東京に出てヘタレになりかけていた。
脳ミソは一個だ。理性と感性は両立できるのだろうか。私は気がつけば理性的なものによっている自分を心の何処かでヘタレだと思っていた。東京に出てきてから俺はヘタレになりかけていた。彼はそれを教えてくれた。
今日はその話。
神戸から上京してきて、神戸時代に徹底的に叩き上げたその膨大な知識、論理を武器に
テレビに出演したり、官僚を相手に授業を行ったり、家で寺子を行って、中卒や高卒で勉強をしたいけどコンプレックスを持っている役者や、大人になってもう一回学びを始めたい人に哲学や心理学、社会学を教えていた。
これらはかなり理性的な活動である。
一方、響心SoundsorChestrAで感性によって曲を作っていた。ライブもしていた。
響心SoundsorChestrAの制作スタイルはパタフィジックという思想をベースに活動している。
それは「プロセス」と「偶然性」をどれだけ作品に入れ込んだか。ということだ。
できた作品よりも、そのプロセスと偶然性がどれだけ作品に入っているかが重要となる。
即興はまさに偶然性である。予測不能すなわち理性的ではない。だから、レコーディングスタジオに入ってから即興で曲を録る。
核心的なノリはまさに、即興性を昇華している。周りから見ればレコーディングに入って曲を即興で作るなんてありえないだろう。しかし、それをバカ真面目に思想として行うのは近年では響心soundsorchestraだけだろう。
2017年リリースでPVもYouTubeに上がっている本音というあの曲も、ほとんど即興でできている。
2019年から上京し理性的な活動を続けていると、どこか頭が理性的な方に引っ張られている感覚もあった。
2020年1月16日、目前に控えたレコーディングを前にスタジオに入った。
13曲をガツガツやっていくのだが、なんだかどうも違和感があった。
曲をまるでブロックを積み重ねるように、無機質に、理想像に向けて作っていくそのスタイルがどこか昔の真逆だったのだ。
魂を解放して、爆発させてできたものこそが俺たちの創造だったのに、どこか理性的で真面目な政策スタイルになっていることに
とても無意識に違和感を抱えていた。
スタジオが終わり、家路に着く頃、その小さな違和感が爆発してきた。
でも、違和感より先に、今回のアルバムがそこにいた。(※ここから一気に抽象度が上がります。)
まずはこのレコーディングメンバーラインに送った。
東京は関西とは違う。
ふざけたら怒られる、どこかそんな空気が、俺を知的童貞にしようとしていた。
今回のアルバムの『2020/Les Demoiselles d'Avignon(2020年/アヴィニョンの娘たち』はその不合理性や無秩序を受け入れてくれる存在だと、今更ながら気づいた。
人間の弱さ醜さ素晴らしさ、美しさ、優しさ、その全てが入り組み何超人もの人間の屍の上にある私たちの今日は、真面目さなんて求めていない。
今日を生きる我々現代人がどれだけその歴史に対して、その思想と音をぶつけてくるかそして歴史をぶっ壊しながら歴史の一部になろうとしているのかを見ているのだ。
『2020/Les Demoiselles d'Avignon』のその眼差しに気づいていた時、涙が溢れた。
そうか、そうだよな。そんな真面目にやってる場合じゃないよな。『ライブハウスでめちゃくちゃしていたときのあなたじゃないと私を超えることはできないよ。』と言われた。
こんな嬉しいことはない。今日の社会で最も世界からみれば“いらない”総理のむちゃくちゃさを、必要条件にしている。当たり前に。
むしろそれがないと無理よ?私を超えるのは。
そんなことを言われたら、心の一番奥を掴まれた気になって、泣いてしまう。
今まで必死に隠してきたこの常軌を逸するこの衝動を解放させていいということだし、いいの以前にそれがないと話にならない。という当然の問い。
東京に出てきて、理性的な作業を行い続けていたその結果、俺は少しヘタレになっていた気がする。
合理的で、コスパ人間になりかけていたことを、この『2020/Les Demoiselles d'Avignon(2020年/アヴィニョンの娘たち』は、その眼差しだけで教えてくれた。
もっとお前になれ。
その一言が、彼からのメッセージだった。
崩せ、壊せ、ぶっ壊せ、そして産め、作り出せ。その衝動が去勢させそうだったことを
『2020/Les Demoiselles d'Avignon』は教えてくれた。
そして俺を受け入れてくれた。
ヘタレになるところだった。
教えてくれてありがとう、『2020/Les Demoiselles d'Avignon(2020年/アヴィニョンの娘たち』
ではあなたをぶち壊しに行きます。覚悟はできていますね。
受け入れてくれますね。もしろん私もバカじゃない、壊し方は最も衝動的でありながら
適当にはならない。そのバランスを分かっていてあなたは立ちはだかるのでしょうから。
アルバム制作は大詰めだ。
情熱。
情熱。
さらなる情熱を。
※新アルバムの先行予約はクラウドファンディングにて1月後半から始まります。
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