見出し画像

深夜に出会った人。

十数年前、一人暮らしをしていたときは堕落した生活を送っていた。
部屋を片付けていなくても、休日に夕方近くまで寝ていても怒る人はいない。

休日は食事をするために昼過ぎに起き、
食べ終わるとゴロゴロしながらテレビを観ていると再び睡魔に襲われ、
夕方すぎに一度目を覚まして夜ご飯はどうしようと考える。
自炊するにも買い物に行かなくてはいけないのなら
近所のファミレスで済ましてしまえということが多かった。

19〜21時ごろまでは混んでいるので
空く頃合いを見計って向かう。

通い慣れた道のり。
街灯の少ない中、すれ違う人もほとんどいない。

とある日、いつもと同じようにファミレスへ向かう途中、
スマホを片手に持った女性らしき人が一人で立っていた。

”こんな時間に人がいるのは珍しいな”と
思いながらその人の前を通り過ぎると

「すみません。」

と声をかけられた。
自分も深夜に出歩いている身だから
他の人のことは言えないけど
こんな夜中に出歩いている人と
あまり関わり合いたくないものである。

ただ、目の前で声をかけられたからには無視することもできず。

話を聞くと、とある施設へ行きたいが道がわからないとのこと。
割と近くではあるが、道が入り組んでいてわかりづらく
説明してもあまり理解できていない様子。

年頃も同じくらいか少し上くらいの女性で
少し歩けば分かりやすい道に行けたので
あまり警戒せずに、「案内しましょうか?」
と申し出てしまった。

「いいんですか!?」

と言われたところで
”いや、こんな時間に行こうとする人は普通じゃないよな”
と気づいて後悔をした。

申し出た手前、断ることもできず
ほんの2〜3分くらいではあるが、道案内をした。
”なぜこんな時間に行こうとしているのか”
聞いてはいけない気がした。

相手も同年代くらいの私に対して
警戒心なく話してくれる様子が見えた。
しかし、このまま人目のつかないところまで行って
刺されでもしたらどうしよう。
とよからぬ不安が生まれた。

そうこうしているうちに、
目的地まで真っ直ぐ行けば着く道に出た。

このまま行けば着きますよ。
と言い、別れようかと思ったがしばらく話が続いた。

聞くところによると数個隣の駅に住んでるらしく、
相手が私に対して親近感を抱いたのか
「連絡先交換しません?」と言われた。

昼間に会っていたら状況は変わっていたかもしれない。
ただ、こんな深夜に道に迷っていて何かよっぽど訳ありな臭いがする。。。
どう断ろうか脳みそをフル回転させた。
「ごめんなさい、お姉さんは悪い人ではないなとは思いますが、
正直、こんな夜中に出会った人と連絡先は交換できないです。
お姉さんが住んでいる辺りにもよく買い物に行くので
また偶然会うことがあったらそのときは連絡先を交換しましょう!!
では、私も時間がありませんので!!じゃあ!!」

返答を待たずに、その場を去ったが、
何か言いたげな表情ではあった。

ファミレスに着いてからも
なぜ昼間に来ないのか。
何が目的だったのか。
私が通らなかったら目的地まで行かずに帰っていたのか。
などなど疑問が残るだけであった。

帰り道でまた会わないか不安ではあったが、
無事に帰宅することができ、
その後も彼女と会うことはなかった。

何年も前の話ではあるが
もし、あのときなんでそこに行くのか聞いてたら。
もし、連絡先を交換していたら。
どうなっただろうか。
時折思い出す不思議な思い出である。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?