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あまり知られていないお酒とクスリの代謝の関係とは?|クスリのアウトプット#27

きむっちです。

夜の時間帯になるとお酒を飲みたくなりませんか。
お酒が飲めない方はともかくとして、お酒が好きな方なら飲むことが多いのではないでしょうか。

お酒を飲んだ時に酵素で分解されるのですが、クスリでも同じようなことがあります。

それだけでなく、お酒の酵素とクスリの酵素の働きでも密接に関係があります。

どのようなことがあるのか、知りたくないですか。

この記事では、飲酒を例にして、クスリでの酵素分解に影響が出るのか解説していきます。

この記事をよんでいただくことで、お酒とクスリの代謝について理解することができますよ。

お酒を飲むことで起こる作用

まず、お酒にはアルコール(エタノール)が含まれています。

アルコールを飲むことで次の反応が起こります。

CH3CH2-OH(エタノール)

 アルコール脱水素酵素(ADH)

CH3CHO(アセトアルデヒド)

 アルデヒド脱水素酵素
   (ALDH1、ALDH2)

CH3COOH(酢酸)

 ↓ 酸化分解酵素
  (10種類くらいの酵素) 

CO2 + H2O (二酸化炭素、水)

それぞれの過程で見ていきましょう。

【アルコールの脱水素反応】

エタノールを飲むことで胃もしくは小腸で吸収され、肝臓で代謝を受けます。

このときにアルコール脱水素酵素(ADH;Alcohol dehydrogenase)によって酸化され、アセトアルデヒドになります。

NADでのアルコール脱水素反応
(エタノール → アセトアルデヒド)

画像1

引用元:Wikipedia(アルコールデヒドロゲナーゼ)

ここで出てきた NAD(ニコチンアミドモノヌクレオチド;nicotinamide ribonucleotide)は次のような構造式で表されます。

画像2

引用元:コトバンク(NAD)


【アセトアルデヒドの脱水素反応】

さらにアセトアルデヒドの脱水素反応がおこります。

このときに使われる酵素がアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH;Aldehyde dehydrogenase)で、脱水素反応を通じて酢酸が合成されます。

ここで、ALDHには
ALDH1とALDH2の2種類あります。

ALDH1…アルコール濃度が高濃度のときに働く
ALDH2…アルコール濃度が低濃度のときに働く

ここで、効率的に酵素分解されるのはALDH2です。

なお、今回の記事ではALDHの化学的な構造については省略します。

詳しく知りたい方は専門書などで学習してくださいませ。

ADHとALDHの関係

ここからADHとALDHを比較していきながら見ていきます。

【ADHとALDHが低い場合の影響】

先にADHとALDHについて振り返っておきましょう。

ADH:アルコールの脱水素酵素
ALDH:アルデヒドの脱水素酵素

肝臓にある酵素ADH、ALDHによって変わります。

両者とも高い場合にはすぐに分解されるので、お酒に強いと言えます。

一方で、すぐに酔ってしまう人はADHの活性が低く、アルコールが血中に入りやすくなるのです。

ADHの活性は高くてもALDHの活性が低い場合には、アセトアルデヒドの形で血中に入ります。

ここで、アセトアルデヒドは悪酔いしやすい原因物質でもあります。

そのため、アルデヒドを分解できるかどうかが要になるのです。

【日本人はALDH2が低い】

衝撃的な事実なのですが、
日本人は他の国の人と比べてALDH2が低いとされます。

下の表では人種によるALDH2欠損率が表されています。

表からも、日本人ではALDH2欠損率が高いことがわかるのではないでしょうか。

データのばらつきがあるにしても、人種によっては欠損率0%という素晴らしいALDH2能を持っているわけです。

表:人種に伴うALDH2欠損率

画像3

引用元:こちら

クスリでもお酒と同じように当てはまる

ここまではお酒を例に挙げてきましたが、クスリを飲んだときにも同じようなことが言えます。

クスリを分解する酵素としてシトクロムP450(CYP)が挙げられるのですが、ADHやALDHと同じようにクスリの代謝効率が異なります。

CYPが変化する要因として
次のようなものが挙げられます。

● 不十分(低活性)
● そもそも無い(欠損)
● 過剰(多すぎる)
● 生活習慣での変動

つまり、同じクスリの量を飲んでもCYPが低かったら効果が出にくくなるのです。

逆にCYPの濃度が多すぎる場合にはクスリが酵素分解されすぎて、クスリとして作用されなくなります。

逆にクスリの効果や副作用についてもはっきりしたデータが取りにくい特徴があります。

そのため、狙い通りのCYPが得られるのかどうかは単純に示すことができないのです。

【CYPでもアルコールが代謝される】

ここで、CYPでもアルコールが代謝されることになります。
つまり、お酒に対する分解酵素が強くない場合には、アルコールを飲んだときにクスリを飲んでも効果を発揮しにくくなります。

CYPでの薬代謝はアルコールと比べるとわかりにくいのですが、クスリとしてしっかり作用させたい場合にはアルコールを控えた方がよいでしょう。

まとめ

今回の記事はやや酵素分解の話になってしまったので、改めてまとめていきます。

【アルコール分解酵素】

● アルコール分解酵素として
  ADHとALDHの2種類が存在する
● 日本人はALDH2が低いので、
  悪酔いしてしまう傾向にある

【クスリの分解酵素 CYP】

● クスリの分解能は人それぞれ
● CYP濃度によってもクスリの効き目が
  大きく変わる
● クスリの効果や副作用の出現も違う
● CYPでもアルコールを分解してしまう

アルコール分解の酵素だけでなくCYPについて正しく理解することでもっとクスリの学びが深くなると思っているところです。

最後に

日本人が他の人種と比べてもアルコール耐性が低いデータがあることに驚きです。

地域によってはアルコールが強い方がいるかもしれないですが、それでも海外と比べたら分解能が低めの傾向にあります。

クスリの効果を最大限に発揮させるためにも、クスリを服用しているときにはなるべくお酒を控えたほうがよいでしょう。

次回のお知らせ

次回は「ジュースなどでクスリを飲むと...」をテーマに話していきます。

次回から第5章に入っていきます。
いろいろな相互作用があって面白いですよ。

第5章:薬の相互作用

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最後までお読みいただきありがとうございます。

もっと詳しく知りたい方はこちらの本を参考にしてみてください。
図解で説明されているから、さらに理解しやすいですよ。

クスリのことをもっと知ろうと思うと各臓器の働きなどを知っておく必要があります。

文章だけでは伝えるのが難しく、僕自身もあまり詳しく学んでいないので、いくつかのテーマについては飛ばしました。

詳しく学びたい方はこちらの書籍からご確認くださいませ。

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