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お米がない!

店頭からお米(精米)が消えました(;_;)。

通販では7月頃から激しく値上がりしていたので兆候はあったのですが、食品スーパー等の店頭では8月中旬頃に突如、姿を消しました。

お米(精米)がスーパーの棚から姿を消した(8月15日)

たまに入荷することもありますが、だいたい「1家族1つ」に限定されています。もっとも、精米(無洗米を含む)は生鮮食品なので、保管できるのは精米日から精々1~2ヶ月。近くに精米所があれば玄米で買って冷暗所に保管できますが、スーパーで買える精米は買い溜めできません

不幸中の幸いで、9月には多くの産地で収穫時期を迎えるので、1~2ヶ月我慢すれば再びお米を買えるようになるでしょうが、それまでは節約しながら、割高なお米を少しずつ買うようにするのが良いでしょう。

9月中旬の新潟コシヒカリの産地(十日町市)

お米(精米)が姿を消したスーパーの棚には、パックご飯やインスタント食品、弁当、おにぎり等が並んでいます。日持ちのするパックご飯はわかりますが、おにぎり等が豊富にあるのは、弁当工場が定期契約でお米を仕入れている(≒予め在庫を確保してある)からでしょう。

空いた米売場にパック飯やインスタント食品が並ぶ

おにぎりや弁当には「国産米使用」とだけ書かれていて、品種は書かれていませんが、美味しく食べられます。弁当工場で使われるお米は別枠で確保されていることが多く、弁当工場向けのお米はブランドよりも、栽培される土地に向いた品種が選ばれることが多いようです。農家にとってはその土地に合った育てやすい品種を作れることと、価格は安いものの一括して買ってもらえるメリットがあるようです。

おにぎり・弁当の棚が拡大した食品売場

米の品種

雪国育ちのコシヒカリ

ところで、筆者は普段、会津産コシヒカリを買っていますが、首都圏では元々あまり流通していないので、見たことないよーって人も多いでしょうか。

通販で買えるほか、店頭ではJR東日本グループの食品スーパーなどで売っていました(今はご多分に漏れず完売していますが…)。

在庫が豊富にあった頃の精米売場

会津産コシヒカリは主にJR只見線・会津若松~会津坂下間の車窓から見える穀倉地帯で作られているのですが、そのまま只見線に乗って行くと山間部を通り抜けて魚沼コシヒカリの産地・新潟県魚沼市につながっています。

只見線列車の車窓から見える魚沼コシヒカリの産地(魚沼市)

どちらも日本海側の豪雪地帯で冬場は数メートルもの雪が積もります。コシヒカリはそういう地形に合った品種なのでしょうね。会津産コシヒカリも食味ランキングで「特A」の評価を受けている美味しいお米なのですが、魚沼ほどのブランド力が無いためか、美味しい割りに手頃な価格で買えるのも魅力です。

只見線沿線に広がる会津産米の産地(会津坂下町)

うちは他の品種を買うと家族がうるさいのでコシヒカリを買っていることもあるのですが、今は様々な品種が店頭に並ぶようになってきたので、そろそろ他の品種も食べさせたいと思っているところです。

ブランド米

今でこそコシヒカリは全国で栽培されていますが、新潟県から北陸地方の気候に適した品種です。

宮城県のササニシキ、秋田県のあきたこまち、北海道のななつぼしのように地域によって向いた品種があって、関東ではキヌヒカリという品種がありますが、買い手の消費者に品種の知識がないと有名ブランドばかりが売れるので、関東の米どころ・千葉県や茨城県でも一般消費者向けにはブランドの強いコシヒカリが主に作付けされていて、関東のキヌヒカリは弁当工場等に出荷されているようです。

新品種への切り替え

コシヒカリが登録された1956年頃と今の気候はだいぶ変わってしまったのでしょうね。特にここ数年は地球温暖化(気候変動)の影響が顕在化し、体感できるほどの異様な高温になっています。

2023年の日本は1898年以降で最も暑かった(国立環境研究所資料より引用)

