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【まったり骨董日記_vol.25】鬼門の「目白コレクション」へ

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骨董好きの我が夫、気は穏やかだけれど少々偏屈。
独自のルールとスタイルで営まれるその暮らしは、ときどきちょっとヘンテコです。お役に立つ情報はありませんが、くすっと笑ってもらえるような話をひとつ。
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先週末は二人して、「目白コレクション」へ出かけてきました。
この「目白コレクション」、通称メジコレは、とても人気の高い骨董・古美術のイベントで、開催初日は開場前から行列ができるほど。コレクターはもちろん、同業者の人たちまでもが掘り出しモノを求めて押しかけるのだとか。

けれど、私たちにとって「目白コレクション」は鬼門。
なぜなら、見ているうちに欲しくなって、うっかり買ってしまったりするから。。。高級品ばかりが並ぶ展示会なら美術館気分で見学できるのですが、ここでは普段使いできそうな器やお皿など、ちょっとしたモノたちがお買い得価格で出ていることが多いのです。

そもそも近頃は、カメラ沼にハマりまくっている私。新しいレンズやら何やらを買い込んでからまだ1ヶ月も経っておらず、いまや我が家の懐は南極ばりの氷点下。というわけで、今回はいつにも増して「行きたい!けど行きたくない!」という、憧れのセンパイと初デートする女子高生的ナイーヴさを抱えての訪問でした。

開場直後は超密状態が予想されるので、私たちはそれを避けての入場でしたが、それでも「ああ、緊急事態宣言が明けたのだなぁ」と、あらためて実感できる盛況ぶり。久々に元気なお顔を拝見できる古美術店の方々もいらして、うれしいかぎりです。

そんな嬉々とした空気にのせられて、それまでのナイーヴさはどこへやら、ついついヤル気になってしまった私たちでした。。。

今回、我が夫がウキウキとゲットしたのは“白鳳時代の瓦”。
白鳳時代(ハクホウジダイ)は、大化の改新(645年)から平城京遷都(710年)の約半世紀について言う美術史上の時代区分。歴史上の時代区分では、飛鳥時代の後半ですね。

いくら仏教美術に憧れたところで、飛鳥や白鳳の仏像なんかはまず市場に出てくることはありませんが、この白鳳瓦にはその様式美のようなものが現れており、「白鳳の風を感じる。。。」などと、満面の笑みで瓦に見入る我が夫。完品ではないものの、比較的状態がよいわりにリーズナブルだった点も、まさに夫好みのようです。

白鳳瓦といえば、奈良・川原寺のものが有名で人気が高いらしく、夫がゲットした瓦にも裏に墨で「川原寺」と書かれていました。けれども、色や形状を見るかぎり川原寺のものではなく、和歌山の紀伊上野廃寺のものだろうというのがお店の方の談。

実際、家に帰ってから夫が所有する図録『飛鳥・白鳳の古瓦』(奈良国立博物館 編)と照らし合わせたかぎりでも、紀伊上野廃寺のもので間違いないだろうと本人は大喜びです。お気に入りのウイスキーを飲みながら、図録と実物を照らし合わせて眺めているようなひとときが至福の時間だというのですから、まあ、人間のほうもだいぶお安いようですね。

そして、我が夫のミニミニミュージアムに、これで旧石器時代から現代まで、各時代のちょっとしたモノが揃ったのだとのこと。(もちろん、あくまでも経済力と人間力に見合った“ちっちゃいモノ”しかありません)

もともと日頃から、何でもきっちり「揃える」ということに、並々ならぬ情熱を注いでいる我が夫。部屋にあるモノたちをまっすぐ揃えて置くなどは当たり前。銀行口座に入っている金額まで、きっちり切りがよい数字になるようマメに調整するという、意味不明な習慣すら持っているほどです。それゆえ、夫にとってこのコンプリートは祝杯をあげるべき大願成就なのでした。

夕食時、大好きな盃にお酒をつぎながら「今度は、いい縄文土器が欲しいなぁ〜」と呟く夫に、え?まさかのコンプリート2巡目???と青ざめる私。
ああ、やっぱり目白は鬼門です。

<今週のおまけ>
ちなみに「目白コレクション」で私がゲットしたのは、江戸後期の古伊万里の小皿。細かくびっしりと文様が描かれた金襴手(キンランデ)とは違い、余白の活きた絵柄が気に入りました。絵付けは決して緻密ではなく、ラフでおおらか。お手頃価格とも相まって肩肘張らずに付き合えそうなところが、私の性分に共鳴したのかもしれません。計らずも数年前、他店で購入していた古伊万里の深鉢とセットのようになり、それもうれしいところです。

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