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【詩】展望デッキにて

「今日だけだよ」
仕方なさそうに呟いて
ポケットに準備しておいた100円玉を取り出す

動かないハンドルの間
音が出る色あせた液晶に 子どもは夢中だった
となりのゾウの遊具に腰かけ
母親は 息子と同じくらい笑っていた

なかなか出発しない飛行機
めずらしく「もう帰ろう!」と言わない母親
人工芝の上 赤い滑り台を降りるとき
勢いあまって まんまるなお腹が見える
母親は 息子と同じくらい笑っていた

やがて
滑走路に入った飛行機が
切り裂くような音を立てて飛び去るころには
二人の目線は同じ高さにあった
二人とも
いままで以上にただ黙って
その飛行機が小さくなっていくのを見ていた。

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