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第20回ドイツ連邦議会の開会について。

 9月26日に投開票された選挙結果を受け、昨日10月26日にベルリンで連邦議会が招集され開会した。ドイツ憲法(第39条)により選挙から30日以内に議会を招集することが定められており、今回開会した議会は会期としては第20回となる。会期は次回選挙後の次回会期の開会までを指す。つまり、会期中に首相不信任が議決されるといった例外がない限り、原則として向こう4年間がこの第20回会期となる。

連邦議会の開会でまず行われるのは、議長の選任だ。議長は選挙で第1党となった政党から候補が出され、議場で全議員の投票により選出される。したがって、今回は第1党となった社会民主党(SPD)から候補が出された。当初は、党内の序列的にベテランの男性議員が候補として有力視されていたが、党内で女性にすべきだとの意見が強まり、その結果序列にこだわらない形で女性議長(バース氏)が選出されることになった。

同時に副議長の選出も行われ、キリスト教民主同盟(CDU)、SPDからそれぞれ新任の女性副議長が選出、緑の党、独自民党(FDP)、左派党(Linke)からはそれぞれ前会期に職にあった副議長(緑の党とLinkeは女性、FDPは男性)が再任された。

 実は、2013年の選挙で連邦議会に極右ポピュリスト政党が進出してから、議会運営が従来とはかなり変わってきている。言論を戦わせる場である連邦議会では、それ以前も丁々発止の議論が常に行われていたが、極右ポピュリスト政党は議会運営に巧妙なタクティクスを持ち込むようになった。そこで行われるのは、大量の緊急動議や修正動議の提出や、緊急質疑を多用した支持層に向けたアピールである。議事によって多少の違いはあるが、議会運営において相当な労力がこうした極右ポピュリスト政党への対応に費やされているのが実情だ。

前会期を議長として取り仕切ったCDUの重鎮ショイブレ氏は、そうしたアピールを巧みな議事進行さばきでかわし、議会の秩序と尊厳を保ってきた。今回開会した会期でも、極右ポピュリスト政党は様々なタクティクスを講じてアピールを行ってくるであろう。そのように想像すると、筆者としては複雑な気持ちになるが、何れにしても、新しく選出された議長と副議長には、そうしたアピールに忍耐強く対処するタフで冷静な議会運営が求められることになろう。

(Text written by Kimihiko Adachi)

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