静寂の図書室で2人は話す

その3 :ゴミ捨て場にて。

忙しかった文化祭準備期間と楽しかった3日間の文化祭が無事終了しいつもの学校生活になった…と言いたいところだが、絶賛全校生徒でその文化祭のお片付け中である。
金・土・日で文化祭をやり振替休日の月・火が過ぎ、本日水曜日がド派手彩った学校の装飾なりクラスの片付けなり綺麗さっぱり何も無かった状態に戻す。普通は文化祭終わって徐々に片付けると思うが前まではそうだったらしい。
しかし一昨年から校長が
「忙しかったあと夜中まで片付けやるのは嫌だろうし、しっかり楽しんでしっかり休んで次の日しっかり片付けた方が楽でしょ」と決め今のスタイルになったそうだ。
余韻で授業モードにならないのは分かるし1日を掃除に費やして帰れるの楽かと私は今1人では持てない量のゴミをゴミ捨て場にを持って行こうとしたら
「うわ!無理しちゃダメだよ。半分貸して」
後ろから優しい台詞を言ったのは私の隣の席の
岩瀬 瑠璃(いわせ るり)さん 女性
身長160㎝と小柄ながらも積み重なった段ボールをひょいと持ち上げ元気よく「行こう?」と言った彼女は空手部
髪型はがっつりショートと言いたいが少し茶色のミニボブ
帯は紫と結構上位らしく実家も伝統ある空手一家で、最初空手やる気なかったけどオリンピック中継見てカッコいいと思いやりたい!と家族に話しみるみる成長。2年生になる頃は茶色になると言われていて、段ボール持つ腕を見れば鍛えてるのが分かる。
腕を凝視してた私に気づき岩瀬さんは
「私の腕かっこいいでしょ」
ドヤ顔しながら自慢する姿にかっこいいとキュンとしてしまった。こりゃ女子も惚れるわ。
そんな会話を一緒にゴミ捨て場までしつつゴミ庫のおじさんが
「コロナで入場制限してるからはいこの番号札持ってて〜近くなったら呼ぶからそこのストーブ部屋で待ってて。捨てるだけだしすぐ順番来るよ」と5番の札を渡された。
「今何番の人ですか?」
「3番だよ。大体1人5分で終わるから5番だと体感的に15分待つかな?もうすぐ終わりそうだから10分だと思ってくれ」
10分くらいならすぐ来るだろうな
「岩瀬さんあと捨てるだけだし先戻って作業の続き入ってよ。ここまでありがとう助かりました」
「良いの?2人で捨てた方が早いよ?」
「持ち帰る物特に無いし片付け作業の人手足りた方が良いでしょ。ゴミ捨て任せて」
ドヤ顔で腕を曲げ全く無い力瘤を叩く動作したら、岩瀬さんはクスッと笑い
「じゃあお言葉に甘えて行くね〜よろしく〜」
と素敵な笑顔で教室に戻った。
そうこうしてる内に「4番目の方良いぞ〜」とおじさんが呼んでて次だし早そうと思いながらストーブ部屋に入った。
ここはいつも清掃のおじさんが作業休む時に使う部屋というか部屋兼倉庫。周りには清掃作業に使う道具や軍手など物が溢れているが、きちんと整理してあるので窮屈感は無い。壁はコンクリートで出来てて窓が4つ付いてるし日陰になりやすい場所だから夏は涼しい。寒くなるとおじさんが自宅から持ってきた灯油ストーブで暖まれる。これがめっちゃ暖かくて暖まりに来る先生や生徒が多いんだとか。
私はこれが初めてのストーブ部屋だけど本当に暖かくてウトウトしてきた所に恐らく私の次であろう人達が入ってきた。
「やっとクラスの片付け終わり見えてきたな」
「腹減ったよ〜昼まで後どんくらい?」
「後2時間だな」
学年もクラスも分からない男性2人に私は軽く会釈し寝ないようそのままスマホゲームする事にした。
男性2人の会話は続く
「今日クラスで文化祭の打ち上げやるみたいだけどお前行く?」
「先生の奢りでお好み焼き食べ放題だっけ?美味そうだし行こうかな。テツヤは?」
「今日母さん父さん家居なくて晩御飯俺が作る事になるかもしんないんだよ」
「ああ〜夫婦水入らずで温泉旅行だっけ。で1人っ子のお前は自分でご飯作るいつもの流れね」
自分で作るの偉いな。しかもいつもの流れなんだ
「それそれ。これだから旅行好きの親は困る」
「仲良いのは良いじゃん。それに3人でも行くんだろ?もっと良い事じゃん。でもいつもならすぐ断んのになんで迷ってるん?」
「いや、それは…」
それは?何?もしかして?
