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【サウナ法務】弁護士が教えるサウナに関する法律問題まとめ

サウナブームにより爆発的に増えた需要に対し、サウナ施設の開業ラッシュという形で供給が追いついてきた感がある、2023年の今日この頃。
何度かキーワードを変えてgoogle検索をしましたが、サウナに特有の法律問題はあるのか、あるとしてどのようなものがあるかを解説した記事・書籍は、どうやら世の中にあまりないようです。

そこで、本記事ではタイトルのとおり、サウナに関する法律問題を弁護士が分かりやすくまとめます。
利用者側が気を付けるべき法的論点は特にないかと思いますので、主にサウナ施設の運営・開業に関して、事業の流れに即して説明します。
個別のトピックについて詳しく論じるというよりは、必要なタスク・あり得るリスクを、わかりやすく、網羅的に挙げようというコンセプトの記事となります。

お金集め・仲間集めの段階

サウナ施設を開業するに当たっては、居抜きでもない限り、数百万円〜数億円のコストがかかるのが通常でしょう。そうすると、中規模〜大規模の会社でない限り、資金調達が必要となるのが普通です。数人が資金を持ち寄って共同で事業を立ち上げることもあるでしょう。

投資家から資金を受け入れる場合は「出資契約(投資契約)」、銀行等から資金を借り入れる場合は「金銭消費貸借契約」を締結することになります。
運営会社の出資者(株主)が複数になる場合、「株主間契約」を締結して会社運営の方法やM&A等に関する事項を決めるべき場合もあります。
これらの契約では、譲渡する株式の種類及び数、返済条件、(連帯)保証の有無、イグジットの方法等、注意して決めるべき事項が多いため要注意です。不正を防ぐために資金管理の担当者・方法も決めるべきでしょう。

クラウドファンディング」で広く一般の人から資金を集める場合もありますが、特に、出資者に対して無料利用権を付与する場合等、無理のない条件設定が重要です。1万円の出資で無期限無料食べ放題パスを発行したものの、パスの没収や閉店等の事態に発展した「令和納豆」の事件は記憶に新しいところです。

開業準備段階

1. 会社設立

開業場所、資金調達等についてある程度の目処が立ったら、個人事業主として事業を営む場合を除き、会社というハコを利用することになります。
会社の形態には株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の大きく分けて4種類があるため、事業規模や節税等の観点から適切な種類を選択して設立することになります。
既に設立済みの会社を利用する場合、定款及び登記上の事業目的に「サウナ事業」に関する記載を追加するのを忘れないでください。

2. 営業許可

許認可の取得の点は非常に重要です。
サウナ施設は、公衆浴場法上のいわゆる「特殊公衆浴場」に該当します。よって、開業に当たっては原則として都道府県知事(or市区長)の許可が必要となります(旅館・老人ホーム等の例外もあります)。

また、許可を得るためには、各都道府県の条例が定める構造設備基準・適正配置基準の遵守が必要です。
営もうとするサウナ施設の構造次第では、許可が下りないことがあり得ます。よって、東京都南多摩保健所のwebページにおいて下記のように述べられているとおり、物件の決定・内装工事開始等の前に管轄の保健所に相談するべきです。

公衆浴場に該当するかどうか、また、公衆浴場営業の可否について判断が必要となりますので、公衆浴場を経営しようとする方は、施設の平面図などを持参のうえ、申請前(計画段階が望ましい)に保健所にご相談ください。

https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/minamitama/youshiki/yokujyou.html

斬新な設備であるなどの理由で保健所が難色を示す場合、弁護士に依頼して条例・通達等の解釈論を展開して保健所を説得することもありですね。

許可取得の手続きについてのモデルは以下のとおりです。都道府県、管轄保健所により手続きが異なる場合があります。

東京都南多摩保健所「公衆浴場(その他2号)の手引き」より

3. 土地・建物

2023年の技術ではリモートでサウナに入浴してもらうことはできないので、土地・建物が必要となります。テントサウナのように建物内にサウナを設置しない場合でも、公衆浴場法上、着替え等のために建物又はそれに準ずる設備が必要になるでしょう。
建物(全体or一部)を借りる場合、建物のオーナーと「建物賃貸借契約」を締結することとなります。賃貸借契約においては使用する設備の種類、外気浴場所の設置、窓の開け方等を制限されることが多いです。
土地だけを借りて建物(orテントサウナ)を自ら建てることや、土地建物を買い取ってしまうこともあり得ます。

イチから建物を立てる場合を除き、建物内にサウナ設備を設けるためには「内装工事請負契約」を締結して内装を工事する必要があります。
サウナ施設の施行が可能な工事業者が限られているところ、サウナブームによりなかなか業者が手配できないという話も聞きます。

4. 設備

さらに、サウナ室・サウナストーブ等の機材を購入(orレンタル)する必要があります。
もちろん、価格・納期等の条件の吟味は重要ですが(そもそもきちんと契約内容を紙で明文化して締結することが重要です)、特に、北欧等の海外業者から輸入する場合で国内の代理店を通さないときは、契約締結は慎重になるべきです。
輸入の際の関税負担の問題や、容易に返品できないという問題があります。契約書が英語であったり、詐欺業者の場合もあるかもしれません。

5. その他

その他諸々の物品購入契約、業務管理上必要なソフトウェア・アプリの利用契約も必要となるでしょう
従業員を雇う場合、雇用契約書就業規則36協定届出の準備が必要となることが多いです。
対顧客との関係で利用規約の作成も必要です。利用規約においてはキャンセル規定が重要です。

営業開始後の段階

ここまで準備できるとようやく営業を開始できます。
おめでとうございます。ただし、まだ法務をないがしろにはできません。
利用規約を適宜修正する必要があったり、無断キャンセル・器物破損等の顧客トラブルへの対処も必要です。
社内規則の整備・残業代・有給休暇取得義務・衛生管理者設置等、労務上の問題への手当ても必要です。



以上、開業までの流れに即して法的な問題をざっと見ていきました。
「この点どうなの?」、「こういう問題も多いですよ」等の意見がありましたら、是非コメントください。
私もサウナ好きの弁護士としてサウナ関連のお仕事を増やしたいなと思っておりますので、事業者の方からの問い合わせは大歓迎です。

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