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「着物は100年前からSDGs!」

着物は、究極のSDGsです。

日本の伝統文化である「着物」は、最低でも100年以上前、もっと言えば300年以上前から持続可能な開発目標であり、究極のSDGsと断言できます。
誤解を恐れずに申しますと、日本の民族衣装・着物の持つエコの価値観に、やっと国際社会が追いついてきたような気がしています。

「SDGs」とは、持続可能な開発目標

改めまして。「SDGs」は2015年に国連サミットで、日本も含めた国連加盟193か国によって採択された国際社会共通の持続可能(サスティナブル)な開発目標です。期間を2016年〜2030年までの15年間とし、長期的な開発の指針を掲げています。

内容は、大きなくくりで「17の目標」と、それらを細分化した「169のターゲット(具体目標)」で構成されています。

「SDGs17の目標」とは・・・。

1)貧困をなくそう
2)飢餓をゼロに
3)すべての人に健康と福祉を
4)質の高い教育をみんなに
5)ジェンダー平等を実現しよう
6)安全な水とトイレを世界中に
7)エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8)働きがいも経済成長も
9)産業と技術革新の基盤をつくろう
10)人や国の不平等をなくそう
11)住み続けられるまちづくりを
12)つくる責任 つかう責任
13)気候変動に具体的な対策を
14)海の豊かさを守ろう
15)陸の豊かさも守ろう
16)平和と公平をすべての人に
17)パートナーシップで目標に達成しよう

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SDGs:目標12「つくる責任 つかう責任」

SDGsでは目標12として「つくる責任 つかう責任」が設定されています。「つくる責任 つかう責任」とは、持続可能な消費と生産を構築するための目標です。 持続可能な消費と生産を支えるための、省エネと資源効率の促進、インフラ整備、人々の生活の質の向上、環境にやさしい働きがいのある暮らしを意味しています。
私たち和の國は、特に目標12「つくる責任 つかう責任」にスポットを当てて取り組んでいきます!

《《《 着物とSDGs 》》》

さて本題です。着物は究極のエコサスティナブルでもありますので、洋服と着物の違いという観点に加え様々な角度から見てみましょう。

 1)直線断ちで、生地に無駄がない。「仕立て」

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洋服(洋裁)と着物(和裁)には、「断ち方」というかハサミの入れ方に大きな違いがあります。洋裁は肩や衿などは丸く、スカートなどは布目に対して斜めに裁つこともあり、残り布が出ます。
一方で、和裁はすべて直線で断ちます。布目に対して縦、または横に真っ直ぐに裁つだけ。衿や衽(おくみ)は、反物の幅を半分に断ちます。ゆえに大小はあれども、すべてのパーツが長方形になり、残り布が出ないのです。捨てる部分はゼロなので、生地に全く無駄がありません。


「着物は100年前からSDGs !着物と洋服の裁断違い」
youtubeもご覧ください。

https://youtu.be/bKI9nH5KZ_A


 2)親子3代着れるように考えて。「仕立て」

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洋裁は、縫い代を残して余分な布は切ってしまうことがほとんどです。
一方、和裁は、生地が余ってもむやみにカットして捨てません。ごわごわしないように上手に「縫いしろ」の中に折り込んでいて、いつの日かの出番を待っているのです。
一例ですが、30年後、身長が大きい娘さんに譲れるように、腰回りに縫い込んでいるので、解き端縫い・洗張りをして、娘さんのサイズに仕立て直しすることが出来ます。そこが着物は親子3代(100年)と言われるゆえんです。


 3)10㎏、太ってもやせても大丈夫!「仕立て」

「中年太りしてズボンのサイズが合わなくなった。」という声は、多くの成人男性から聞かれます。洋服なら、その度にズボンもスーツも買い替えなくてはなりません。一方、着物は、身体に巻き付ける状態なので、10㎏位までは体重の増減があっても、買い替えることなく着ることができます。多少、太ってもヤセても大丈夫なのです!

もし、それ以上の体重増減になった場合でも、自分が持っている着物を上記で述べた「洗張り」をすることで、マイサイズに仕立て直しすることもできるので、エコで経済的です。

 4)元の生地/反物の姿に戻ります。「洗張り」

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洋裁では、ミシン縫いがほとんどで、カットも斜めや丸くしたりしているので、洋服を解いて再利用ということは滅多に聞いたことがありません。
一方、直線裁ちで作られる着物は、仕立てた後も縫った糸をほどけば、反物に戻るという特徴があります。読んで文字のごとく、着物を解いて、端端(はしはし)を縫い合わせます。その工程を解きハヌイ」と言いますその「解きハヌイ」をした反物を「洗張り/あらいはりします。元の反物に戻った着物・13mをゴシゴシ水洗いして、天日に干します。

干す時には、伸子(しんし)という生地を伸ばすための棒を使って干していたので、「張り」と言います。洗って干す作業が、洗張りなのですが、洋服では考えられない、究極のリサイクルでもあるのです。
特に、結城紬などは「洗張り」をすればするほど、紬の風合いが増して紬なのに、光沢感さえでてきます。