「あ!!ハシモトさんが参加するかだろ!!」
「声でけえよばっか!!」
テツヤさんは顔真っ赤にしてAさんの頭叩く
(今の所テツヤさんしか分からない為もう1人はAさんにする)
文化祭マジックでよく好きな人や恋人が出来ると聞いているがテツヤさんもそうなのかきっかけ知りたい
「でも確か文化祭でハシモトさんと同じ当番になったんじゃねーの?話すキッカケ出来たとか喜んでたじゃん」
「そ、そうなんだけどそれがさ」
それが!?何!?どうしたどうした!!
私がスマホゲームに集中しているように見せかけ内心彼の恋愛事情にドキドキしていたら
「5番の子来て良いよ~」
気の抜けた声が倉庫入り口から響く
清掃のおじさんが呼びに来てくれた
ああああ今じゃない~!! 
マスクしてて良かった。悔しい顔がバレなくて済んだ。
「はーい」と返事して2人にまたもや軽く会釈しつつどんな人か見てみた。
Aさんは坊主でぱっちり二重
声低かったから強面かと思いきや可愛い系
テツヤさんは奥二重だけど塩顔
優しい声だがハキハキ喋っていた印象
もしかして委員長なのかな
2人ともブレザージャケットの襟に緑のピンバッチ
うちの学校の制服はブレザーで学年別に付けるピンバッチの色が変わる
1年生は白
2年生は緑
3年生は赤
昔は女性はリボン、男性はネクタイで色分けしていたが生徒から
「赤色で統一して欲しい」という要望が出始めこのピンバッチ分けへ変わったらしい。ピンバッチなら卒業式で貰いやすいと高評価
緑って事は2年生か
先輩知ってるかな~と思いながら倉庫を後にして大量のゴミをひたすら捨てた。
               ◎
「・・・て事があったんですよ」
文化祭お片付け日から1週間後
本当にようやくいつもの日常が戻り約1か月振りの図書当番
先輩ともこうしてカウンターで話すのも久しぶりだし、会うのも先輩のクラスの演劇見に行ったぶりか。月日が流れるの早いな~
「多分その2人2年A組の奴らだ。坊主でぱっちり二重で低音ボイスは野球部の塩谷祥太郎(しおやしょうたろう)。応援の声が力強くて有名な副部長だ。そんでハキハキ喋る塩顔は姫田哲也(ひめだてつや)。後輩の言う通りA組の委員長で次期生徒会長とも言われていたけど、本人は断って書道部部長やってるよ」
「書道部ですか!?」
「中学の頃お姉さんがやっていたの見て真似したらどんどん上達したんだってよ。ここに入ったのも書道部があるからだってさ」
「強豪って訳では無いのに?」
「賞とか興味なくて単純に楽しみたいんじゃね?大会出てないらしいが運動部の垂れ幕や地域の祭りの看板の文字書いてて、その上手さから県の広報の表紙もやってるらしい。その活躍もあってか部員は10人も居るんだって。」
「へえ~知らなかった。そっか運動部の垂れ幕書いたって事は野球部のも書いて関わりが出来て2人は仲良くなったんですか?」
「確か当時野球部の部長が新しい幕作成する時書道上手い奴誰か居ないか聞いてて、哲也を知ってた塩谷が声掛けたのが始まり。部長が自分の名前好きな様に書かせたの見て絶賛したんだとよ。俺らの中では有名な話さ」
「凄いですね。ハシモトさん分かりますか?」
「2年A組のハシモトだろ~2人居るからな。しかも姉妹で双子。お陰で顔似てんだけど、性格・髪型・身長全然違う」
「それならすぐ分かりそうですがどう違うんですか?」
「えっとな」
2年A組のハシモト姉妹
どちらも猫目のぱっちり二重で中心顔
姉 橋本美雪(はしもとみゆき)
性格:静かでおしとやか。仲良い人とは凄い笑うしよく食べる。
髪型:黒髪マッシュショート
身長:160cmくらい

