黄たまご

貼り合わされた癒し

やたらにあげるのもよくないのだけど、「おねがい」って言われると弱い。
「一枚だけだよ」って、僕は結局あげてしまう。いけないお父さんかもしれないな。きっと、子どもの頃にドラえもんのパジャマを買ってもらえなかった悔しさが原因に違いない。因果応報、カルマってやつ。

3歳の娘はさっそく床にぺったんと座ると遊びだした。渡したばかりの絆創膏をぬいぐるみのゾウさんに「いい子ね、痛いのどこ?」とあてがってる。小さな子どものするお医者さんゴッコ。

「ちゃんとめくってあげなきゃ」
僕は絆創膏のテープを剥がしてやった。
「こうやって痛いところに貼ってあげるんだよ」

「もう一枚ちょうだい」
娘がはっとして言った。
「ばんそうこうさんが痛いっていってる。けがしたのね」

僕は何も言わずにもう一枚絆創膏を渡した。どうするだろうと、最後まで見届けたくなったから。

「こうやって痛いところに貼ってあげるんだよ」

娘は僕にそう言って、テープを剥がした絆創膏にもう一枚を貼り合わせた。最初の一枚と後のがぴったり一つに合わさる。テープを剥がすことが絆創膏にとっての痛みであり、そこに別の絆創膏を貼り合わせることで癒しになるらしい。

はたからは見えない傷を抱えて、絆創膏は痛みを分かち合える相手を求めていた。ぴったり同じ形の傷だったなら、それは本当の癒しになるのかもしれない。僕ら人間と同じように。

床の上には絆創膏だったものが転がってる。
もちろん、もう使い物にはならない。
なのに、捨てられないんだ。
はたからは見えない優しさが、そこにはあふれていた。

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