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獣になりたい。

私は時々、自分には大事なものが欠けてるんじゃないかという考えに囚われることがある。

友人や家族が想像もしてない恐ろしい私が、確実に存在している。

とても冷徹に世界を見ていたり、美しいものに腹が立ったり。

ふとした拍子に、そんな私の中の悪魔が暴れ出してしまうんじゃないか。

そんな恐怖に長い間囚われている。

だからいつも、正解を探してきたんだ。

こんな状況の時はこう振る舞う。こう言われたらこう返す。

私の頭の中は、いつも未来のリハーサルでいっぱいだ。

リハーサルのおかげで、私は私をやってこれた。

そうしないと、何をしでかすか分からない。

適切に対応できないかもしれない。

それによって誰かを傷つけるかもしれない。

それが怖くて、常にリハーサルを怠らない。

今の私は、そういう努力の結果。

こういう場面では、こうすれば優しいんだ。

こうすれば喜ぶんだ。なるほど。

そうして私は、人に好かれる自分、いい人である自分を手に入れた。

でも、最近アートをするようになって思う。

人に好かれる自分が描く絵は、好きじゃない。

何も考えず、何にも囚われず、ただその瞬間、絵と私だけがいる世界。

まるで獣のように、本能のままに表現する世界。

そこで描きたい。

その世界の中では、何も気にせず私のままで居られる。

いい気持ちも悪い気持ちも、表現という扉から出てきたものなら許される気がした。

言葉にできない感情も、言いたいけど言いたくないことも、表現を通してなら吐き出せる。

そうして出てきた表現が、私は好き。

だから、獣になりたい。

悪魔を気にせず、ただ白いキャンバスに私の中身をぶつける。

そんな時間、そんな瞬間を生きていたい。

獣でいることで、作品が生まれ、その作品が私を生かしてくれる。

それが今の私の夢です。


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