妹 橋本萌咲(はしもともえ)
性格:口悪いが優しい。他人に興味なくあっさりしてる。
髪型:黒髪オン眉ミディアムボブ
身長:180cmくらい

「妹さん大きいですね。先輩と同じくらいじゃないですか」
「俺は185cm!!全然違うわ」
「0.5なんてほぼ一緒ですよ。先輩はどっちだと」
「姉かな」
「即答するくらい自信あるんですね」
「妹には彼氏がいるからな」
「そうなんですか?同じクラスに?」
「いや、噂だと他校の幼馴染らしいがここか結構めんどくさくて」
「めんどくさい?」
「これも噂なんだけどどうやら姉から奪ったみたいなんだ。中学から妹は好きでだけど姉の方が仲良くて付き合ってる説出てて、ほら姉の物も欲しいとかあんじゃん?どうにかして付き合ったらしいよ。」
「それ本当ならめっちゃ怖いですよ」
「噂だからな~どっかで変わったかもしんないし鵜呑みにしない方が」
そう先輩が言っていたら図書室のドアが開いた。
私達は一旦黙り挨拶しようとしたら「こんにちは」と元気な声
私が「こんにちは」と返したが先輩は返さない
何でだろうと横目で見たら先輩は目を真ん丸にしてて
「後輩 あいつが妹の萌咲だ」
えっ と小さく反応した私の先に本を探す橋本萌咲先輩が居た。
           ◎
「可愛い方じゃないですか。図書室に来たのは初めて見ました。」
「後輩が初めてなだけで実は何回も来てるかもよ」
ニヤッと笑う先輩の一言にぐうの音も出ない
「にしても本読むイメージ無いな」
「先輩にもありませんよ」
「馬鹿 漫画だって立派な本だよ」
そんな小学生みたいな言い争いしていると萌咲先輩が近づき
「これ借りたいです」と言ってきた。
本を預かり貸し出し作業と説明して渡すと
「大山君図書当番してるの?」
萌咲先輩が先輩に話しかけた
「俺は後輩の当番の時遊びに来てんだ。こうやって隣に座って話してんだよ」
「後輩って呼んでんの?貴方はそれで良いの?」
突然会話を振られビックリしてしまい
「ふぁい!」と声が裏がってしまったが気にせず
「私も先輩と呼んでるんで特に何も」
「2人面白いね笑 私も青春したいわ」
「何だよ。彼氏居たんじゃねえのか」
先輩がさらっと切り込む
「お姉ちゃんの好きな人奪った噂でしょ?嘘だよあれ。お兄ちゃん的な存在しか見てないし眼中にも無い。第一その人中学からお姉ちゃんとずっと付き合ってるからね」
「じゃあ何でそんな噂出たんだよ」
「話したいけど長くなるんだよ、ってもしかして後輩ちゃん噂知ってんの」
「先程話の流れで先輩に聞きました」
先輩はスマンと謝り経緯語る
「じゃあ結論から話すよ。書道部のてっちゃんが好きなのはお姉ちゃんで正解。そこから文化祭の出来事もあるんだけど」
「あるんだけど?」先輩がウキウキした顔で見つめる
その顔見た萌咲先輩はニヤッと笑い
「そんじゃ明日放課後学校の音楽室に集合ね。言ったでしょ?長くなるって。後輩ちゃん明日暇?ここまで聞いたなら来てよね」
「ええ・・まあ暇なので行きます」
どえらい事に巻き込まれてないか私
「大山君家の用事ある?」
「無い」
「じゃあ良いわね。待ってるから」
そう言って萌咲先輩は本ありがとうとウインクして図書室を出た。
すると先輩が
「じゃあ明日放課後教室に迎えに行くから待ってろよ」と言ってきた
「えっ!?HR長くなるかもしれないし音楽室で合流しましょ」
「後輩の担任坂本だろ?あの先生俺が1年生の頃の担任で、連絡事項言ってさっさと終わらすの知ってるし長くなる事はない。こっちもそうだからダッシュで迎え行く。楽しみにしてろよ」
全然楽しみではないんだが!?みんなの噂にされるの嫌なんだが!?
