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B2B新規事業立ち上げのためのマーケティング戦略とは?


自己紹介

はじめまして。木村隆志と申します。とある人材系大手企業内スタートアップでマーケティングをしています。私のミッションは新規事業の立ち上げ・成長に必要なマーケティング戦略立案から具体的運用まで実施することです。また、新規事業の各所で繰り返されがちな「車輪の再発明」を防ぐために、マーケティング戦略・戦術の型化を意識し、無駄な試行錯誤を減らすことも同時に目指しています。

支援してきた事業数

当部門が立ち上がったのは2020年度ですが、この記事を執筆している2024年1月までの間に10以上の事業を直接的・間接的に支援してきています。

・0→1ステージ(社内では「Seedステージ」と呼びます):3事業
・1→10ステージ(同・「Unitステージ」):4事業
・10→100ステージ(同・「カンパニーステージ」):5事業

私自身と部門についての詳細の説明は、会社の公式noteの取材記事がありますのでよろしければそちらをご覧ください。

この記事の想定読者

この記事は、主に以下の方を想定しています。

  • B2Bで新規事業をこれから立ち上げようとされている方

  • 新規事業をローンチしたばかりの方(0→1フェイズ)

  • 事業開始から数年経つがまだPMF(プロダクトマーケットフィット)している実感がない方

※2桁億・3桁億の売り上げを出している事業は対象外ですのでご了承ください。

B2B事業でよく行われるマーケティング施策

ここで問題です。以下はB2B事業におけるマーケティング施策として一般的に行われるものですが、「0→1の新規事業において」有効でしょうか?

webサイト

プロダクト・サービス内容の説明を行う。導入事例を業種、企業規模、顧客課題などのタグで分類し、検索しやすい形で掲載する。潜在層・顕在層・検討層それぞれに刺さるホワイトペーパーなどのお役立ち資料を網羅する。流入対策としてオウンドメディアを構築しコラム記事を量産する。申込フォームには顧客セグメントに活用するために企業規模、業種、決裁権限などの情報を入れる。

web広告/媒体広告

Google/Yahoo!のリスティング広告やFacebook/Instagram広告などに出稿する。一括資料請求サイト、比較サイト、ITなどの業界メディアに出稿する。サービス資料/ホワイトペーパーダウンロード型やメルマガプランなどを選択する。

展示会

自社サービスと親和性のある業界/テーマに関連する展示会に出展。ブースを設けてプロダクト・サービスの説明やデモを実施する。

テレマーケティング

アタックリストを作成し、代表電話に直接架電するいわゆる「コールドコール」を行う。

新規事業には有効な施策は何か

いずれもB2Bマーケティング施策としては一般的に行われているものばかりです。しかし中には、実は0→1の新規事業には向かない、あるいはできないものがあります。

例えばwebサイトでは・・・。

  • 0→1フェイズの新規事業では、そもそも「誰向けのどんなサービスなのか」が明確に定まりきっていないことが多いです。その状況でwebサイトを作りこみに行くと、提供価値を再定義する段階で作り直しとなります

  • さらに導入事例ですが、事例を掲載したくてもそもそも0→1フェイズではまだ受注が出ていません。受注が出ていたとしても理想の顧客属性と異なっているなどで導入事例コンテンツとして最適でない場合もあります

  • また、申込フォームですが、顧客セグメントも明確になっていない場合が多く、また、リード数自体が少ないため顧客セグメントを切ってリードの優先付けをする必要性すらなかったりします。私の経験ではローンチして1~2年の事業のwebサイトのセッション数は月に数百でリード(資料請求・問合せ)も月に数件レベルです。このフェイズではリード顧客は全件アプローチして、対話を行うべきでしょう。顧客との対話については後述します。

例えばweb広告では・・・

上記のようにターゲットやサービス内容の提供価値が定まっていないために、リスティング広告のKW(キーワード)やTD(タイトル・ディスクリプション)も仮説の域を出ず、また、LPもターゲットに刺さる内容に昇華できていないため、クリックされてもCVせずに無駄に広告費を垂れ流す状態が続く恐れがあります(実話です。ド新規事業フェイズでweb広告(Googleリスティング、Facebook広告)を試行した際、文字通り「クリックされてもCVせず」状態が数か月続くということがありました。その時の痛い経験をもとに書いています)。

つまり、B2Bマーケでよく行われるマーケティング施策の多くは、「0→1フェイズのド新規の事業には」向かなかったり、そもそもできないことが多かったりするのです。※ちなみに展示会ですが、弊社の場合はパーソルグループで出展していてそこに相乗りすることができるため、0→1事業においても有効なチャネルとなっています。

「カスタマージャーニー」は最初は絵に描いた餅

マーケティング戦略を立案するときに、事業ターゲット顧客がどのようなペイン/課題を抱えており、どのような情報ニーズがあり、どのようなタッチポイントで情報収集を行っているかといったいわゆる「カスタマージャーニー/バイヤージャーニー」を描こうとすると思います。しかし商談はしていてもまだ受注が出ていないフェイズのド新規事業や、上述したように「受注が出ていたとしても理想の顧客属性と異なっている」フェイズにおいては、戦略立案時のカスタマージャーニーはまだ絵に描いた餅です。この仮説ベースのカスタマージャーニーに基づいてチャネル選定しようとすると、「仮説の掛け算(仮説x仮説)」となり、成功確率が高くありません

