
イルミネーションも見に行った。
そして2月のバレンタインに
本命チョコをプレゼントした。

返事は、よろしくお願いします。
とてもとても嬉しかった。
この世で一番幸せだった。

でも私は臆病だった。
本当の自分は嫌われると思った。
だからずっと演じていた。

付き合い始めも、
デートの時も、
記念日も、
君が冷め始めた時も、
私の親友を好きだって言ってきた時も、
別れ話の時だって。

恋人だってそう。
友達だってきっとそう。

元彼には他に好きな子がいたし、
友達には私よりも大事な親友がいる。
誰にとっても私は二番目。











だからせめて今日も演じる。
少女漫画の主人公みたいな、
元気で明るい女の子を。
みんなに好きになってもらうために。
みんなの1番になるために。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?