そう言いたかったが先輩のやる気に押され
「分かりました・・待ってます」と根負けした。
明日が憂鬱になりそうだ。
           ◎
一夜明け萌咲先輩との約束の日
忘れっぽい私だが流石に次の日の事は忘れないしあんな強烈な印象があったから忘れるはずもない。先輩が迎えに来ることも忘れてない。
授業が終わるたびため息ついてお昼も浮かない顔してたらごっちゃんに
「いつもよりテンション低めだけどどうした?食欲無いなら私があんたのお弁当食べるけど」
この食欲お化け
事の経緯話すとごっちゃん大爆笑
「先輩来たらニヤニヤして見るよ笑 超楽しみ笑」
「楽しみにしないで」
言い返したらさらに大爆笑してたごっちゃんを睨みながらお弁当食べ
時間が過ぎあっという間にHR
先輩の言う通りサクサク担任は終わらせクラスの皆で挨拶した瞬間
「後輩~!!!迎えに来たぜ~!!」
大型犬を思わせるくらい満面の笑みで大きい身長の男性がクラスのドアに寄り掛かり叫ぶ
後輩?誰の事?と言う人も居れば
何何~何事~とニヤニヤする人も居てクラス内ザワザワ
私は顔から火出るくらい恥ずかしくて、急いで準備し先輩に駆け寄る途中ごっちゃんが「行ってらっしゃい」とニヤニヤしていたの見え、後で絶対LINEで明日ご飯奢れって言おうと決めた。
先輩の前に来て早く行きますよと言ったらクラスの女の子が「あの仲良いんですか?」って急に聞いて来て何もう~ともがいていたら
私の肩を掴みくるっと体をその子に向かせ「そう!仲良いんだ~用事あるのでお邪魔しました。」と私の腕掴み歩き始めた。私も「で、では」と言い去った。
クラスの視線が無くなったのを確認し先輩は私の腕から手を離した。
「お前のクラス元気なのいっぱいいるな。良い事だ」
「先輩、元気なのは良いですがあの登場の仕方やめてください」
「だって後輩の驚く顔見たくてさ!!俺今日ずっと楽しみにしてたのよ。HR終わった瞬間ダッシュしてバレない様に隠れてたの最高だろ」
「最悪ですよ!明日クラスに行くのが怖い!質問攻めですよ絶対!」
「大丈夫だよと言ってやりたいが最後俺に仲良いのか聞いて来た女の子には気をつけな。」
「それどういう」
「よし着いたなノックするぞ」
音楽室までの階段上り切り目的地に着く
先輩がコンコンとノックするとドア越しから「入っておいで」と微かに萌咲先輩の声が聞こえる。
先輩の 気をつけな に気になりながらも私も先輩と一緒に音楽室に入ると、萌咲先輩が誰も居ない音楽室にポツンと1人スマホいじっていた。
「予想より早かったね2人とも」
「俺が馬のように迎え行ったからな」
「どちらかと言うと大型犬に見えましたがね」
「あはは。本当仲良いねあんたたち。座りなよお菓子もあるし」
私と先輩は萌咲先輩の後ろに並んで座った
萌咲先輩が持って来たお菓子を手に取りお姉さんの好きな人を奪った噂から始まった。
「お姉ちゃんと彼氏さんは中学3年の時付き合ったんだけど、ある日彼氏さんがお姉ちゃんに内緒で誕生日プレゼント選びたいから一緒に選んで欲しいって私に言いに来たのね。快諾して放課後お姉ちゃんが好きそうなお店の前で待ち合わせしあーだこーだ言いながら決まってその日は終わり。それ以降会う事もなく誕生日も上手くいってさお姉ちゃん大喜び。今もタイミング合わせて一緒に帰ったり休みは出かけてるで仲良いよ。でも邪魔が入ったの」
「邪魔?」先輩が眉間にしわを寄せる
「高校受験でお互い違う高校と分かり2人は一旦集中期間しようと私入れて3人で勉強したの。お姉ちゃんが急な用事で来れないときは2人でやってたんだ。しかし当時お姉ちゃんに対して気に入らない女の子居て、お姉ちゃん付き合ってる事皆に内緒にしてたんだけど雰囲気で感じるじゃん?ちょっかい出したかったけど私が居るからちょっかい出せない。ならどうするか?
