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【まったり骨董日記_vol.30】若冲も絵筆の誤り??「松に鶴」の間違いとは

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骨董好きの我が夫、気は穏やかだけれど少々偏屈。
独自のルールとスタイルで営まれるその暮らしは、ときどきちょっとヘンテコです。お役に立つ情報はありませんが、くすっと笑ってもらえるような話をひとつ。
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近頃ずっと野鳥撮影にハマっており、日頃も8割がた鳥のことを考えている私。骨董日記なんて書いてるヒマないわ〜なんて、あっさり放棄しようかと思いましたが、よくよく考えてみれば、骨董・古美術にも鳥をモチーフにしたものが数多くありました。

骨董・古美術の鳥モチーフとして、すぐ思いつくものといえば、「松に鶴」の組み合わせ。いずれも不老長寿のシンボルであり、縁起ものの図柄なので、お正月飾りや祝いの食卓などにもぴったりです。

この「松に鶴」。松の木に鶴が止まっている場面が描かれていることも多いのですが、実はこれ、実際にはありえない情景だってご存知でしたか?
私、つい数ヶ月前まで、まったく知りませんでした。。。

というのも、ツル科の鳥は足の後ろ指が短くて枝をつかむことができないため、アフリカ大陸に分布するごく一部をのぞいて、松にかぎらず木の上に止まることは不可能なのだそう。

松の木の下に鶴が立っていたり、松の木の上を鶴が飛んでいたりするのはよしとして、松の木に鶴が止まっているなんて烏白馬角というわけです。

かの伊藤若冲も『旭日松鶴図』や『松梅孤鶴図』、『白鶴図』などで、松の木に止まった鶴を描いていいますが、なんとこれも間違い!だったんですね。
まあ、これらはもともと中国・明時代の作品を模して描かれたものだそうですから、若冲さんにしてみたら「間違うてるなんて言い方、いけずどすなぁ〜」という感じかもしれませんが。。。

そしてこの「松と鶴」、実はコウノトリの見間違いだったんじゃないか説というのがあります。
現在は世界的にも絶滅危惧種であり、国の特別天然記念物に指定されている希少な鳥ですが、かつては日本全土を含む東アジアに広く生息していたコウノトリ。その姿はたしかに鶴のタンチョウによく似ています(タンチョウヅルと呼ばれることが多いですが、正式名はタンチョウ)。

地上で暮らす鶴とは違って、コウノトリ(こちらはコウノトリ科)は松の木の上に営巣することが多く、これが「松と鶴」のモチーフにつながったのではないかと言われているのだそうです。

「梅にウグイス」が、実は「梅にメジロ」なんだよ、というのはよく聞きますが、同様の間違いが「松に鶴」にもあったんですね。

こういうトリビアも面白いし、我が家にも「松に鶴」の器のひとつくらい、あってもいいんじゃない?と思っていたところ、我が夫がネットオークションで、松の木の上に鶴が止まっている絵柄の古染付(こそめつけ/中国の明代末期に景徳鎮窯で焼かれた染付の磁器)の皿を発見。

何かと細かく目ざとい我が夫、公園で野鳥を発見するのも速いですが、ネットオークションでお目当のものを探し出すのは、より一層速い!
というわけで嬉々として落札にトライしたのですが、驚くほどの高値になってしまい、あえなく早々に撤退しました。。。

観察力は十分でも、残念ながら資金力は圧倒的に足りていないみたいです。


<今週のおまけ>

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1971年に、日本国内ではいったん野生種が絶滅してしまったコウノトリ。1965年から人工飼育をスタートしていた兵庫県豊岡市が、現在も継続してコウノトリ野生復帰の取り組みを行っています。今や豊岡には100羽以上のコウノトリたちが暮らし、田んぼで餌をついばむ姿が見られるほか、ここで育ったコウノトリたちが全国各地に飛来するまでになっているのだとか。
豊岡が取り組む、人と鳥が共生するサスティナブルな環境づくり。これからも「コウノトリの育むお米」をたくさん食べて、応援していきたいと思います。


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