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愛するということ

今日は朝っぱらから千葉の奥地に臨場した。

昨日。東京→神奈川→埼玉→山梨→静岡→帰宅と。とんでもない距離を走り回って朝方帰宅していた為、稀に見る最悪なコンディションでの到着となった。

依頼内容は台所の給水接続部位からの漏水。
依頼者はその家に住む御高齢のおばあちゃん。
蛇口部分も含めて劣化が激しい為台所の水栓器具を新しいモノに交換する事になった。

作業中。ばあちゃんは言う。

ばあちゃん「本当はね。もっと早くに取り替えようとしてたの。」
「うちの人がそろそろ変えないとってずっと言ってたのよね。」

菊池「ご主人は今日はお出掛けですか?」

ばあちゃん「そうね。3年前にお空にお出掛けしたままって言えばいいのかしら。」

菊池「あ。。。…。」

ばあちゃんのご主人は丁度3年前に亡くなった。
同郷にて知人の紹介で知り合った2人は親達の反対を勘当覚悟で押し切り、半ば駆け落ちの様な形で関東に渡ってきたと言う。

ばあちゃんは続ける。
「身体の大きな人でね、本当に厳しい人なの。口はキツいしモノにも当たる。」
「そのくせ何にも出来ない。」
「家の事はぜーんぶ私に任せっきり。電子レンジすら触った事ないのよ?信じられる?笑」

菊池「………。」

「でもね、本当にカッコ良かったの。うちの人。本当に素敵だった。」

それを聞いてて私はついさっきまでのコンディション最悪&疲労で不機嫌。
そんな状態から心が洗われて行くような。
そんな気持ちになっていた。

そしてばあちゃんは沢山のご主人との写真を見せてくれ、思い出話を聞かせてくれた。
昨日の事を話すかのように。

菊池「あの…。」
「寂しいですか?いま。」

ばあちゃんは笑う。
「全然っ!笑」
「あの人が亡くなってからは死ぬことへの怖さのようなモノは何一つ無くなったのよね。」
「身体の半分はあっちに行ってるような感覚?」
「どうせすぐに会えるから、今はあの人がやり残した忘れ物を片付けて、私も1人だからこそやれる事を片付けなきゃなのよ。」
「だから忙しくて寂しいなんて思う暇はないわ。」

「今日の蛇口の交換もその一つになったわね 笑」

あぁ。なんなんだろう…。

この。全てを自然に受け入れて生きてる優しい感じは。
そして自分の中の一部のように亡くなられたご主人を想うこの温かさは。


菊池「愛してるんですね。」

ばあちゃん「ふふふ。」
「愛してるって言うのね。きっと。この気持ちは。」


100本の恋愛小説を読むよりも、胸の中がくすぐったくて穏やかで。
そして何だかたまんねぇ…。
そんな気持ちになれた今日の現場。

ばあちゃん「千葉は遠いけど、いつでも寄って良いのよ?」
「実家だと思って遊びにいらっしゃい。」
「私の故郷のお菓子を取り寄せて待ってるから。」


温かくて優しい…。
そんな良い日だった。


菊池真琴

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