それなら彼氏と勉強してる妹が奪った話にすれば精神的に追い詰めれる と考えたらしいよ。」
「うわ・・無理やり過ぎる」今度は私が眉間にしわ寄せる
「でしょ笑?その子は何度も私と彼氏さんが勉強してるの見てるから仲良い子に妹が姉から彼氏奪ったのを流してそこからはもう」
「時間の問題ってとこか。あほらしい。」
「私は何も気にしてなかったけどお姉ちゃんは迷惑かけたと思っちゃってね・・彼氏さんと話して1人で勉強しよってなったんだ。」
「そして彼氏さんが1人になって噂流した子は彼氏さんにちょっかい出し始めたと」
「ご名答 そんな事しても事情分かっていたし距離詰められても心動くわけ無かったからすぐ終わったよ。いい気味」
「でも噂は流れたままなんですね」
「そうね。卒業して張本人もお姉ちゃんと違う高校に行ったのは安心したけど噂知ってる人が来ちゃって私も居るしすぐ広まっちゃった。」
萌咲先輩の顔から罪悪感伝わる 自分が言われる事は気にしないけどお姉さんも「彼氏奪われた姉」というレッテル付けられちゃったもんな。
どうしたら消えるんだろう
考えてたら先輩が「そうや何で噂の真実知ってんの?」と聞いた。
「噂流れ始めた時違う子から直接彼氏奪ったの?って聞かれてぶちぎれて流した奴教えろ!!って問い詰めてたどり着いた。えへ」
この人怒らせたら危険だこっわ
「そうだそうだ!ゴミ捨て場のてっちゃんなんだけど、多分しおやんに話した話の続き 彼氏居るかも だよ。」
「何で分かるんですか?あとどうして哲也さんがお姉さん好きと知ってたんですか?」
「高校入って2か月後だったかな?てっちゃんに君のお姉さん可愛いねって言ってきて好きなん?て聞いたら気になってると答えてふーんと思いつつ連絡先教えないよ?自分でアタックしなって返した。」
「つ、強いですね」
「当たり前じゃん!好きな人には自分から聞くのが一番相手に伝わるわよ。そう言って1年様子見たがお姉ちゃんから連絡聞かれた話無かったし、再度協力してと言われたが断った」
「隠してたって事は?」
「彼氏さんと付き合ってる時お姉ちゃん告白されたが断ったって私に言ってきたの報告するんだから隠さないわよ。話戻して後輩ちゃんの言う通り今年の文化祭てっちゃんとお姉ちゃんはクラスの受付当番で一緒になり、その時文化祭回らないか誘ったけど友達と回るから断ったらしい」
「その友達は勿論」
「彼氏さんだよ。去年は向こうとこっちの開催日が重なって来れなかったけど、今年は向こうが早めに開催してズレたから遊びに来てくれるんだ~って喜んでた。当番終わるのが12時半でその後集合してたっぽい。どこで集合してたかは私も知らない」
「その集合してた場面を哲也さんは目撃してたんですね」
「目撃したのは予想だけど会う約束していたのは事実。誘いを断ったのも文化祭終わりに聞かされたから事実よ。それとしおやん口固いし誰にも喋らないから新しい噂は広まらないと思う。」
またしても萌咲先輩は悲しそうにしたが「さあ!もうこんな時間だし解散しよっか。この話はあんた達と私の秘密よ」と急に晴れたような顔して言った。音楽室の掛け時計は17時30分
1時間も話していたの気付かなかった
先輩と私は余ったお菓子も貰い綺麗にし音楽室を後にした。
鍵返してくると萌咲先輩は職員室でお別れ
すっかり真っ暗になった帰り道
私と先輩は途中の分かれ道まで一緒に歩き先輩が「後輩気を付けろよ」と手を振り私は会釈して解散した。1人になった私はどうしたら姉妹のレッテルは消えるのか解決方法なんて分かるはずないのに考えてた。
音楽室に行く前先輩から貰ったホットココアは冷たくなっていた
           ◎
音楽室の一件から一週間経ち図書当番の日になり、司書さんが事務室にストーブ出して「暇な時暖まって良いからね」と言ってくれたので早速利用してる。ゴミ捨て場倉庫思い出すな~と思っていたら
「こんちは~寒い寒い、って後輩居ないじゃん」
聞きなれた声の主
「先輩」と事務室から顔出すとニコッと笑い
「おさぼりですか図書当番さん」と言いながら事務室に入ってきた。
「違いますと言いたいところですが少し合ってますね」
冗談ぽく言うと先輩は得意げな顔して暖まってた時
「やっほー後輩ちゃん居るー?」
一週間振りに聞きなれた声に気付き事務室を出てカウンターに向かうとやはり萌咲先輩だった
「お、居た居た~大山君は居ないの?
