見出し画像

秋きぬと目にはさやかに見えねども、立秋

本日8月8日は、立秋〔りっしゅう〕。
今日からは、残暑お見舞い申し上げます。

立秋は、二十四節気のひとつ。
二十四節気は一年を24等分に区切ったもの。旧暦時代、月日は月の満ち欠けで決まる太陰暦だが、これでは季節感がズレてくる。そこで太陽の軌跡にあわせた二十四節気が取り入れられるようになった。

まずは冬至夏至、春分秋分の二至二分で一年を4分割。
さらにそれぞれの間に立春立夏立秋立冬の四立が定まり8分割。
さらにさらに各期間を3分割して24等分に季節を配する。

夏休みや月後れのお盆など、季節はこれから夏の盛りを迎えようとしているのに、暦〔こよみ〕はひとあしお先に秋の到来を告げる。このちょっと先取り感が心憎い。

 秋立つ日よめる     藤原敏行朝臣
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる

『古今和歌集』巻第四 秋歌上

立秋になると、そのたとえによく持ち出される和歌。「風の音」におどろくとは季節のうつろいに敏感な王朝人らしい言葉だと思う。
桔梗之介は、日中は汗かくほどの陽気だったのが、日が落ち風が心地よい涼しさになってくると秋めいてきた感じがするかな。

藤原敏行は三十六歌仙のひとりとされる。父は藤原富士麻呂、母は紀名虎の娘。また藤原敏行は紀名虎の子である紀有常の娘を妻としている。紀有常の娘には在原業平の妻がいる。つまり藤原敏行は双方の妻を介して在原業平と義兄弟という関係、
もっとも平安貴族に現代人的義兄弟感覚がなじめるかどうか知らない。

この和歌は『古今和歌集』の秋の巻頭を飾る和歌である。そして、『古今和歌集』の春の到来を告げる和歌も「風」である。

 春立ちける日よめる   紀貫之
袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ

『古今和歌集』巻第一 春歌上

そういえば「風の時代」なんて言葉を耳にする。詳しくはしらない。
せわしない浮世に古人の和歌にふれ、風を感じ季節をあじわうも悪くなかろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?