アメリカで大ヒット中の発酵飲料 “紅茶キノコ(KOMBUCHA)”10種類を飲み比べてみた #KUKUMU
コンブチャ。私はアメリカ・ポートランドに来るまで「昆布入りのお茶」だと思っていた。
おじいちゃんとおばあちゃんが縁側に座り、「じいさん、昆布茶は一杯いかがかね」「そうだねえ。梅の昆布茶が飲みたいなあ。」など、ほがらかな会話の中で楽しむようなお茶 ……。
そんな妄想は、すぐに打ち砕かれることになる。
わたしが「もうひとつのコンブチャ」を知ったのは、留学してすぐのこと。地域のスーパーやマーケットで、このどこか日本っぽい名前を見かけては「アメリカでも”昆布茶”が人気なんて、ずいぶん渋いな ……。」など、ちょっと意外に思っていた。
ある日、ふとネットで検索。
「アメリカで大人気のコンブチャ。”昆布”は入っていません。」
へ???? ちょっと、まってくれ。
コンブチャに、昆布が入ってないだと……!?
***
留学も、はや5ヶ月目。秋のポートランドは、ほぼ雨のち曇り。最近は日の入りも早く、おうち時間も増えてきた .....。そんな時期だからこそできること、ということで今回は、未知の飲み物「KOMBUCHA」の正体を突き止めるべく、10種類ほど飲み比べてみました。
「KOMBUCHA」の正体は、紅茶キノコ
まずは、もう一度、Google先生に尋ねるところから。
先生によると、「KOMBUCHA」はお茶を発酵させた飲み物。もっと言うと、紅茶や緑茶などに、砂糖と菌を混ぜて発酵させた植物性の飲料だそう。
お茶+砂糖+発酵……?
味の想像がつきません。
発祥地は、東モンゴルや中国など諸説あり。ただ数千年前から既に存在しており、健康維持の一環として飲まれたそう。
日本では、1970年代に健康法のひとつとして流行ったようです。 しかし、自宅でつくる際の安全性から、ブームはすぐに終わったのだとか。
日本の呼び名は「紅茶キノコ」。発酵させる時に、“キノコ状”の塊ができたことからその名がついたとの話もあるそうです。
昆布でも、キノコでもないんかいっ!!!
2000年代に生まれたわたしにとっては、実際に見たことも、聞いたこともなかった紅茶キノコ。謎は深まる一方です。
なぜ、いま海外で再ブーム?
そんな紅茶キノコは、「KOMBUCHA(コンブチャ)」と名前を変え、いまや欧米をはじめとした海外で人気飲料に。
名前の由来は諸説あるそうですが、「菌」が転じて「コン」となり、「コンブチャ」と呼ばれるようになった説が有力のようです。
そして気になるのが、なぜ、いま海外で「紅茶キノコ」が再ブームしているのかということ。
産経ニュースの記事によると、日本でブームが下火になってからも愛好家の間で飲まれ続けた結果、少しずつ海外へと渡り、4,5年前にアメリカ西海岸・ハリウッドなどで人気を集めたといいます。ミランダカーやマドンナなど有名なセレブたちが、KOMBUCHAを持って歩いているスナップ写真が広まったのもあるんだとか。
そんなKOMBUCHA、現在アメリカでは、800億円以上の市場ほどの大きなビジネスに成長しているそう。どれだけ大きいかというと、東西合わせて300種類以上のブランドがあるほど。わたしが至るところで見かけていたのも納得です。
どんな効果があるの?
流行っているということは、何か理由があるはず。
ということで、『コンブチャ読本: わかちあいの発酵飲料コンブチャ この一冊でコンブチャのお悩みを一氣に解消 幸せ体質になるシリーズ』という本を、手にとってみました。
その本によると、KOMBUCHAには、老化予防のアンチエイジングや、便秘改善やお肌を整えるデトックス、脂肪低下の作用などの効果があるとのこと。ほかにも免疫力の向上、虫歯予防、不眠症改善などなど ..... 。
しかし、現在の日本では、昔のイメージから「危ない」というイメージも、まだ根強くあるよう。そんなマイナスイメージを払拭するために、埼玉にある工場が農学部とタッグを組み、KOMBUCHAの効用を分析するなど、研究も進んでいるところだそう。
さあ、ここまで調べてみて……
より、分からなくなりました。KOMBUCHAさんよ。
そうともなれば、つべこべ言わずに飲んでみるしかない!ということで、雨が降るある日の昼下がり、スーパーへ買い出しに行くことに。
ローカルスーパーへ買いにいってみたら?