「お久しぶりです。先輩はそこに」
のそっと事務室から先輩が出てきて よっ と手を挙げた
「眠そうだな笑 あんたたちに報告あってさ来たんだよ」
報告?先輩と目合わせカウンターに座り聞く事にした
「簡潔に言うと噂がひっくり返ったんだ」
「ええええ!?」私はつい大きい声出してしまい常連さんに睨まれすみません・・と謝ったら先輩2人大爆笑
「はー後輩ちゃん大きい声出せるんだね。」
「そうなんだよ笑たまに後輩リアクション良いんだよ」
「もう・・続き聞かせてください」
「そうだったごめんごめん。実はあの後てっちゃんにお姉ちゃん彼氏居るか聞かれてさ。何で?って聞いたらやっぱり文化祭で男の子と会ってるの見たんだって~特徴聞いたら彼氏さんでさ、これは話すしかないなと全部ばらした。」
「噂もですか?」
「うん。めんどいからついでに話した。そしたら凄い驚いてさ笑 思い出す度笑える」
「でも話しただけで噂ひっくり返れんのか?塩谷に喋ったって口固いんだろ?」
「それがとんとん拍子で進んだんよ」
萌咲先輩が言うには
真実聞いた哲也さんが萌咲先輩にすぐそんな噂変えるよ!と宣言し期待してなかったが、数日後萌咲先輩の所に友達が「萌咲彼氏居なかったの何で黙ってたん~」と言いに来た。出どころは分かっていたので哲也さんに聞きに言ったら、哲也さんから話聞いた塩谷さんがまずお姉さんの美雪さんに事実確認。合っていたので2人の悪い噂を消したいと提案したら
「私もずっと萌咲が悪者になってるのが嫌だった。私が彼氏居るの話していいから助けてほしい」と言ったそうだ。
先輩が「塩谷とお姉さん関わりあったん?」私も思ってた疑問聞く
「しおやんとお姉ちゃん前後の席でたまにお姉ちゃんが勉強教えてて軽く話す仲らしいよ。それで今回提案出来たみたい」
野球部で美雪さんが気になってる子に相談受けていたのを塩谷さんが思い出し、また相談受けたら話すようタイミング見ていたら数日後来たので分かりやすく事実を話した。相談した子はすぐ喋るお調子者であっという間に広がったのだ。
「俺のクラスにはまだ来てないけど」
「そのうち来るよ。今は私のクラスだけだが前より教室の居心地良くなったかな~謝ってきた子も居るし。何と言ってもお姉ちゃんが前より笑ってる気がして嬉しいんだ。でも彼氏居ないのバレて他校交流しよとか彼氏紹介するよとか言われて疲れたわ」
ぐったりしてるけど楽しそうに笑う萌咲先輩が可愛い
「良かったですね。安心しました」
「彼氏作らねえの?」
「私には星野雅英という推しが居るので忙しいの」
星野雅英ってもしかして
「この間本屋大賞取ったホラー作家の星野雅英さんですか?」
そう答えると萌咲先輩はキラキラした目で
「後輩ちゃん知ってるの!?そうなの!ようやく取ってくれてニュース記事の写真もめっちゃかっこよくてさ!この前借りた少し前の本まだ読んでなくて見つけた瞬間嬉しくて~」
私も好きな作家さんになるとこうなるんだよなと思いながら聞いてる横で先輩はスマホで記事調べていた
思いっきり話して満足したのかじゃあまたねとウインクして帰っていった。
本当コロコロ変わる方だったなと手振っていたら
「名前で男だと思っていたが女性なんだな」調べていた先輩が記事見せてきて宝塚の男役トップみたいな雰囲気で女性ファン多そうと思った。
とにかく平和になって良かったと安心した所に
「そいや後輩音楽室の翌日教室で質問攻めされなかったか?」
ニヤッとする先輩
思い出したくない話持ち出すんじゃないよ
「ええ、ええ、教室入ったら皆待ち構えてましたよ。座らされあの先輩とどういう関係なのか聞かれましたよ。」
思い出す度疲れが蘇ってくる
「すまんな~すぐ迎えに行きたかったからさ。でさ」
調べていたスマホからLINEを開き私に
「もしかしたらまた迎えに行くかもしんないし今日図書室に行けないとか後輩風邪引いて休みで居なかったら残念だしLINE教えて」
そういえば私先輩と連絡先交換してなかったのか
迎えに来る場面あるか分からんが確かに私休んでるの知らず先輩が来てみたら司書さんだっただとあれだしな~と考えていたら
「おーい後輩さーん」
先輩のとぼけた声で我に返り「交換しましょ」とスマホ取り出した

静寂の図書室で2人の距離が更に縮む















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