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フランス大統領選挙: 決選投票に向けた選挙戦の状況(6)

 4月18日はイースターの月曜日でフランス全土は休日であったが、マクロン氏は遊説は行わなかったものの、公共放送TV局France 5及びラジオ番組への出演による有権者への呼びかけを行った。France 5 の番組C à vousに出演したマクロン氏は、決選投票で有権者が棄権すると、民主主義を危機的状況に陥れかねない結果となるので、有権者は棄権しないで投票所に出向いて投票をしてほしいと呼びかけ、暗にメランション支持者に対して棄権ではなく自身への投票を促した。

 対するル・ペン陣営は、ノルマンディー地方の典型的な農業地帯カルヴァドス県を訪問、今回の大統領選挙の第1回投票ではル・ペン氏の得票が1位に付けたサン・ピエール・アン・オージで遊説を行った。メランション支持者からの支持獲得が狙いであろう。ノルマンディー全体における第1回投票の結果は、マクロン氏が29.26%、ル・ペン氏が27.14%、メランション氏が18.82%であり、今回の選挙情勢を象徴するかのような情景が広がっている。

 4月24日に行われる決選投票に関して、調査会社イプソスが18日に出した最新予想では、マクロン氏が56%を得票し、ル・ペン氏の44%を下し勝利するとしており、再びマクロン氏のリードが広がった。マクロン氏のリードは安全圏に近づきつつあるものの、微妙なところだ。同じくイプソスが18日に出した聞き取り調査の結果では、第1回投票でメランション氏に投票した有権者のうち、決選投票では38%がマクロン氏へ、16%がル・ペン氏へ投票すると回答しており、マクロン氏へ投票するとの回答が1日前の結果から5ポイント上昇した。また、第1回投票でゼムール氏へ投票した有権者では、決選投票でマクロン氏へ投票が11%、ル・ペン氏へ投票が73%となっている。フランス緑の党ヤニック・ジャド党首へ投票した有権者では、決選投票で61%がマクロン氏、7%がル・ペン氏へ投票すると回答しており、マクロン氏が脱炭素を目玉政策として挙げたことをうけて、緑の党におけるマクロン氏への支持の動きが広がっている。共和党ペクレス氏へ投票した有権者では、決選投票でマクロン氏へ投票が52%、ル・ペン氏へ投票が17%となっている。

 投票日4日前の4月20日夜に行われる予定の候補者2人によるTV討論が有権者の投票行動に大きな影響を与える。前回2017年の大統領選挙では、マクロン氏がTV討論に完勝し、その直後に得票見込みが5ポイント上昇し決選投票で地滑り的勝利を得た。今回は、マクロン氏が逆風下の現職大統領としてル・ペン氏の攻撃にさらされる側にまわるので、マクロン氏にとり必ずしも有利な状況ではないが、マクロン氏は、ル・ペン氏に完勝した前回のTV討論の時のように強気の姿勢で臨むのであろう。マクロン氏はディベートが非常に得意で、弁舌が巧みだが、マクロン政権のこれまでの5年間の景色をみてきた有権者が、今回行われるTV討論の内容をどのように評価するかは、予断を許さない状況だ。

(Text written by Kimihiko Adachi)

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