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#講義録・特別授業 2024.3.6 〜応用指圧と筋膜リリース〜

普段は指圧実技を教えている専門学校から依頼をいただき、春期休暇前に特別授業を行いました。
卒業前の3年生に向けた講義内容から、一部を抜粋して綴ります。

今日は【応用指圧と筋膜リリース】というタイトルでお話しさせていただきます。

指圧の定義

みなさんは学校ではり、きゅうのほかに指圧、マッサージ、あん摩を学んできました。あらためて、指圧の特徴は何でしょうか?
何をもって「指圧」と言えるでしょうか。

よくあるのは、

・指で押すから

…その通りなのですが、あん摩やマッサージにも圧迫法というものがあります。それなら、圧迫法と指圧は同じですか?違いますか?

ここでは敢えて、違うとしておきましょう。
指圧の特徴は…

母指で【漸増・持続・漸減】の【垂直圧】を加える

ということです。
垂直圧とは、皮膚面に対して垂直に押すということ。
斜めに押して皮膚をズラすようなことは原則しない、ということです。

そして漸増、漸減は、ゆっくり押してゆっくり離すということ。
目安としては2~3秒かけて一定の深さまで圧を入れて、2~3秒かけて圧を抜いていくということです。

パッと押して、パッと離すのは、指圧では基本的に行いません。
斜めに押したり、パッと押したり離したりするのは、あん摩やマッサージの圧迫法として区別します。

それを鍼に置き換えるとよくわかりますよね。
基本はまっすぐ垂直に刺して、徐々に鍼を入れていきます。鍼を抜くときも勢いよく抜いたりしないと思います。
漸増、漸減は指圧の基本的な考え方ですが、鍼にも同じことが言えます。

次に「指圧とあん摩、マッサージの違いは何か」近くの人と考えてみてください。
…いろんな答えが出ます。

・指圧は遠心性(中心から末端に向かって)、マッサージは求心性(末端から中心に向かって)
・指圧は衣服のうえから、マッサージは肌に直接(オイルやパウダーを使って)
・指圧は親指だけを使う、マッサージやあん摩は手のひらやほかの指も使う

どれもその通りですが、指圧とそれ以外(あん摩、マッサージ)を区別する決定的なものではありません。

・遠心性に行う手技は、指圧とあん摩
・衣服のうえから行うのは、指圧とあん摩
・指圧でも親指のほかに(掌圧)と言って手のひらで押すこともあります

さて、困った学生の顔が浮かびます。

…困らせるのが楽しいわけではないのですが、これまでの観念をブレイクスルーするために敢えてこのような授業展開をするのです。

指圧とそれ以外(あん摩、マッサージ)を区別するのは、動画にするとわかります。
あん摩とマッサージは、手が動いているときが仕事をしている(刺激が入っている)とき。手を止めたら休んでいると思われますよね。

指圧は、手が止まって見えるときが仕事をしているとき。このとき一定の深さで圧刺激が入っているので【持続圧】と言います。

漸増・漸減と持続圧、これが指圧の基本です。

実際にデモをして3種の徒手療法の違いを見せると、学生の表情が変わります。何となくやっていたことだけど(言語化すると)そういうことだったのか!と腑に落ちた印象でした。

持続圧を応用する その1~リズムを変える~

さて、実技の一つ目は【持続圧】でリズムを変える方法です。
例えば部位を腰とします。
胸腰移行部(Th12あたり)から腰仙部(L5)までを何回か押してみてください。

持続圧なので、どの指圧点も一定の深さまで圧が達したら2~3秒、持続してから指を離します。
そして、最後の点(L5付近)だけ、わざと長めに5秒くらい時間をかけて(じわーっと)押してみてください。

それまで一定のリズムで押されていたものが、最後の一点だけ長めに持続圧を行うことで、変化が付きます。
そしてそれは、最後の点をしっかりと押された満足感につながります。

