罪を犯すとそれまでの人生も全否定されてしまう。

そんな世の中なのかなぁと最近感じます。

罪を犯した事はどんな理由があれ
もちろん許されない事で
そこは弁解の余地はないのは分かります。
その事に向き合わなければいけないし
反省もしなければいけないでしょう。

でもそれ以外の、それまでその人が生きてきた中での出来事を
今になって過去を掘り返して
あーだこーだと責め立てるのはどうなのかなと思ってしまうのです。

何か悪い事をしてしまったら
鬼の首をとったかのようにみんなでよってたかって酷い言動を投げつける。
まるで誰かが罪を犯すのを待っていたかのように。

◇

今は情報が溢れていて
昔は近所の人の噂話程度だったのが
ネットという拡声機のおかげで
もの凄いスピードで広まってしまいます。

例えば私のように地方に住んでいたら
コロナに感染した人が出ただけで
だいたいどの辺りに住んでいる人なのか
仕事や家族構成まで伝わってくる事がありました。
私の耳に入るくらいだから
知りたい人、知ろうとする人には
きっとすぐに伝わっていたと思います。

犯罪ではないコロナでさえこんな扱いです。
これが犯罪だったら…どれほど詳しく伝えられるか
想像するのは容易でしょう。

私自身、周りにそういう事があったかなと振り返ってみました。
家族が警察にお世話になったのは
落とし物をした時とスピード違反や接触事故などといった交通トラブルくらいで…。

親戚にも思い当たらず
ふと、高校時代の友達の事を思い出しました。

◇

A君は高校が一緒でしたが
卒業してからの方が話す機会も多く
二人で遊びに行った事もあるような人です。

東京へ進学した人達で大学の頃は集まる事がよくあったので
それで仲良くなりました。
又、A君の仲の良いグループのメンバーは
私と高校時代に同じクラスだった人が多かったので
長期休みに地元に帰った時とかは
よくみんなで集まって遊んでいました。

大抵は月日の流れとともに東京に友達が出来て
集まらなくなってしまったりするのですが
そのA君達グループはいつまでも仲が良く
長期休みは必ず集まっていた印象です。
逆に私はだんだん地元に帰る理由がなくなり
体調が悪くなった事もあって疎遠になってしまいました。

なので、かなり時間が経ってから知ったのですが
A君のお父さんが何か事件を起こしてしまったそうです。
横領とかそういった感じの内容だった気がします。
それ以来、A君は地元の集まりに来なくなり
高校の友達、ひょっとしたら地元の友達とも会わなくなったようです。
ご家族も引越したような事も耳にしました。

私が知ったのは私自身も東京を離れ
又地元で暮らすようになってからです。
A君と仲の良かったグループの人と久しぶりに会う事になり
その時に詳しい話を初めて聞きました。

その人曰く、こちらから連絡をしても返信がないと言ってました。
ある日、電話をかけてたまたま繋がって話をしたけれど
元気でやっているから大丈夫、心配しないでくれと言った感じだったそうです。
きっとみんな心配のメールなどをしていたから
自分は大丈夫だ、放っておいてくれと暗に伝えていたのでしょう。

集まる時には声をかけているんだけど全然来てくれなくなった、と。
『オレらはそんな事、全く気にしてないのにな』
そう言っていた友達が本当に寂しそうだったのを今でも覚えています。

◇

その話を聞いた時はなんかショックでした。
私みたいな転勤族とは違い
生まれ育った所が同じ人がその土地を離れると言うのは
簡単な事じゃなかったと思ったからです。
本人は何もしてないのに…。
でも、その友達や地元の人と会う事は
A君にとっては耐えられなかったのかな。
それぐらい何か言われる事もあったのかな。

私も彼とは連絡を取れなくなっていたので
推し量ることしか出来ませんでした。
友達がいくら気にしてないと言ってもA君は気にしてしまうのでしょう。
ひょっとしたらもう思い出したくもない過去に
地元が変わってしまったのかもしれません。

いつになっても良いから
私の友達が言っていた
『オレらはそんな事気にしてない』という言葉が、気持ちが
彼に届いてくれると良いなと願うばかりです。

◇

私の近くであった事ですが
その時にどんな事があったのか
東京にいた私には全く分かりません。
だから、罪を犯した人の家族の事しか知りませんが
それでも世間というのは厳しいのだなと感じます。
私が彼の立場でも、確かにもう友達とは会えなくなってしまうと思いました。
きっと引越しもするだろうし
何も知らない人たちの所へ行きたいと思います。

ごく普通の人でもそんな扱いなのだから
有名な人だと逃げる場所もなくただひたすら耐えるしかなくなります。
それをいい事にひたすら標的にしてしまっているのではないかと
最近ニュースやネット記事を見て感じるのです。

失敗や過ちはどのレベルまでなら許されるのでしょうか。
どのレベルまでなら、また人生やり直せると言えるのでしょうか。

実際はどんなに極悪非道な事をしても
罪を償ったのならその人が生きている限り
人生は嫌でも続くのです。

どんな目にあっても罪を犯したのだから仕方ない。
耐えるのも償いの一つだと言うことなんでしょうか。

生き続ける限り償わなければいけない罪もあるとは思います。
どんな誹謗中傷にも耐えるべきだと思ってしまう罪もあります。

でも、そんな罪はそんなに沢山あるものではないはずです。
生きにくくしたのは自分かもしれないけれど
心改めて生きていこうと思っている人を
わざわざ傷つける必要なんてないはずです。

一度やらかしたら終わり。
そんな人生、攻略難易度が高すぎる…。

私は自分自身、失敗をする方だと思っているからか
過ちを責め立ててその人の人間性を否定するような内容には辛くなります。

人生長くなってしまったのだから
悪い事をしてしまう事もあるかもしれません。
誘惑に負けてしまった事は皆さん多かれ少なかれ経験はあるはずです。
それが犯罪かどうかは別にして。

それでも生きていかなければいけない。
罪ときちんと向き合い、必死に生きようとしている人に
石を投げるのではなく
見守らなくていい。
そっとしておく事はそんなに難しい事でしょうか。

何事も当事者にしか分からないのだから…。
どんな理由があったのか。
どんなきっかけがあったのか。
それらが重なってしまったのか。

決して罪を犯した人の味方をしているわけではありません。
その罪以外の部分を攻撃したり非難したり。
償った罪を掘り返したり。

どんな人に対しても
無責任に大多数の意見に乗っかって暴力を振るうのは
見ていて違和感を感じてしまう、そんなお話です。
上手くまとめられなかった…。

今は文字で人を殺してしまう時代だから
私達は言葉の使い方を見直すべきかもしれません。

私自身も、文字の恐ろしさや威力を知り
紡ぐ言葉には責任を持たなければ。。。