事業ステージに合わせたマーケティング施策の最適化

これまでの経験から、B2B新規事業の事業ステージ別に戦略の要点とマーケティングでのあるべきステップを以下のようにまとめています。

事業ステージ別の戦略の要点
事業ステージ別の戦略の要点(クリックして拡大)
B2B新規事業のマーケティングのステップ
マーケティングのステップ(クリックして拡大)

0→1フェイズのマーケティングは「誰のどんな課題にどんな訴求」が起点

①TGTの課題・ニーズ・タッチポイント
②提供価値・訴求の言葉仮定義
③目標設定・KPI設計

①リード獲得はターゲットと訴求検証できるテレマからスタート

①テレマ:ターゲット・訴求を確立する
②コンテンツ:インバウンドの基盤づくり
③広告/他チャネル:リード獲得接点を拡大する※
※事業ターゲットによってタッチポイントは変わる

②リード獲得の次にインサイドセールス立ち上げ

①基本トーク・切り返しトーク設計
②ターゲットタイプ別シナリオ策定

③Sales Ops(セールスオペレーション/営業基盤整備)

①KPI設計・可視化
②業務フロー整理
③分析

詳しく解説していきます。

  • B2B新規事業におけるマーケティングは、「誰のどんな課題にどんな訴求」が起点となります。まずは、ターゲットの課題、ニーズ、及びタッチポイントを詳細に把握することから始めます。ターゲットが抱える具体的な問題を理解し、彼らがどのような情報を求め、どこでその情報に触れるのかを把握していきます。

  • 続いて、これらの情報に基づいて提供する価値と、その価値をどのように訴求するかの言葉を仮定義します。ターゲットに響くメッセージングが不可欠です(なお、この提供価値の定義/ブラッシュアップの仕方については別記事で解説しています)。

  • 明確な目標設定を行い、それを達成するための具体的なKPIを設計します。これにより、施策の効果を測定し、必要に応じて修正を加えながら前進できます(なお、新規事業の初期段階のKPIの立て方については、当社の経験に基づいたノウハウがありますので別の記事で後述しています)。

マーケティング施策について

新規事業の特性として「認知がない」「認知がないから指名検索されない」「自然検索しても認知がないからクリックされない」という問題があります。このフェイズでのwebサイトは「ペライチ」で十分です。仮説ではなく顧客との実際のコミュニケーションを通じて、自社サービスが「誰向けの何なのか」という提供価値が定まってくるからです。最初からwebサイトを作りこみに行くと、早晩提供価値を再定義する段階で作り直しとなるため、初期仮説に基づいたペライチのLPでスタートすべきです。
リード獲得のための戦略として、まずテレマーケティング(テレマ)を起点として設定します。これにより、ターゲットと訴求の確立を目指します。直接的な顧客の声を聞くことができ、リアルタイムでターゲットと訴求の有効性を検証できます。このフェイズで得られた学びは、提供価値のブラッシュアップにつながるばかりか、次のステップで行うインバウンドマーケティングの基盤づくりに役立つコンテンツ制作の根拠となります。テレマは受付ブロックもされますし、お客様の時間を奪うため敬遠もされることがありますが、B2B新規事業のマーケティングでは「リサーチを兼ねるテレマーケティング」が最初に行う一歩と言えます。

事業フェイズに沿った進化

新規事業は成長の段階を踏んでいきますが、それぞれのフェイズで必要なマーケティング施策もまた変わります。初期フェイズから成長フェイズまで、事業のニーズに合わせた戦略を実行する必要があります。

事業ステージ別の戦略の要点
事業ステージ別の戦略の要点(再掲)
B2B新規事業のマーケティングのステップ
マーケティングのステップ(再掲)

B2B新規事業のマーケティングでは、最初にターゲットの深い理解から始め、テレマーケティングを通じての訴求とターゲットの検証、そしてインバウンドマーケティングと広告を駆使してリード獲得の接点を拡大していくというステップを踏みます。各ステップで得られるデータやフィードバックを活用し、継続的にマーケティング戦略を調整し、軌道修正していくというやりかたをとるべきでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。同じようにB2B新規事業で奮闘されている同士の方、いらっしゃったらぜひコメントをいただけますと幸いです。
事業ステージ別のマーケティング・インサイドセールス・セールスオペレーションの要点や必要リソースについても別途まとめています。上述した通り、提供価値の定義/ブラッシュアップの仕方について、また、新規事業の初期段階のKPIの立て方については、当社の経験に基づいたノウハウがありますので別の記事で詳述しています。また、よろしければその記事もお読みいただければと思います。

※この記事で紹介した内容は、私個人の経験に基づいています。これは当社の公式な手法を代表するものではなく、結果に関して保証するものでもありません。実践に際しては、自己責任でご判断ください。


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