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或る日記 1日目 「寒い北向きの部屋で、ハワイを思い出す」 2021年11月30日

寒い、寒すぎる。何という寒さであろう。

12月の前日、小さな部屋で凍えそうになっている。

この間まで、冬なんてこないのではないか、と思えるような暖かさが、今のこの部屋にはない。ましては、雨である。窓をしめていても降っている音が聞こえる。寧ろ中で降っているのではないか?というくらい音に囲まれた部屋にいる。

北向きの冬は辛い。

それでも、私は暖房を使わない。

乾燥で風邪をひいてしまいそうなのと、何故だか12月までは我慢をしてやろうという意地を背に、耐えれぬ足元に毛布をかけて過ごしている。足元は氷のようになってきた。本当に凍る前に書き切ろうと思う。

こんな日は、あたたかい国の事を思い出したくなる。

偶然、今日はハワイの話をした。「あの国は、カラリと晴れて日本とは湿度が違うせいか、心が軽やかになる」と話をした。

15年以上前であっただろうか、一度訪れたことがある。

海は綺麗で、風も心地よく、よく降る雨すら、嫌な気分にならない、濡れたままで歩けてしまう不思議な国であった。

しかし、そんな天国で、初めて国を出た自分が、ショックを受けたのが料理である。

ほとんどのものがあまり好きな味ではなかった。自国では好き嫌いはほとんど無いはずだったのだが、ハワイでは好き嫌いの鬼になり得るとまで感じた。

これであれば、合うのではないか?と、入った焼肉屋で、ハチミツとりんごで漬け込んだような肉を食べて、明るい店内が暗くでもなったかのような絶望が訪れたのだ。

そんな食に関しては孤立した気持ちの中でも、私を助けた食べ物があった。

まずはホテルに隣接された、ABCストアに売っている、「スパムおにぎり」である。朝に売り切れてしまうので、苦手な早起きを毎日した。数日しかハワイにいないのに米がこんなに癒されるは知らなかったので永遠に留学はできないと悟った。

そして、もう一つは、スカイダイビングに行く前の早朝に、ホテルから1〜2分の場所でそれと出会った。

それは「バーガーキング」である。

お店に入ると、どこでも日本語が通じるが、まだ使ったことのない英語を使える瞬間だと感じた。しっかり、現地民の人と思わしき風貌に女性に、ネットで覚えた拙い英語で注文をしたら、「セット?単品?」と矢の速さで、ダルそうに返されたことが、痛くて、痛くて、とても恥ずかしい気持ちになった。

そして、よくわからないので、一番シンプルなハンバーガーを頼んだが、当時の私の顔より大きな、丸が出てきたのである。

何とも恥ずかしい気持ちと、起きたてで、食べきれるのか不安な気持ちが入り混じり、その気持ちと同じくらいのずっしりとしたものを手に、海の前を歩いていた。

全てを振り切るかのように、がぶりと噛り付いた時、その後のスカイダイビングを超える、ハワイで最大の幸せを感じたのである。

どの料理もほとんど合わなかったので、ギャップにやられたのか、今はわからない。ワイキキの景色のせいだろうか。

あれから近所にもお店が出来たり、他の国へ行った時に食べたが、別の味だった。

夢でもみたのであろうか、というくらいには違う。だがしっかりと記憶にある。

15年経った今でも、未だにあのハンバーガーを超える美味しさを私は知らないのである。

いつかまた、ワイキキでバーガーキングのハンバーガーを食べながら歩きたいと切に願う。

(大好きな、宇野千代先生をリスペクトして書いています。ハワイはまた行きたいです。気候が最高。)

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