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彼氏いない歴40年、西松屋へ行く。

こんにちは、こんばんは。
彼氏いない歴40年、結婚願望があり、夫婦で協力して子育て出来るようになりたいなぁと思いながら19歳で結婚相談所に登録し、休みの日は街コン等に行きながらも、超絶コミュ障のおかげで40年間ぼっちで生きている喪女です。
ちなみに友達もいません。いじめられたとかそんな過去もありません。いや、気付けるようないじめがなかったのかな……コミュ障過ぎてわからんだけかもしれぬ。
いつか家族のように何気ない日常会話が出来るような相手が欲しいなぁと思いつつ、それも出来ないまま40歳。そろそろ狂いたくなってきているお年頃です。
おひとりさまで大抵のことはやって来ました。ラーメン、焼き肉、スパ、ディズニー、USJ……それでも、行けなかった、行かなかった憧れの場所がある。
それは、ベビー用品売り場、である。
西松屋、バースデイ、アカチャンホンポ……いつかは行きたいと思い続けた憧れの場所。相手がいて、子を授かってこその憧れの場所だが、40歳を越えてもう行けそうにない現実を目の当たりにし、死ぬ前に行っておくか、の感覚になったのが月曜日の話。
シフトで働く看護師のため、土日日勤で働いてからのみんなが仕事はじめで項垂れている月曜日にお休み。ぼっちには優しいよな、シフト勤務。人の少ない時に動けるのが最高。
さて。人生初の子供用品店。西松屋に狙いを定めて出発。
行く前から脳内は言い訳で忙しい。
もし売り場の店員に声をかけられたら――まずは無難に親戚や友人が妊娠したことにして、プレゼントとを探していると言えば良い。無難だ。これならあり得る。友達はいないが兄弟や親戚はたくさんいる。子持ちもいるから、大丈夫。そう言えば、なぜ、親戚や兄弟のおめでたの時にベビー用品売り場に行かなかったのだろうか……いや、行けなかったのか。私が20代後半から30代前半にかけてラッシュが続き、その頃はまだ少しだけ自分の可能性にすがっていたから、変なプライドがあって行けなくて、ネット通販に頼ったんだった。そうだ、あって良かったネット通販。ただ、その後に広告がベビー用品関連ばかりになってメンタルが死んだんだったか。
まあ、もういい。もういいと思えるようになったのか40代。行くぞ、西松屋。
目的地まで車で10分。近くて遠い。隣のとなりにあるコンビニなんて寝起きの素っぴんで行けるのに。
なぜ私は、体のラインがわかりにくい服を選びつつもしっかり身だしなみを整えて西松屋へ向かっているのか――。
駐車場は広々まばら。さすが月曜日の午前中。楽に駐車し、緊張のおももちで西松屋に入る。
静かな店内、ざっと見渡して、見える人間が品だし中の若い店員と、おばあちゃんと思われる白髪の女性。そこから少し離れたところにいる白髪の男性。この三人しかいない。ぱっと見で妊婦らしき人がいないことに何故かほっとして、気楽になった足取りで店内を進む。
うわぁ、売ってる服が小さい、子供服小さい、可愛い、女の子の服なんてお人形さんの服みたい、可愛い……妙に高揚しつつ商品を眺める。服も可愛いけど、靴とかなんなの……なんでこんな小さいの……これが40年後にこんなのになるなんてな……なんて、時間の流れは残酷なんだ……
人生の振り返りをしつつ様々な感情を織り混ぜながら売り場を進む。
ついに来た、新生児売り場。
……眩しい……なんだこの、聖域の扉の前に立つ感覚は……
あぁ、新生児のお世話したかったな……20年くらい前の夏休み前、必死に新生児の沐浴手順をノートに書いて、なかなか合格をもらえないまま人形相手に沐浴練習したことが走馬燈のように甦ってきた。あの頃はいつか自分の子供をこうして沐浴するんだなぁと夢見ながらなかなか合格を出さない先生への恨みを飲み込んでいたけれども……あぁ、産着。懐かしいな、産着。なんか、泣けてくる。
やや涙目になりながら、ぼんやり新生児服を眺めていると、足音が聞こえた。人の気配だ。
「赤ちゃんの服をお探しですか?」
振り返る。品だしをしていた若い女性だ。どう見ても20代前半。思わず身構える。
「あっ、はい、何が良いかわからなくて、はい……」
コミュ障全開の返事をしつつ、半歩下がる。
「プレゼントですか?」
「あっ、いえ……」
「ご出産予定ですか?」
「あっ、まだ先の話で……無事に産めたらいいんですけど、どうなることやら……」
「無事に赤ちゃんが育つか不安ですよね、みなさんそう言いますもん」
「そうですよね、授かってもちゃんと育つかどうかの不安がありますよね……」
そんな会話をしているうちに、私は高齢出産の初産妊婦の妊娠初期になっていた。
そして案内されるマタニティコーナー。
どうしてこうなった……プレゼントと咄嗟に嘘が出てこなかったせいなのか、それともパッと見で自分が買うものではなくプレゼントだろうと思われたのが悲しくて咄嗟に否定したのか、もうよくわからないが、私はマタニティコーナーで服を選んでいた。
はー……わりとリーズナブルで着やすそうだなぁ……
結果、小1時間後にマタニティ用の下着上下とワンピース1枚を買っていた。
偽装妊婦の完成である。
いや、まあ、マタニティの服着たところで偽装妊婦って訳じゃないんだけどさ。 
帰宅したらもう午後2時。やべぇな、開店と同時くらいの感覚で西松屋の門をくぐった気がするんだけどな……。
シャワーを浴びて、買ってきたばかりのマタニティウェアを着る。
なんだこれ、最高に楽なんだが。
しめつけない締め付けない下着、そしてワンピース。すげぇ楽。
髪を拭きながら冷蔵庫を開け、ストゼロ補給しながら、冷凍唐揚げをチンする。
マタニティウェアいいなー、可愛くて楽なの最高かよー。もっと早く気付けば良かったなー。夜勤の時にこの格好で行きたいわー。
ほどよくストゼロが回った頭でアマプラ見つつ、今日の総括は「マタニティウェア最高」と言うことにした。
ちなみにこの総括が出たのは午後3時の話である。

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