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作品のあらすじ、登場人物

酷暑が続きますが、皆様、お元気ですか?
くれぐれも体調を崩されぬよう御自愛ください。

夢幻小説『音庭に咲く蝉々』のご案内です。

今回、まずは「あらすじ」と「登場人物」をご紹介します。
何となく作品のイメージを浮かべて頂ければ幸いに存じます。

【あらすじ】
  
  謎の失踪を遂げたまま消息不明となっていた旧友・時原敬一(ケイ)の訃報を知った僕は、弔意を示そうと彼の実家・鏡海寺を訪ねた。そこで、ケイの死は曽祖父、華道家・鏡月の予言通りであることを告げられる。じわじわと再生してやまない古い記憶の影に、僕たちは翻弄されていく…。
 1983年、夏、ケイの自宅、石夢野の鏡海寺で起こった異変。ケイに導かれて、天才華道家、故・時原鏡月の影響が色濃く残る旧家の中庭(石室)へ辿り着くと、そこには推定年齢2500歳の小白猿が瞑想していた。さらに、石室の天井を旋回する平安時代伝説の奇獣ヌエ。幻覚と恐怖に耐え切れず、気絶し、冷たい床に沈む僕…。

 恐るべき怪現象に翻弄されながらも、魔人ケイに牽引されたロックバンド〈アプリオリ〉の面々は、ひたむきに文化祭の成功をめざす。実行委員会との軋轢を克服し、メンバーたちは何とか演奏の強行に踏み切ったが、そこで、またしても嵐のような強い幻覚が発生する。
 神の指によって奏でられた旋律が、聴衆の耳に夢幻を生み落とし、夢魔の洪水が溢れ、煌めくイメージの百花繚乱に包まれる。現実感覚が麻痺した共同幻想のなか、熱狂が最高潮に達したとき、ステージの向こう側に荘厳な彼岸風景が出現した。
 そこに登場したのは、はるか昔に他界したはずの花僧・時原鏡月だった。さらに西行法師の影も。鏡月に招かれて、あの世に引き摺られるケイ。彼は異次元に接しつつ古代楽器を奏で、遂にこの世の日常空間と決別する。果たして、それは真の解脱だったのか? しかし、ケイは失踪したまま、成仏できずに、約十八年の歳月をあてもなく放浪しなければならなかった。
 
 かつて文化祭の歌姫をつとめあげた鮎川舞子…。彼女との再会によって、思わぬ新事実が露呈する。青春と挫折、芸術と家系、宗教と異界…、神白猿の秘密、万象卵、そして幻肢。平安時代末期、傍系皇族が北上し、その末裔が暗躍しているという謎の伝説。
 そのトリックが明かされたとき、天才ケイの失踪の謎が思わぬ形で現実味を帯び始めた。現実と非現実の境界が一気にメルトダウン、ケイの死によって終止符が打たれたかに見えた僕たちの物語は、ねじ曲がった時空の中で、異様な交響曲に再び包まれていく。
 
 誰にも止められない青春期の焦燥、高揚、奇行。煌めく芸術世界へ傾き、共鳴し、陶酔する魂・・・・・・。
 〈羽化〉をテーマに綴られた数篇の断章が、平安時代~明治大正~昭和末期へ至る歴史の裏街道へ連動し、爛熟期から衰退期へ向かう日本社会を背景に、漂泊する芸術家の青春像を浮上させる。
 変死事件を中心に再会する旧友たちの姿と、芸術一族の末裔が体感した神秘的幽玄を通して、旧家の落魄と果てしない無常を描いた幻想絵巻。花鳥風月・詩歌管絃、六道輪廻の最頂域に属する天道には、耽美主義ゆえに解脱しえない宿命があり、時空を超えた迷宮から逃れられない・・・・・。
 西行法師の魂が漂泊する日本芸術の経絡に、今もなお見え隠れする美意識と仏道的大悟の矛盾に挑む、夢幻幽玄譚。
 
 
【主な登場人物】
 時原鏡月… 天才華道家。元・鏡海寺住職。
 時原敬一… 通称ケイ。鏡月の曾孫。失踪したカリスマ奏者。
 鮎川大吉… 宮大工。鏡海寺の山門を作った名匠。
 鮎川舞子… 通称ヴァーミリオン。美貌の歌姫。大吉の曾孫。
 高村秀昭… 通称ダイコク。ドラム担当。
 秋本所縁… 通称ユカ。キーボード担当。
 藤沢直樹… 僕。通称フジ。ベース担当。ケイの親友。
 柿沼織絵… 僕の恋人。ケイの親戚。
 平林先生… 県立医科大学の精神科医
 夕映太郎… 公園に現れる謎の仙人。
 草庵禅師… 樹香寺に住む謎の禅師。人の前世を知る。
 庄司…    生徒会長。学内の権力を牛耳る。
 小堀…    庭師。修行時代に時原鏡月と親交。
  
【歴史上の人物】
 西行法師・・・   佐藤義清。鳥羽院北面の武士、僧侶、和歌の天才。
 高倉宮以仁王・・・  後白河天皇の第三皇子。平家打倒挙兵。
 源三位頼政・・・    御所の武士、公卿。奇獣ヌエを捕獲。
【その他】
 ヌエ…   伝説の奇獣。頭は白猿、胴体は狸、手足は虎、尾は蛇。

はい、このような設定になっております。
かなり夢幻色の濃い迷宮小説なので、なかなか容易には御理解いただけないかもしれませんが、ひとりでも多くの方々にお読みいただきたく、本日ここに御挨拶申し上げます。     著述家・菊地夏林人  拝


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