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上記の写真は、昭和50年頃の亡母。着物を洗って、天日干しています。
着物(反物)は上の方から乾いていくので、上と下をずらしているところです。

 5)派手な色から、地味な色へ。「染め替え」

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着物の良さは、派手な着物で着れなくなっても、色を濃くできる「目引き」や、一度色を抜いてまた違う柄にする「染め替え」などできることです。
そのためには、まず2)のように「洗張り」をすることが大事で、解いて洗うだけでなく、色を変える二次加工ができます。そういった加工ができるのも、シルクなどの天然素材であるということが大前提です。


 6)別の用途に変化し再利用。「リメイク」

洋服と違って、着物を一度解いて洗張りした着物は、着物以外の別の用途に生まれ変わり、再利用し続けることもできます。

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【リメイクの一例】
着物 ⇒長羽織・道中着・袖なし羽織へ
男着物 ⇒女着物へ 
着物 ⇒帯・和装バッグ・草履の花緒などへの転用
着物 ⇒洋服・バッグ・ネクタイ・座布団・布団・傘などへの転用
浴衣 ⇒ナイトウエアー・男の長じゅばんとして。
胴裏 ⇒時計や骨董品磨きに。 

昔は、何度も使って滑らかになった着物は、おしめや、はたきなどにも転用され、最後は雑巾として利用していました。中には酪農家の方が、着物を解いて縫い合わせ、誕生したばかりの小牛の防寒服になさっている方もいらっしゃいます。
ボロボロになっても役目を果たし続ける「木綿往生(もめんおうじょう)」という言葉もあります。

 7)日本の受け継ぐ文化。「形見分け」

「形見分け」とは、故人の「形見」を家族や親しい人に分けること。「形見」とは、それを見ると故人のことが思い浮かんでくるようなモノのことです。故人の形見を分け合うのは、日本独自の風習です。地方によっては「袖分け」「裾わけ」などと呼ばれるところもあるようですが、これは昔、「着物」を形見とするのが一般的だったためといわれています。

昨今では、特に故人の愛着が強く、大切にされていた品なので、着物もさることながら、宝石や洋服などを形見分けされることもあります。しかし、故人の着物を譲り受ける場合は、格別な思いがあることでしょう。身にまとうことで守ってくれる安心感もひとしおです。
姉から妹などへの「おゆずり」や、お母さんの振袖を着る「ママふり」なども、日本古来からの「受け継ぐ」という美しい文化です。


 8)絹・麻・木綿など「天然繊維」100%

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昨今、ポリエステル素材の着物など出現していますが、古来からの着物の多くは、絹・麻・木綿などの天然繊維でした。その主な原料は、「動物繊維」と「植物繊維」の2種類に分けられます。
まず、絹(シルク)・カシミヤ・ウールなどが主原料のものを「動物繊維」といいます。動物の身を守る機能があるため、保温性や保湿性に優れています。
一方、主原料が綿(コットン)・麻(リネン)など植物のものを「植物繊維」といい、肌触りがよく、着心地が良く、吸湿性や通気性に優れています。
デメリットは、洗うと小ジワができますが、それもまた天然繊維の味の一つです。天然繊維は肌触りが良く、身体に優しいことが最大の魅力です。


 9)燃やしても、灰に肥料に!有毒ゼロ%

絹(シルク)の着物一反には、なんと蚕(かいこ)が約2.700頭、約100㎏「桑の葉」を食べて育ちます。ゆえに、着物は自然のめぐみそのもので、もちろん天然素材100%です。
着物として役目を終え、ボロボロになった着物を燃やしても、変な匂いもせず、灰になります。それはまた畑の肥料にもなります。自然の恵みを頂き、そして土に返すことができます。リサイクルの王道、循環型のエコの極みと言えます。

 おまけ:日本の気候にぴったり

そのほか、洋服と違って着物は肌に密着していないので、特に、梅雨から夏にかけてのムシムシ感などなく、ストレスの軽減になります。また、お腹を保護してくれるので、健康にも良いです。利休七即にもあるように、夏は涼しく、冬は温かく過ごすことが出来そうです。

◇さいごに◇

ご覧いただき、どんな気持ちが芽生えましたでしょうか。。。
日本の民族衣装である着物は、このように地球にやさしく、使い捨てではない「「つくる責任 つかう責任」を兼ね備えた、世界に誇るべき民族衣装といえるでしょう。

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着物は、親子三代・世代を超えて受け継ぐ「仕立て」方法。加えて「洗張り」、「染め替え」、「仕立て直し」などができるのも魅力で、他に類を見ません。それを着物業界は、100年以上前からごく普通に当たり前のこととしてやってきました。
西洋に追いつけ追い越せと、急ぎ過ぎた現代社会・・・。
もう一度原点に帰り、もったいない精神とともに、和文化を見直しながら、一緒に歩んでいきましょう!


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