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染めの浴衣-2- 老舗「竺仙」

今回は「染めの浴衣」2回目です。
老舗の「竺仙」さんの浴衣をご紹介します。
着物好き、浴衣好きの方はご存知だと思います。この時期、着物雑誌の浴衣特集では必ずといっていいほど掲載されていますよね。

竺仙さんは、創業天保13年という老舗の浴衣・江戸小紋中心の呉服店さんです。竺仙さんの浴衣は、染めのによる表現が多彩で驚かされます。たくさんの種類がありますので、ここでは、夏着物としても楽しんでいただけるものに絞ってご紹介します。

最初にご紹介するのは、<長板中形(ながいたちゅうがた)>。染色技法名でもあり、浴衣の名前でもあります。
江戸時代から続く技法で、40cmくらいの型を使って糊を置き、表と裏の柄が合っているのを確認した後に、藍の染料が入った瓶に数回浸して染めます。
竺仙さんのホームページに染めの工程が載っています。写真を拝見すると、布に糊を置いた時点で表と裏の柄が合っているかどうか、職人さんでなければ到底わからないと思いました。

長板中形の反物です。

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万寿菊のような形が重なって見えますが、近づくと、数種の小紋の柄がそれぞれの一輪の菊になっていて、全体の柄が構成されています。

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とても、とても、細かくて複雑な型で染められています。これの表と裏の位置が合っているというのは、初めて見た時は、感動しかありませんでした。心の中で「ブラボー!」とスタンディングオベーションしていました。また、型の細かさと複雑さにも驚きしかなく、職人さん方の技が集結した浴衣ですね。

長板染めでも、あえて表と裏を違う型で染めたものもあります。

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これは、2つの反物ではなく、1つの反物の表と裏です。絵柄や色の濃淡がもう一方の面へ影響していて、奥行きを感じます。また、袖や裾からちらりと見える裏側が全く別の柄という、とてもおしゃれな浴衣です。

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上の写真も同じ技法で染められています。一方の面は白いドット柄のみ染められています。そこにもう一方の柄がうっすらと見えることで新しい柄が生まれています。

次にご紹介するのは、<紅梅(こうばい)>。
絹紅梅綿紅梅小紋などがあります。浴衣というよりも、夏のおしゃれ着という印象を受けます。染色は、種類によって技法が異なります。
下記の写真は綿紅梅小紋です。引き染めという型染めの染色技法で染められています。

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生地のアップ画像です。小さな格子状になっており、透け感が涼しさを演出しています。

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黒い差し色は手描きです。反物ですと少しとがったデザインに見えますが、浴衣に仕立上がると意外と落ち着いて見えます。

最後は、注染(ちゅうせん)という染色技法で染められた<綿絽地>です。
注染とは、反物を型の大きさに折りながら糊付けを繰り返し、ミルフィーユ状になった反物にじょうろで染料を注ぐ染色技法です。浴衣では多く用いられています。
生地は、細い線状に地が薄いところがある絽になっています。竺仙さんはこの細い線が不規則に並ぶ「乱絽」になっています。

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菊が大胆に配された柄です。若い方がみずみずしく着るのも素敵ですが、大人の方にしっとりと着こなしていただきたい浴衣です。

竺仙さんの浴衣は、ご紹介したもののほかにも、染めの技法や生地の種類などたくさんの浴衣があります。
好きな色や柄を着ていただくのが一番楽しい時間になりますが、職人さんの手仕事を身にまとう優越感もまた素敵な時間をあたえてくれるものです。これは、浴衣や着物ならではの醍醐味の一つでもあります。ぜひ感じていただきたいです。


※一部、竺仙さんのホームページより引用させていただいております。


晴れの日きもの専門店 小川屋
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