訪れたのは、ポートランド・サウスイーストにある「WinCo Foods」。アメリカの50都市以上にあるこのスーパーなら、いろいろな種類があるかもしれない!と思い、突撃してみました。
「すみません。KOMBUCHAって、どこに売ってますか.....?」お店の人に聞くと、すぐ「あっちの奥の方だよ!」と教えてくれました「OMOTENASHI」「MOTTAINAI」などと並び、「KOMBUCHA」は世界共通語なのかな。
普段は通り過ぎていたコーナーへ、今日は足を止めるのだ……. と期待を胸に、店員さんに教えてもらった方向へ。
辿り着いた先がこちら。
種類も、瓶タイプ、缶タイプ、ショットタイプ....とさまざま。値段は、$2~4(300円〜600円)くらいが相場でした。
今回は、なるべくさまざまなメーカー・タイプ・味を考慮し、10種類を購入。人生で一度も飲んだことがないドリンクを急に10種類も買うなんて、なんか悪いことをしてる気分です。
空っぽだったリュックサックにぎっしり詰めたKOMBUCHA。その重さに、高校生の時、分厚い資料集や教科書を何冊も詰めて歩いていた、地元・北九州の通学路を思い出しながら、家に帰ります。
いざ、10種類を実飲!
ポートランドでお世話になっているホームステイ先のお家についたらすぐ、KOMBUCHAをリビングで一つひとつ並べてみます。
か、かわいいぞ…… KOMBUCHA……!
さて。十分に気合いも入ったところで、飲んでいきます!
“人生はじめて”の味は......?
現在のハウスメイト・沖縄からやってきて、在米2ヶ月目20歳のチサちゃんと、一緒に飲むことに。
「なんですかー、これ!!」
彼女も初のKOMBUCHA(しかも10種類)を目の前に、キャッキャと楽しそう。
「いまから、10種類飲み比べするんだけど、一緒にどう……?」
ちょっとだけ年上の先輩から、意味不明なお誘い。
「えー!いいんですか! やりたいですー!!」
快くOKしてくれたチサちゃんは、天使です。ありがとう。
二人で最初に手にしたのが、これ。
なぜ、これを選んだか。一番安心して飲めそうな見た目だと思ったからです。わたしたち、今日人生で初めてKOMBUCHAを飲むんですもの。しかも、10種類も。
ちょっとビビリながらも、いざ実飲。
ごくっ。
「ん…… これは、りんごジュース…… ?」
おっと、まてよ。
よくパッケージを見直してみると、どこにも「KOMBUCHA」という文字が見つかりません。
「いや、これKOMBUCHAじゃないやんけ!!」
デカデカと「KOMBUCHA」と書かれた棚に鎮座していたので、完全に気を抜いていた。そしてその後、今回買った10種類中で他3種類も、ただの健康ドリンクだったと気づきました……。無念!
「まあ、大丈夫ですよー!」
なんくるないさー精神で、励ましてくれるチサちゃん。
「そうね……。 ちょっと気張ってたから、ほぐれてちょうど良かったと思うしかない……!」
こんなわたしのおっちょこちょいは、世界のどこにいっても発揮されます。気を取り直して、次こそ!
【1位】一発目でいちばんの味を引く
ここからは、個人的においしかった3つを紹介します。
1位に選ばれたのは、こちら。
パッケージに書いてある「KOMBUCHA」という文字。
よし。これは、確実にKOMBUCHAだ。
そして、目に飛びこんできた「Tastes Great」。
初めて飲むので、とにかくこの言葉を信じるしかない。
まずは、ちいさめに一口。
ごくっ。
わたしは、韓国のフルーツ酢「美酢(みちょ)」が好きなのですが、近い味がしました。そこに、すこし発酵の独特の酸味を足した感じ。ただ、甘すぎないブラックベリーとマッチして独特な香りもなく、飲みやすかったです。微炭酸とすっきり爽やかな後味も、癖になりそうでした。意外といけるやんKOMBUCHA!
