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流浪の老体
2018年10月16日 13:19
スーツの男が差し出した紙切れ‐依頼状‐を一瞥すると、継ぎ接ぎだらけのコートの男は舌打ちをした。「バラバラにするとこだった」コートを翻すと、男は明かりの方へと歩き出した。後をついて行こうとして直ぐに、“スーツ”はそれがどういう意味かを知った。鼻に何かが触れた。それは、不用意に触れれば切れてしまいそうな、透明な『糸』。周囲をよく見れば、いたる所に同様の『糸』が張り巡らされている。