昨年(2023年)は収穫量こそほぼ前年並みだったようですが、1等米の割合が低く、北海道のご当地米「ななつぼし」は比較的出来が良かったのに対し、コシヒカリの出来が特に悪かったようです。

私たち人間は冷房を使って暑さをしのぐことができますが、一日中屋外で育つお米にとって気候変動は死活問題。その土地の気候に合わない有名品種を作り続けることのリスクが高まっているとも言えそうです。

コシヒカリの本来の産地でも、暑さに強い品種への切り替えが進められています。例えば富山県では「富富富(ふふふ)」という品種が15年かけて開発され、2018年に登場昨今の高温を受けても品質の劣化があまりなく、積極的に切り替えが進められることになりました。

関東ではあまり見る機会がないですが、東京都心にある富山県の自動販売機やアンテナショップなどへ行くと見られます。

地下鉄東西線・大手町駅構内の自動販売機で販売されている「富富富(ふふふ)」(2021年撮影)

コシヒカリの元祖・新潟県ですら、暑さに強い「新之助」という新品種へと切り替えていますし、極早生で食味がコシヒカリに似た「葉月(はづき)みのり」という新品種も開発され、強いブランドを持つ魚沼でも他の品種を見かけるようになりました。

人の名前のような聞きなれない品種名ですが、葉月(8月)に稔るからこの名前が付いたのでしょうか。味はコシヒカリ似で、しかも8月に新米が出回るので、店頭で見かけたら試してみてくださいね。

8月に新米が出回る極早生の新品種、新潟県魚沼産「葉月みのり

元々キヌヒカリが多く栽培されていた神奈川県では、キヌヒカリとコシヒカリをかけあわせた「はるみ」という品種が開発されて人気を得ています。

「はるみ」は食味ランキングにて「外観、香り、味、粘り、硬さ」の総合評価で最高位の「特A」を獲得し、店頭では魚沼コシヒカリと並んで売られる超高級米になりました。

地元のスーパーで販売されている小田原市産「はるみ

新しい品種も試してみよう

従来店頭には「コシヒカリ」「あきたこまち」などの定番品種ばかりが並んでいましたが、ここ数年、様々な品種が並ぶようになりました。ここにきて品種が増えてきたのも、温暖化の影響が深刻化してきたことが背景にあるのでしょう。

筆者がよく湯治に訪れる山奥の温泉旅館で、とても美味しいお米を出す旅館があるので、どんな品種を使っているのかと聞いてみたことがあるのですが、品種にはこだわっていないそうで、いろんな品種を使っているが、ここで炊くとどれも美味しく炊ける。つまり品種よりも水だろうと。同じお米でも麓の自宅で炊くよりも、山奥の温泉旅館の湧水で炊く方が美味しくなるのだそうです。

だからと言って水を変えるのは難しいので、美味しいお米は山奥の温泉宿を訪ねた時の楽しみにとっておいて、普段の食卓に使うお米はいろんな品種を試してみると良いのではと思います。

これまで「コシヒカリ」や「あきたこまち」などの定番品種ばかりを買っていたという人も、品薄になって他の品種を買わざるを得ないという人もいるかもしれません。しかも今は5kgや10kgでは買えず、2kgしか販売していない店もあります。今は他の品種を試してみる機会だと思って、いろんな品種を試してみるのも良いと思います。

そして、栽培される土地に適した新しい品種についても調べてみてください。お米の品種は産地の気候と密接な関係があるので、美味しいお米に出合えたら産地を訪ねてみるのも良いと思います。見識が広がることで毎日食べるお米をより美味しく頂けることと思います。

全国お米の食味マップ(「日本列島 お米図鑑」より引用)

温暖化を食い止めるために

昨年の不作の原因は異常な高温と言われますが、2023年は観測史上最も暑い年になり、国連事務総長は地球温暖化を通り越して「地球沸騰化」だと評していました。

今年のデータはまだ出揃っていませんが、今年の夏も酷暑が続いています。人口が集中する都市部では元々ヒートアイランド現象がありましたが、近年はさらに地球温暖化(気候変動)の影響が顕在化し、都市部のみならず農地でも高温になっているのでしょう。

