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ウクライナ情勢: フランス・マクロン大統領とロシア・プーチン大統領の電話会談について。

ヨーロッパ時間28日午前11時より、ウクライナ情勢をめぐりウクライナとロシアとの間の仲介の動きをとるフランス・マクロン大統領によるロシア・プーチン大統領との電話会談が予定通り行われた。エリゼ宮によると、通話時間は1時間以上にわたったようだ。

会談内容の要旨は、同ヨーロッパ時間午後3時にまずロシア・クレムリン側より最初に発表された。通話時間が1時間以上と長時間に渡ったこと、議論の内容が大変詳細であること、アメリカ・NATOとロシア間の交渉の話とは別に、フランス(とドイツ)が今週に入り仲介を始めたノルマンディフォーマットの枠組みによるウクライナ・ロシア外交交渉の拠り所となるミンスク合意についてプーチン大統領が言及しており、フランスとドイツによる仲介をロシア側も前向きにとらえていることを示唆していると考えてよい内容だ。クレムリン発表による会談内容要旨は下記の通りだ。

・プーチン大統領は、ロシアから(アメリカ・NATOに対して)求めているヨーロッパ安全保障枠組み見直し案に関する確約を改めて強く要求した。

・ロシアはアメリカとNATOから書面回答を受け取ったが、内容を精査
した上で今後のステップを決める。

・ただし、アメリカとNATOからの回答にはロシア側の主要な懸念事項が考慮されていない。主要な懸念事項とは、NATOの不拡大、ロシア近傍地域における攻撃兵器の不配備、1997年以降に配備された軍と兵器の撤廃、を指す。

・また、アメリカとNATOからの回答で考慮されていないのが、安全保障の不可分の原則である。NATOのウクライナへの拡大はロシアにとって軍事ブロック拡大の脅威が増大することを意味し、安全保障不可分の原則から認めることはできない。ロシアは歴史的にウクライナを1世紀にわたりロシアと一体とみなしてきた。そうしたロシアの事情を考慮しないで、アメリカとNATOはウクライナを自分達の影響下に引きずり込もうとしている。

・ウクライナ側がミンスク合意を遵守すること、そこで取り決められた東ウクライナ紛争地域ドンバスの政治的に特別な位置づけを実現させるよう改めて要求した。

・それ以外のテーマとして、コロナ禍対策、イラン核合意、等の仏露間の懸案事項についても協議を行った。

また、クレムリンの発表からは時間をおいて、パリ・エリゼ宮からも午後7時にこの両首脳の電話会談の内容に関して発表があった。それによると、両首脳は、ウクライナ情勢をめぐる緊張緩和が急務であること、フランスとドイツが仲介役となるノルマンディーフォーマットの枠組みを通し、ミンスク合意に基づく東ウクライナ紛争地域の安定化を進めることで合意したという。また、マクロン大統領とは深く入り込んだ話ができるとの発言がプーチン大統領からあったことに言及しており、このようなエリゼ宮側の発表からも、両首脳による電話会談が前向きであったことが推測される。

(Text written by Kimihiko Adachi)

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