【映画🎞】原題Just Mercy、終わらない闘い【『黒い司法 0%からの奇跡』評】
鈍く光るちいさな鼠色の輪の連鎖、それは二本の足が交互に追いかけあう間を抗うようにゆれている。つい先ほどチョークで塗りつぶしたのかと思われるような変な白さをもつ部屋に若い受刑者が連れられてくる。硬く冷たく、やけに澄んだ音が真四角の部屋中に響き渡る。彼はその部屋にただひとりきりでいるわけではない––––看守らしき大柄な人物と同じくらいの若さの弁護士がともに立ち会っている。それでも、その金属の擦れる残酷なほどに軽く鳴る音は深く突き落とされたような彼の孤独を画面越しに訴えてくる。
二〇一九年一二月、共和党のトランプが大統領の座から引きずり下ろされようとしている頃、映画『黒い司法 0%からの奇跡』は全米で公開された。彼はこの映画の公開を横目に次々と連邦政府による死刑執行をすすめていった。過去一〇〇年のあいだで連邦レベルの死刑執行が最も多い大統領、それがドナルド・トランプだった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?