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【まったり骨董日記_vol.35】我が家の“啓蟄”〜春の目白コレクション

二十四節気の一つである「啓蟄(けいちつ)」。
春になり、冬ごもりをしていた虫たちがむくむく這い出してくる頃ということで、今年は3月5日だったそう。
けれどもその頃は、まだまだスギ花粉飛散の真っ只中。
花粉症のひどい我が家の虫(=我が夫)は、まだまだ冬眠ならぬ春眠の真っ只中。
毎年、桜が散るまでは、私がなんと言おうとも必要最低限の外出しかいたしません。
今年はそれが少し長引いて、先週末にようやくモゾモゾ這い出してきました。

夫を泰平の眠りから目覚めさせたのは、他でもない、春の「目白コレクション」へのお誘いです。
「目白コレクション」は例年、春と秋にJR目白駅すぐ近くの会場で開催されている骨董・古美術の展示即売会。
全国各地から旬の骨董・古美術店が集う人気イベントで、我が夫の馴染みの古美術店さんも、毎回、出店されています。

「欲しいものがあったら困る。どうしよう。。。」と顔をしかめながら、なけなしの現金をしっかりと財布にしまい込む我が夫。
「これを使わせてはなるまい!」と固く心に誓う私。
しかしながら、日頃使いやすそうな素敵な品々が、意外とお手頃価格でお目見えする「目白コレクション」。
まんまと罠にかかってしまうのは、私だったりもします。

夫にくっついてあれこれ古美術店や骨董イベントを訪れているものの、目利きの方はいまださっぱりで、「これ可愛い」とか「何かに使えそう」といった、場当たり的な印象だけでモノ選びをしている私。
最も危険なのは、そうやってなんとなく良さそうと思ったモノが、それなりに買える値段であったときです。

実は今回、とある古美術店の店主さんが、下地の黒漆が見事に透けた室町時代の根来盆(お値段なんと、ン十万円!)を見せてくれながら、
「古美術品は、“本当に良いモノ”を手に入れないとダメですよ。そこそこのモノを買える値段だから買ってしまうというのが、一番いけません。その後で本当に良いモノに巡り会ったときに“やっぱりこっちが良かった”と後悔することになりますから」という話をしてくださいました。

「古美術品も子供のおもちゃと同じで、ちょっと欲しくなったからと買っても、すぐ遊ばなくなってしまいます。それこそ無駄遣いというものです。到底、買える値段じゃないと分かっていても、無理をしてでも欲しいような“本当に良いモノ”を買うのが、結局はお得なんですよ」と。

おお、そのお話、心に沁みます。。。
根が貧乏性の私、ついつい何でも「安モノ買い」に走ってしまうクセが抜けません。
少し前には、趣味の野鳥撮影用カメラ機材をなるべく安く済ませようと買い揃えましたが、結局、納得がいかなくなって半年も経たずにカメラもレンズも買い換える羽目に。。。

そういえば、白洲正子さんも著書の中で同じようなことを書いていました。
「贋物は、贋物ばかりとは限らない。これは変な言い方だが、本物のたとえば志野や織部でも、ピンからキリまであり、うっかりすると二流三流のものを買ってしまう。安い高いにかかわらず、何万となくあるそのなかのいい出来のものを買わないと、いくら本物でも、自分にとって贋物同然の価値しかないという意味である。
〜〜〜中略〜〜〜〜
目が利くとはようするに、本物のなかから本物を発見するまで待つ、その我慢のことを言うのだろう」
(引用:『なんでもないもの 白洲正子エッセイ集<骨董>』白洲正子・著、青柳恵介・編/角川ソフィア文庫)

つまり私、貧乏性なだけでなく、我慢も足りなかったのですね。。。
そして、本人は「目が利く」つもりでいる我が夫も、この「我慢」ができているのかどうか。。。
ウイスキーをあれこれ買い揃え、「高いモノは勿体無くてチビチビ飲むことになるからコスパが良い!」などと誇らしげに語りながら、安いウイスキーをドボドボとグラスに注いで記憶を失くす。

まあ、カメラもお酒も古美術も、何でも自分で失敗してみないと身につかないってことでしょう。
というわけで、今回こそは「我慢、我慢」と思っていましたが、誘惑に負けるのも一つの修業です。

私は縁取りの細かい細工と漆の艶が素敵な唐物長方盆を、夫は江戸後期〜明治頃の民藝風の大きな漆椀をゲット。
ただし、どちらも自分にとっては「お値段以上」と惚れ込んだモノですよ。

馴染みの古美術店さんとの会話はもちろん、他のお店の店主さんたちに聞くお話も面白いし、こんな「お値段以上」がたくさんあるから、「目白コレクション」は病みつきになってしまうのかもしれません。

そして、これからの季節、日本橋・京橋での「アートアンティーク東京」、東京プリンスホテルでの「ザ・美術骨董ショー」など、骨董・古美術イベントが目白押しです。
物欲の虫がこれ以上、ムズムズと湧いて出てきませんように。。。


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