スペース・シェリフ

現在もなお拡大を続ける巨大宇宙ステーション《フロンティア-9》
その職人街の一画に俺が常宿とする酒場《黄金の蜂蜜酒亭》はある。ここの名物はなんといっても高純度飲料用アルコール溶液に複数種のシナモ・スパイスを混ぜ、蜂蜜を加えることでアルコール度数を絶妙に調整した蜂蜜酒だ。ストレートでもいけるし、カクテルでも旨い。何よりこの店の香辛料がきいた肉料理とよく合う。

ここの親父は退役した元降下歩兵で、俺の先達だ。口入れ屋も兼ねている。
俺は一山幾らの兵隊上がりの辺境認定巡回保安官で時々親父殿に仕事を回してもらっている。
宿の主と宿泊客でもあるが、そんな関係だ。

お定まりの巡回で犯罪者や害獣をぶち殺して帰ってきた翌日、つまり今日俺は朝から飲んだくれていた。
何杯目かの蜂蜜酒を飲み干し、愛用の回転弾倉式拳銃を玩ぶのをやめ、尋ねる。

「良い仕事、ありませんか」

親父はじっと俺を見ると短く「あるよ」とだけ言った。

【続く】

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