【2位】パッケージからたのしい一品
こちらも、チサちゃんと意見が一致! このKOMBUCHAは、パッションフルーツとタンジェリン(温州ミカンに似ていると言われるオレンジの一種)のフレーバーです。
推しポイントは、まずこの見た目!この「HEALTH・ADE」シリーズはラベルが全てかわいくて、選ぶのに一番時間がかかりました。特に私が好きなのは、写真のボトルの左端に見切れている腫れぼったい目をしたキャラクター。ちいさい頃に書いていたイラストに似てて、なんとなく親近感も湧きました。
口を近づけた時、全く発酵の香りがないのも高評価ポイント。わたしのようなKOMBUCHA初心者からすると、やっぱり飲みやすさが大切です。味は1位のものに比べると酸味が強めで、後味までしっかり残る感じがします。酸っぱいものが好きな方には、おすすめ。
【3位】それぞれの好みが出はじめる
最後にして、チサちゃんと意見が一致せず……。
せっかくなので、第3位として2種類を紹介したいと思います!
まずは、チサちゃんチョイスから。
これは、好き嫌いが分かれそうな味でした。日常生活でほぼ嗅ぐことがない香辛料の香り。チサちゃんは、この独特なターメリックやブラックペッパーなどのスパイスが効いている味に、ハマっていました。
これは、Reishi(霊芝・マンネンタケ)、Chaga(チャーガ・カバノアナタケ)、Turkey Tail(カワラタケ) という3種類のキノコが入っています。ちゃんとキノコが入ってるのも、あるんですね …….。
つづいて、筆者チョイス。
ビールのような色と泡立ち!私のようなビールラバーからすると、見た目からテンションがあがります。こちらは、ゴールデンパイナップルのKOMBUCHAです。偶然、チサちゃんが3位に選んだものと一緒のメーカーでした。
発酵の香りが鼻に突き抜けてきて、酸味も強め。パイナップルの味によって独特の臭みは少ないけれど、発酵の風味がガツンとくる。10種類を飲み進める中で、ちょっとずつKOMBUCHAの風味に慣れてきたわたしは、おいしく飲めちゃいます!
【表アリ】10種類を比べてみて、気づいたこと
今回、飲んだ一覧がこちらです!
いや〜。こう見ると、よく飲みました。
ありがとう、チサちゃん。おつかれさま、わたし。
「よし10種類、飲み比べるぞ!」と決めてから、夏休みの自由研究をしているような気持ちでした。
KOMBUCHAのように、自分が不思議に思った現地に根付くもの。それを、いろんな角度から調べて、ふれて、友だちと話し合ってみる。
もちろん、何が人気の理由なのか全てが分かったわけではありません。
だけど、「なんで、これが人気なんだろう」「どういう気持ちでこれを買うのだろう」などと現地の人たちの気持ちを想像しながら、新しいものを試してみる。
そうして少しでも現地の人たちと同じレンズを通して世界を見つめてみようとすることで、わたしたし自身の視点が増えて、豊かになったなあと思います。
検証していく中で気づいたKOMBUCHAの魅力は、「健康になるために飲む」のではなく、「日々を彩るもので健康になれる」ところ。カッチリしすぎず、遊び心をもった飲み物でした。
日本での1970年代のブームから、かたちを変えて人気になったKOMBUCHA。これからさらにどういう風に進化していくのか、気になります。日本でも、もうすぐ再ブームがくるかも?
雨がよく降る秋のポートランド。
お家でも、わたしのちいさな冒険は、もう少し続きます。
***
文・写真:木村りさ
編集:栗田真希
いつも、応援、ありがとうございます!サポートいただいたお金は、6月から約8ヶ月間のアメリカの留学費に全額使い、その体験を、言葉にして、より多くの人に、お返しできたらな、と思っています。