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【まったり骨董日記_vol.34】現代アートの中の古美術

我が夫は、ひどい花粉症。
「今月の行動目標を決めました」と言うので、ナニナニ?と聞いたところ
1)よく寝る
2)毎日、ウン○をする
3)なるべく外に出ない
の3つでした。

そんな<ようちえんのおやくそく>みたいなルールに則って日々をやり過ごしている夫ですが、この時期に唯一、どうしても行きたい!となるイベントがあります。
それが先週末に、東京国際フォーラムで開催されていた「アートフェア東京2022」。国内外からのギャラリーが一堂に会する日本最大級のアートの祭典です。

私たちにとって、このイベントの最大の魅力は、骨董・古美術と現代アートの区別なく、さまざまな作品を観ることができる点。日頃、現代アートに接する機会はあまり多くないので、毎回、その多彩さ・自由さに驚かされます。

今回、会場に入るエスカレーターから、まず目に飛び込んできたのは、いかにも気持ちよさそうに宙に浮かんでいる雲のようなヒト。野原邦彦さんの『雲間』という作品だそう。このモコモコ感、たまりません!

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視覚のみの情報なのに、温かいプールに入った時のような幸せな浮遊感が想起されてしまうから、人間の感覚って不思議です。

会場に入っては、まず馴染みの古美術店さんにご挨拶。
こちらでは、またもや夫好みの酒器や茶碗が、朱の根来盆に美しく並んでおりました。
他にも、尾形乾山直筆の漢詩が入った皿、すっきりと笹の葉が描かれた古染の竹節香合、もう少しお手頃なところで普段使いもできそうな古伊万里の器たち。。。
目の保養と言いたいところですが、その朝、近日発売になるミラーレスカメラを予約購入してしまった身にとっては、むしろ目の毒です。
刷毛目小服茶碗に目を奪われている我が夫を、なんとかそこから引き離して次へ向かうことに。

古美術店では他にも、根付、縄文土器、李朝や古伊万里、掛け軸などなど数多くの出展があり、通りすがりにも飛び込んでくる情報で、早々に脳内ストレージがいっぱいになりそう。。。
そう、「アートフェア東京 2022」の出展数は150軒。
作品のボリュームはもちろん、そこから発せられる熱量が半端なく、私の体力・気力がもたないのが困りものなのです。

というわけで、容量オーバーする前に私の大好きな画家・弓手研平(ゆんで・けんぺい)さんの作品を観に伺いました。
私の残念なスマホ写真では、あまり魅力が伝わりませんが、優しく暖かな色合いで描かれる作品は、日本画のような柔らかな趣を持ちながら、しっかりした質感に支えられた雰囲気を有する油絵です。

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数十点ある作品は、すべて今年の新作だとのことで、その精力に驚きましたが、弓手先生ご本人に伺ったところ、「頑張って描いているわけではなく、毎日、土を耕し、水をやるような感覚で描いているんですよ。そうするとついつい、夜中までやり続けてしまって。。」とのこと。
弓手先生は、すべての作品の中に春夏秋冬の物語を織り込みたいと、下地にさまざまな色を何層にも塗り重ねているそうですから、確かにそれは畑の土づくりに似ています。
こうして毎日、手をかけて、見事に実った林檎の木、美しく咲いた睡蓮や蓮の花。。というわけなんですね。

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さて、その後は会場全体をぐるりと一回り。
もう色々ありすぎて記憶も飛びぎみですが、印象的だったのは、現代作家さんの作品にも、古美術の視点や昔ながらの伝統工芸の美が姿かたちを変えて受け継がれていたことでした。
例えば、弓手先生と同じ画廊で出品されていた画家・小松孝英さん。琳派風の画風で知られ、超絶リアルだけれども幻想的な蝶舞う作品群は、一度見たら忘れられません。

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弓手研平さん・小松孝英さんの作品は<みぞえ画廊>にて

また、古く子供の魔除けとされてきた民芸品・犬の張り子が、今やこんなポップな未来型に!一見、工業製品のようですが、このキュートなフォルムは一つ一つ細かく磨き上げられ、プリントのような細密な絵もすべて手描きなのだとか。
あとから知りましたが、実はこれ「主人に従順な犬」「中身のない張り子」=「日本という国」を象徴したものとのことで、可愛さの中に含まれる毒がなんとも。。

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吉田朗さん『犬張り子』は<ミヅマアートギャラリー>にて

そして、和紙と岩絵具を使い、まるで宇宙を描いたような抽象画。佐藤健太郎さんという若手画家の作品でしたが、日本画の“たらしこみ”という伝統技法で描かれているそう。(写真を撮らせてもらうのを忘れました。。。残念)
佐藤健太郎さんの作品は<A lighthouse called Kanata>にて

さらには、こんな可愛い土偶や土器のミニチュアも発見。実際に焚き火を起こして焼いているそうで、土の焼け具合、味わいが何とも良いのです。

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山内崇嗣さん『ミニチュア土器土偶セット』は<金沢クラフトビジネス創造機構>にて

さて、自らに課したルールを破って出かけた我が夫ですが、他の2つはよく守り、今日も昼まで寝ています。
働き盛りの40代半ば、こんなことで本当によいのでしょうか。。。

「アートフェア東京2022」の出展作品の一部は、まだこちらから見られます。
ご興味ある方はぜひ〜!





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