Satisfy My Soulに関するあれこれ
再録音
アルバムKaya収録のリメイク曲の3作目です。
オリジナルタイトルはDon’t Rock My Boat、まだPeter ToshとBunny Wailerが在籍していた1970年にウエイラーズがリー・ペリー(Lee Perry)のUpsetter Recordsからリリースしたこれです。
何故かまったくコーラスが入っていません。最初から最後までボブがひとりで歌う珍品です。
もちろんペリーによるダブ・バージョンも作られています。
1978年に曲名をSatisfy My Soulに変えて再録音され、アルバムKayaからシングルカットされ、イギリスのシングルスチャートで最高21位を獲得しています。
ボブの死後、1984年に発売されたモンスター・コンピレーション・アルバムLegendに収められたおかげで人気が不動になったナンバーです。
謎の恋人
恋愛関係(relationship)に関する歌ですが、オリジナルが作られた1970年当時、ボブが誰と付き合っていたのかは定かではありません。
Esther Andersonかな~と思って調べてみましたが、ボブとEstherがNYで出会って付き合い始めたのは1972年なので明らかに違います。
それじゃ奥さんのRitaかと言うと、そうとも言えません。
何故かというと歌詞でボブはふたりの関係を「不安定な状態にしないでくれ」と懇願しているからです。
ボブにはそんな風にRitaとの夫婦関係を大切にしていた印象はありません。
Ritaとの関係に縛られることなく、心を奪われた女性と好きなだけ時間を過ごしていた男です。
そんなボブが、本格的につき合っていた(歌詞がそう物語ってます)謎の女性との恋愛をテーマにしたこの古い曲を引き出しの奥からわざわざ引っ張り出してきてロンドンで再録音しています。
何故でしょう?
揺れまくったボート
おそらく当時真剣に付き合っていたCindy Breakspeareに対する私的なメッセージなんだと思います。
「またCindyかよ!」と思う人もいると思いますが(笑)、銃撃事件で受けた衝撃で心が弱っていたこの頃、ボブにとって彼女はそのぐらい大きな存在でした。
Cindyにはかなり気性が激しい面があったようです。
ふたりの関係=ボートを揺らさないで欲しいとボブが願ったに違いないエピソードも残っています。
2020年12月、ボブが所有していたギターがオークションに出され、153,600ドル(1ドル150円換算で約2千300万円)で売却されました。
ボブのギターが売りに出されたのは史上初だったそうですが、このギターは一度壊れた(ネックが破損した)ものを修復したものです。
どうしてネックが破損したかと言うと、1979年のある晩、滞在していたロンドンのホテルの部屋でボブと口論になったCindyが激高、傍らにあったこのギターでボブのアタマを殴ったからだそうです。
翌日ボブは壊れてしまったギターを友人にプレゼント、ネックを直して宝物として大事に保管していたこの友人が亡くなり、彼の家族がオークションで売却したと言われています。
ボブとギター
ちなみにこのマニアックなウエブサイトによると、ボブが所有したことがあるアコースティック・ギターはこれを含めて合計7本。
最もよく知られているのは死の前年(1980)コンサートでRedemption Songを歌う際に使ったこちら(Ovation Adamas 1687-7)だと思います。
The Wailers を結成した10代の頃、Peter Toshから弾き方を習ったと言われるボブはいつもギターで作曲していました。
PeterとBunnyが抜けてウエイラーズが完全にボブ中心に切り替わったアルバムNatty Dread以降、ギターで作ったメロディをボブがバンドに持ち込み、それをメンバーがアイデアを出し合ってアレンジ、全員でセッションを繰り返してレコーディングに向けて楽曲として完成していきました。
デモ演奏の数々
そんな訳でアルバムに収録された「最終形」以外にもメンバーによる試行錯誤を記録した多くの魅力的な未発表テイクが存在しています。
ご参考までにカッコいいな~と思うヤツをいくつか貼っておきます。
という訳で今回のあれこれは謎の恋人、ボートが激しく揺れたエピソード、ボブが所有したギター、そしてウエイラーズの制作過程を伝える未発表テイクに関してでした。それじゃまた~