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発熱外来を病棟から眺める。

相変わらずの深夜の帰宅。そして相変わらずの夜中の目覚めである。
今日も1日お疲れ様。いや、昨日も1日お疲れ様か、今日も頑張らねば。
職場の急性期病棟はいつだって忙しい。コロナ前でも、コロナ禍でも。
最近、中等症の肺炎の患者さんの急変が続いていてバタバタ。心臓と呼吸は転がり落ちるように悪くなる時があるので本当に怖い。挿管まで待ったなしの展開もよくある。脳外の悪化も怖いけど(血圧上がり続けるとか眼球上転して痙攣してるとか)、それよりも心臓と呼吸は止まったらすぐに死ぬので、ほんと、ひやひやします。
さて。
肺炎の話。
病気とは縁のない友人から「マジでやばい、咳が止まらなくて熱がある。食欲もわかない。これって中等症ってやつかな、入院かな」と連絡があったが、それは聞く限りでは軽症である。
もちろん、病院受診をすすめておいたが、友人は病院の待ち時間が嫌だと駄々をこねていた。案外、元気じゃないか。
我々の想像する中等症は、心電図モニター、酸素、点滴がついた状態で、床上安静の患者さんをイメージする。自力でトイレに行くなどもってのほか。と言うか歩行可能な状態ではない。会話すると酸素化不良で経皮的酸素飽和度は下がっていくし、寝返り等の労作でも下がる。でも、意識がある。その状態をざっくり中等症と呼ぶので、自力で呼吸して、歩行できて、飲食できたり、苦しいと訴えることが出来れば十分に軽症の範囲で、判断能力のある成人ならば自分で健康観察を行えるとみなされるのである。(ちなみに重症は意識がないレベル)。
しかしながら。
患者の側からすると、普段はなんの問題もない健康な人からすれば、咳が出るだけでも面倒だし、鼻水は邪魔だし、熱が出ればもうだるくてやってられない気持ちになるのはよくわかる。
病院と言うのは兎に角、待たされる場所で、にもかかわらず、後から来た人を先に見ることもあり、先に上げた症状がある中で待たされた挙げ句、順番が先送りされるのはさぞかし不服だろう。つらいんだから、さっさと診てもらって、さっさと横になりたい。それに尽きると思う。
それなのに、待たされる。順番を越される。なぜか。
状態の悪い人から先に見ているからである。
外来で前の人が終わったのに、なかなか呼ばれないなんて経験はないだろうか。
そんな時は、外来医師が、救急外来に緊急で呼ばれるか、病棟でその先生の受け持ちの患者さんが急変して対応しているから、と言う場合が多い。
仕方ない。
限りある人数で回している病院なのだから、優先順位をつけて動くしかない。そしてそれは受付順ではなく、命の緊急度合いで優先順位が決まるのである。
意識があって、つらい、苦しい、順番まだなの? とか言ってるうちはまだ順番通りに待てる患者さんだなと言う判断なのである。意識がなくなったり、眼球上転して痙攣したり、唇真っ青になって末端が冷たくなったりしたらすぐ診てもらえるが、誰しもそんなことにはなりたくないだろうし、万が一、命に関わるほど状態が悪化したら真っ先に診てもらいたいと思うだろう。だからその対応で良いのでは……と、思うのだが。
今日も今日とて発熱外来でクレームの嵐が吹き荒れている。
大抵は遅い、辛い中を来ているのになんでこんなに待たされるのか、仕事に戻らなきゃいけないのに……等々。
発熱外来チームも頑張ってるんだけどな……病棟から人員派遣されるくらいに頑張ってるんだけどな……いつになったら返してくれるのかな、うちの病棟の看護師……この忙しさで人数減るのしんどいんですけど……と、思いながらも発熱外来対応中の医師を呼び出す。すいません、呼吸状態悪化中です。主治医の判断を仰ぎたいーー……。
電話の向こうの戦場の音を聞きながら、こちらのモニターのアラームも負けじと鳴る。
平穏はいつになったら訪れるのだろうか……。
長い。
コロナ前でも忙しかったけど、長引くコロナ禍、やることだけは増えているのに、それに対しての救済がない。金銭面で病院に公的補助が入ろうとも、末端の労働力にはなんの恩恵もないのである。せいぜい、マスクつけた仕事中以外はしゃべるな、出歩くな、外食するな、と言われるくらいである。
せめて……せめて、増えた雑務が外注にならないだろうか……と思いながらもも、なんとか日々をこなしてしまうのである。
そうして今日も戦いが始まる。

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