乃木坂46 9thバスラの感想

乃木坂46の9th YEAR BIRTHDAY LIVEを視聴しました。
ファン歴2年の私はライブに足を運ぶのを躊躇していましたが、昨今の事情により配信サービスが充実したため、昨年12月に開催されたアンダーライブに続く2度目の参戦でした。

ライブ全般の感想

全曲披露できないこともあり代表曲と最近の曲とを織り交ぜた乃木坂初心者にも優しいセットリストだと思いました。
ここ数年で多くのメンバーが卒業し、過去曲のオリジナルメンバーも減ってしまいましたがこれを逆手に取り新しいフォーメーションや演出でしっかりカバーできていた印象を受けました。
生駒さん、西野さん、白石さんの代わりは誰にもできませんからね。

『世界中の隣人よ』はもう古い

おおむね心地良い時間を過ごしていましたが、ふいに夢から覚めてしまったのがチャリティーソング『世界中の隣人よ』が披露された時。
全員が普段着風の衣装で距離を開けて歌うところは楽曲の魂を感じる素晴らしい演出でした。ライブ中最も粋だったと思います。
しかし引っかかったのは曲冒頭の齋藤飛鳥さん、生田絵梨花さん、与田祐希さん、山下美月さんが「ステイホーム期間」になぞらえて本を読んだりと家でくつろぐ演出。
そう、半年経った今でも自粛は大事なんです…あれ?

発表当時は誰にとっても先が見えない自粛期間が辛く、とても心に響く楽曲でしたが、僅か1ヶ月後noteにこの曲の感想を書いた時点でも既に古さを感じていました。というのも緊急事態宣言は解除されておりあたかも「ステイホーム期間」「自粛」が遠い過去だったかのように日本人の危機意識が低下していたことは紛れもない事実だったからです。
批判は二行のみにしますが、人命や医療従事者のQOLよりもオリンピックを優先し国民をだまし続けている政府や企業には今でも腹が立ちます。

話を戻すと、在宅なりに大好きな乃木坂46を精一杯楽しむことを心待ちにしていた私は「折角こんな素敵な歌を作ったのに、みんな自粛しなくなってるじゃん」と現実世界に引きずり戻されてしまったのです。「あの頃大変だったよね」と昔を偲ぶ老人のように振り返りつつ不要不急の移動を繰り返す人にもこの歌が届いているとは思えません。
はじめから普段着衣装で全員で歌っていればここまでのようなことを考えずに済んだのに。結局『隣人よ』以降のライブはあまり楽しめませんでした。
もちろん悪いのは演出でもメンバーでも楽曲でもなく危機意識のない一部の人間や組織ですし、私も思い込みが激しいところがあるので勝手に落ち込んでいた面もありますが、残念で仕方ありません。

『246』と『僕僕』に憶えた違和感の正体

今回のライブでは当然小室哲哉作曲の『Route 246』と最新表題曲『僕は僕を好きになる』も披露されました。
それぞれのリンク先の記事で私は『246』を魂のない話題だけの作品、『僕僕』を歌いたくない一方的な説教だと酷評しています。
もちろん他の人の好き嫌いや評価についてあれこれ言うつもりはありませんが、前述の『隣人よ』が思考のきっかけとなり、この2曲(そして乃木坂の2020年を)あまり好きになれなかった理由が少し分かった気がしました。
一言で述べると、「グループが色々背負い過ぎたから」でしょう。
まず『246』も『僕僕』も今回の世界的な危機がなければ確実に生まれなかった楽曲です。幻の26thはやはり夏曲だったのでしょうか。
前者では外部の小室さんを呼んで、後者では秋元さんがもう一度乃木坂を見つめ直してとにかく「変化する乃木坂」に拘った作品です(PRを見れば一目瞭然だと思います)。心構えはとても立派ですが、少々無理しすぎなのではないでしょうか。グループが下り坂に転じたところで今回の危機が訪れたためファンを飽きさせないのに必死なように思えます。
さらに某ゲームのタイアップ曲『Wilderness world』の発表でこれは確信になりました。
楽曲とは別に「私たちはそれでも変わって立ち向かうんです」的なメッセージを乃木坂46は背負わされてしまったと思います。優秀なメンバー、スタッフ、クリエイターが揃っておりこれまで充分濃密なエンターテインメントを提供してきたにも関わらず、変わるところを間違えています。
年度末に卒業する堀未央奈さんの言葉を借りれば「店は同じだが新しいメニューを考える」のが長く愛されるエンターテイナーの基本だと思います。
変化にのみ固執し店を置き去りにしたのが『246』『僕僕』という新メニューなのではないでしょうか。

ライブの良かったところ

気を取り直して。
個人的に好きだったところを挙げます。
・『ぐるぐるカーテン』
・『シンクロニシティ』終了後の梅澤美波さんの安堵の表情
・渾身の『バレッタ』
・1期生の新解釈『サヨナラの意味』
・すぐ採用された『狼に口笛を』シルエット
・『世界中の隣人よ』の全員の部分
・尺にきちんと配慮する生田絵梨花さん
・スカッとする渡辺みり愛さんのダンス(特に『アナスターシャ』)
・樋口日奈さんの美声
・緊張しながらも良く見せてくれた新4期生の笑顔
・直筆メッセージ(全部撮りました…)
・(新年度は暫く誰も卒業しないであろうという淡い期待)

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