日本の気温はどのくらい上がったの?
JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター資料より引用

日本では地球温暖化の原因である温室効果ガス排出量の9割以上がエネルギー起源。つまり不作の遠因は私たちのエネルギー浪費だということになりますが、温暖化を食い止めるためにできることは多くあります。とりわけ効果が大きいのは、化石燃料をやめて再生可能エネルギーに切り替えることと、エネルギーの浪費をやめることです。

再生可能エネルギーを増やす

ここ数年で電力会社を選べるようになり、電力会社でも再生可能エネルギー(再エネ)を中心に供給することを謳うサービスが増えていて、私たち一般消費者が電気を選べる時代に入ってきました。

でも、必ずしもうまくいっていないようです。日本政府は石油等の化石燃料と原発への補助金が手厚く、今でも原発とガソリンへ膨大な補助金等が拠出されているのに対し、再生可能エネルギーは冷遇される傾向にあります。

電気に絞ると、かつて民主党政権時代にFIT(固定価格買取制度)が始まりましたが、政権交代以降に縮小され、国はほぼ無策になりました。今は地方自治体の方が活発で、例えば東京都川崎市では、新築住宅に太陽光発電の設置を促す制度が始まります。

また、消費側の企業は再エネの調達を競っています。電車が100%再エネで走っていたり通信事業者が基地局やデータセンターで使う電力を再エネに切り替えていたりしますが、日本ではせっかくある太陽光発電や風力発電の設備を100%活用することができず、少ない再エネを競って買い付けることで価格も高くなりがち。国の原発優先のエネルギー政策を再エネへと大きく転換させないと、企業の国際競争力を落とすことにもなりかねません。

自家用車をやめる

一方で、私たち消費者ができる最も簡単かつ効果的な対策は、自家用乗用車を使わないことです。

個人でできるエコ活動として、電灯のスイッチをこまめに消すだとか、冷暖房を1℃調整するだとかの様々な呼びかけがされていましたが、他のあらゆる努力をしても、自家用車を使っただけで全ての努力が吹き飛ぶほどの悪影響があるのです。

家庭からの二酸化炭素排出量(2022年度、世帯当たり、用途別)
JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター資料より引用

自動車は投入したエネルギー(ガソリン等)の8割以上を熱として捨てていますから、エネルギー浪費の典型です。しかも夏はエアコンを動かしているでしょうから、さらに多くの熱を外に出して非効率になっているでしょう。

とはいえ、救急車や路線バス、貨物輸送などの代替が難しい自動車は致し方ないですが、自動車のおよそ半分が自家用乗用車で、いわゆるマイカーは無駄に使われている(他の交通モードで代替可能な)ことが多いので、他の交通モードへの乗り換えをお勧めします。

とりわけ暑い夏の都市で自動車を使うのは、涼しい顔をしてヒートアイランド現象を引き起こし、周りにいる歩行者や自転車利用者を加熱しているのですから、「自分さえ良ければ」という思考の典型例とも言えるでしょう。

典型的な乗用車のエネルギー効率(の悪さ)と土地利用の非効率さ、道路上での歩行者殺傷被害の実態を示した図

都市部に住んでいる人は、自家用車を売り払い、自転車やバス・電車に乗るのが最も簡単で効果的。マイカーは持っているだけで都市部の貴重な土地を浪費する金食い虫。どうしても必要な時だけタクシーやカーシェアを使うとか、お米などの重い物を買う時にはネットスーパーや配送サービスを利用する方がむしろ安上がりです。

地方によっては、路線バスが廃止されてしまいタクシーも廃業して選択肢が無いという場所もあるでしょう。そういう所にも乗合タクシーなどがありますし、自転車にも電動アシストが付いて意外と便利です。そして、自治体が交通政策をサボっている場合があるので、電車やバスを便利にするよう要望を出しましょう。

ちなみにレジ袋については、省エネのみならずプラスチック削減に効果的なので、ぜひマイバッグを併せて利用したいですね。買い物にはマイバッグを持って自転車で出かけましょう。

参考リンク

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