特別展『杉本博司 本歌取り 東下り』で、悠久の時間を体感するタイムトラベルを。
このところ、我が夫の背中よりも野鳥のお尻を追っかけることに熱中していたら、あっという間に時が経ち、前回の更新から約1年半。
先日(といっても、それすらすでに半年前!)、
久々に会ったHさんから心配そうに「旦那さん、お元気ですか?」と問われ、
なぜかと思ったら、「最近、noteが更新されていないようなので。。。」とのこと。
気にかけてくださったHさんの温かいお人柄に感銘を受けるとともに、ひと昔前とは異なり、SNSが情報の要となった時代の変化にもあらためて気付かされました。
半世紀という歴史を実体験した今、1年が一瞬のように過ぎていくのには慣れましたが、不思議なのは年齢とともに100年200年という時間が、たいして遠い昔でもないように感じるようになったこと。
長く生きれば生きるほど過去は遠いものになるはずなのに、なぜか20歳の頃より、100年や200年昔の出来事がむしろ身近に感じられる。。。
そんな時間の歪みにまどわされて過ごすなか、
写真仲間のMさんに教えてもらった展覧会『杉本博司 本歌取り 東下り』<渋谷区立松濤美術館/〜11月12日(日)まで>を観に行ってきました。
これはそもそも2022年の秋、姫路で開催されていた『杉本博司 本歌取り』展を、東京にて新たな形で展開したものだそう。
“本歌取り”のタイトルどおり、さまざまな古典的作品を下敷きにしつつ、杉本博司氏が主に「写真」という手法を用いて新たに創造した作品を展示しているエキシビジョンです。
中には杉本博司氏が蒐集した古美術そのものも織り交ぜられ、その分野の広さには驚くばかり。
ご自身が子供時代に体験した“心のはじまりに共鳴したかのよう“だという縄文の土偶、石器や鏃、北斎の『富嶽三十六景 凱風快晴』を本歌とした写真仕立ての屏風、かと思えば文字や言語にまつわる作品に数理模型、さらには宇宙から望む地球の写真まで。
現在とはまったく異なるようでいて、確実に地続きである悠久の時間を内抱した作品群を目の前に、太古の昔から未来へと続く時空をさまようかのような不思議な感覚を覚えます。
そして、一つの作品が次のインスピレーションを生み、さらなる作品へとつながっていく無限の広がりと、深い造詣に裏打ちされたミクロなまでの作り込みに、ただただ圧倒されました。
野鳥好きの私が個人的に心惹かれたのは、展覧会告知のメインビジュアルにも使われている『カリフォルニア・コンドル』。
表具にも皮革(でしょうか?)や数字・英文字が描かれた布(でしょうか??)が用いられていて、実にクールです。
我が夫はといえば作品そのものもさることながら、置き物類の作品の下の敷板に目が釘付けになっていた様子。
「これ天平時代の古材だよ。あっちは古い厨子の扉かな? こんなの欲しい〜♪」と、よだれをたらさんばかりでしたが、
いやいや、どうあがいてもアナタに手の届くような品じゃありませんから。。
そう、板切れ一枚とあなどるなかれ、
天平時代の由緒ある古材ともなれば、そもそも市場に出回ることが少ないそうで、一般人の我が夫からしたらお目にかかれただけで超ラッキー。
以前、展示即売会で見かけた小さな板切れには数十万の値がついていたという、なんとも恐ろしい世界なのです。
さすが超一流のアーティストの元には、超一流の品が集まるものですね。
いずれにしても私のnoteなどでは魅力が伝わりきらないので、ぜひ渋谷区立松濤美術館へ、11月12日(日)までに足をお運びください。
それにしてもMさんにおすすめされてから、展覧会へ足を運ぶまで約2週間。
さっさと動いていれば展示変え前の作品もしっかり鑑賞できたのに、遅い、遅すぎる。。
そして、会期終了まであとわずか2週間ほど。
今さらnoteで紹介するというも、遅い、遅すぎる。。
ちなみに一般相対性理論によると、速く動くものほど時間の流れを遅く認識するのだそうで。
ということは、さっさと動けばこの加速度的な時間の流れも、少しは緩和されるのでしょうか?
これからは心して暮らしていきたい、と反省しております。
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