卒業後、現場に出たら限られた時間内で施術をすることになります。
リズムを変化させることは施術にメリハリをつけられますし、短時間でも相手が納得する施術を提供できるので実践してみてください。

持続圧を応用する その2~流動圧法~

もうひとつ、持続圧を使って圧刺激を変化させる方法を紹介します。
言葉で表現すると【持続圧を横または縦に流す】と言えばいいでしょうか。

まず、普通にまっすぐ(垂直圧で)押してみます。
一定の深さまで圧を入れますね。
2~3秒待ちます。(持続圧)
ゆっくり押して(漸増)、ゆっくり抜きます(漸減)。
これは基本的な指圧です。

次に①ゆっくり押したら、一定の深さで圧を留めます。
そして、②圧の深さは変えないで(押さえた状態=持続圧を維持して)そのまま水平に移動させます。最後に③垂直に圧を抜きます。
このように3段階の手順で行うものを【流動圧法】と言います。

この流動圧法は、多裂筋などの筋肉に対して行ったり、腸骨稜を乗り越えるように腰方形筋とその筋膜(腸骨に付着する起始の部分)に対して行ったりします。
受けた感(満足度)があることに加えて、筋膜を積極的に刺激するので筋肉の動きが出やすくなります。

①、③で斜めに押したり抜いたりしないように注意してください。
圧方向は垂直なのが指圧の基本です。①、③の時に方向が変わってしまったり、②の持続圧が一定でなく圧が変化してしまうと、あん摩やマッサージの揉捏のようになってしまいます。
あくまでも垂直圧、持続圧の基礎のうえに成り立っているのが流動圧法です。

さて、基本指圧を発展させた方法を紹介したら、午後からはもうひとつ、専門学校のカリキュラムにはない徒手療法を紹介します。

筋膜リリースについて考える

筋膜リリースというと、どんなイメージがありますか。

・ゴリゴリやって筋膜をはがす?
・とにかくストレッチするように伸ばす?

まあ、そのような手技も世の中にはあります。
Dr.スト◯ッチのような店でやってるヤツですね、あれは基本的に元気な人が受けるものです。肩や腰が辛い人が受けると、より悪化させてしまうこともあると思います。

みなさんは厚生労働省の免許としてのあん摩マッサージ指圧師の資格を持つことになるわけですから、目の前の患者さんを壊してしまっては本末転倒です。相手も自分も不幸になってしまいます。

揺らして緩める筋膜リリース

今回、紹介するのは少ない刺激で安全に、かつ効果的に筋肉を緩める方法です。そのために筋膜の仕組みを利用した徒手療法です。【オリジンテクニック】と言います。

あん摩、マッサージ、指圧に共通する特徴は、手指で体表の1点(または面)を刺激することです。
このオリジンテクニックでは、筋肉の起始と停止という離れた2点間を刺激することが特徴です。そしてそれは【Ⅰb抑制】という仕組みを利用した刺激方法です。

骨格筋の起始と停止をしっかりと思い出してください。
そして、その部位(筋肉が腱になって骨に付着するところ)を正確に捉えられることが肝心です。
裏を返すと、筋肉の起始と停止さえ分かっていれば、これから紹介する手順でどんな筋肉も緩めることができます。

肩こりと腰痛に対するアプローチ

デモンストレーションでは、首の可動域に制限のある学生をモデルにして、筋膜リリースと指圧を組み合わせた手技を紹介しました。
首の可動域を確認して、動きを制限している筋肉を推定します。そして、その筋肉に施術を行います。

腰痛に対しては、腰背部だけでなく前面からもアプローチします。
筋骨格系を扱う場合は、それが首であっても腰であっても動きを確認することは必須です。

4時間という限られた時間でしたが、視点を変えることで手技療法の面白さと可能性を伝えさせていただきました。
卒業していくみなさん、臨床現場でも頑張ってくださいね。応援しています!

physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。