見出し画像

味わうこと、食べること。

あるテレビ番組にて、芸人の寺門ジモンさんが天然ウナギを食べに行くのでそれに同行するという企画があった。
ジモンさんに関しては牛を一頭買いしたというエピソードしか知らなかったため、牛肉ではなくウナギとは意外だった。特に肉へのこだわりが強いものの、幅広い食通であるらしい。

そんなジモンさん、お店では3匹相当のウナギを食べる予定とのこと。ウナギ3匹って結構な量ですよね?そんなに食べるんですか?と尋ねるスタッフに、ジモンさんが返す。
「だって、たくさん食べなきゃ味が分からないでしょ?」
良いウナギの味が分かるようになるには、それだけ良いウナギをたくさん食べる必要があるということだ。なるほど、確かに。

そしてジモンさんが凄いのは、たくさん食べるために「たくさん食べられる胃袋」を作っているところにある。ジモンさんは胃袋を鍛えるために、何十年もの間、毎日のランニングと筋トレを欠かさず行っているのだという。

味わうために食べる。食べるために鍛える。

このジモンさんの食への姿勢は、私にとても響いた。
というのも、私は少食のくせにコメダ珈琲が大好きだ。

コメダ珈琲店といえば、逆写真詐欺でお馴染みのコーヒーチェーン店。そこで食べるとなると、胃袋のコンディションチェックを行った上で、その胃袋に何をどう割り当てるかが重要になってくるのだ。

こちら、公式サイトの写真。昼コメプレート・ミックスサンド。
ん?君、写真と違うよね…?

せっかくコメダに行ったなら、フードメニューとデザートメニューの両方を味わいたいものだ。
ところが、たっぷりたまごのピザトーストやカツパンなどは、少食人間にとって量が多すぎる。胃袋のコンディションが相当良くないと最後まで美味しく食べきることができない。デザートの入る余地などハナから存在しない。

季節のシロノワールを食べたい場合でも、フードメニューは厳しい。季節のケーキ狙いなら、ナポリタンくらいはイケるかもしれない。しかし、ほぼお腹いっぱいの状態で、メインのケーキをちゃんと味わえるだろうか…?
もっと食べられる身体なら、こんなことを考えずに食べたいものをあれこれ頼めるのだろう。

そのような背景から、私はジモンさんの考えと行動に感銘を受けたのである。
しかもいっぱい食べたいからではなく、真に美味しいものをきちんと味わうために、そこまでの努力を長年継続するなんて、凄すぎる。
これが究極の食通の姿…!
番組を通して、ジモンさんに深い尊敬の念を抱いたのだった。

そう、尊敬。憧れではなく尊敬。
怠惰の権化にして運動不足の化身たる私が真似するには、あまりにもハードルが高い。

そういうわけで、今日も私は軟弱な胃袋でコメダに挑む。
今回のランチに選んだのはエッグサンド。
以前、隣の席にいたお兄さんが「コメダではモーニングのトーストを頼んだことない。これが一番美味しいからこれしか食わん」と話していた。
そんなに美味しいのかと、ずっと気になっていたのだ。

こちら、公式サイトの写真。エッグサンド。
みんな違って、みんな太い。

たまごペーストがギュウギュウに詰まった、はち切れんばかりのサンドイッチが、長方形の皿の中でひしめき合っている。
私はパッと見で、サンドイッチが7個か8個あるのだと思っていた。しかし、よく見ると食パンの枚数が合わない。なんと、食パンそのものまで挟み込んだ分厚い巨大サンドイッチが4個あるのだ。
これを朝から食らうお兄さんは、きっと鍛え抜かれた胃袋の持ち主だ。

途中で休憩を挟みつつ、1時間半かけて完食。ちなみに朝ご飯は食べていない状態でのランチだ。ゼロからのスタートでこれだけのダメージを与えてくるとは、さすがコメダである。
持ち帰りは負けじゃね?という変なプライドで何とか乗り切った。

そうか。コメダが長居してもいい方針なのは、少食人間が時間をかけてフードメニューを攻略できるようにする配慮だったのか。
たくさん食べられない私は、時間をかけてゆっくりじっくりコメダを味わっていこう。


この記事が参加している募集

#おいしいお店

17,476件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?