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本の学びを記憶すべく、「帯」づくりワークをやってみた


「ライターになるための技術を、どうやって勉強したんですか?」


ライターになってから、気づけば2年半。ときどきこんな質問をされます。

でも私の場合、お恥ずかしいことに「文章の書き方」をほとんど勉強していません。ノウハウ本を読むのも得意じゃなくて、何ページか読んで止まってしまう……そんなつまづきを繰り返してきました。

ライターとしてレベルアップするには、あらためて腰を据えて勉強したほうがいいかもしれない。

そう思っていたタイミングで、所属している編集チームの「道場」が始まったので、参加を決めました。

この道場では文章の書き方を学ぶために、通常講義に加えて、6月からは読書会もスタート。一週間に一冊ずつ、課題図書を読み進めることに。

うーん、やっぱりノウハウ本を読む手が止まる……。

と思っていたら、道場の師範から

「『読んだだけ』にならず、書かれていることを身体に落とし込めるような読書会にするために、アイデアを考えてください!」

とのお題が。

読書会にぴったりのワークを提案し、そのワークを自分で設計してえみる。

そこで私は本の「帯」をつくるワークを提案し、実際にやってみたら盛り上がりました。

ノウハウ本が苦手だった私も、ワークを通じて楽しく自分の学びを得られたので、今回はこの「帯ワーク」のやり方をご紹介します。

「帯を書く」と、本の内容が「記憶にとどまる」

そもそもこの「帯ワーク」を思いついたのは、以前読んだ中前結花さんのnoteがきっかけでした。

おすすめしたい本の帯を自作して、写真と紹介文で記録に残しているそう。

本は好きだけれど、読んでも読んでも忘れてしまう。
だけど、帯を書くようになってからは、記憶にとどまる量も増えている
ただただ布団に寝転んで、大事なお酒でも飲むようにチビチビ気ままに読みすすめていくのと、「もしも人に薦めたい本だったら帯を書かなければいけない」と思いながら読むのでは、なんだか気持ちが違うのだ。

この部分が気になって、「帯をつくる」という記憶方法があるんだな、となんとなく覚えていました。


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道場は毎週オンラインで開催している

道場で読書会のアイデアが募集されたとき、ポイントだと思ったのは「学びの身体化」。

本を読んでもだいたいの内容を忘れてしまうけれど(私だけかも)、せっかくみんなで読むのだから、学びを自分の一部にできる方法はないかな……。

そう考えたときに、中前さんの帯づくりを思い出したのです。

一冊の本を帯にまとめるには、誰かにおすすめしたいと思ったポイントを自分の言葉で伝える必要があります。

つまり、この本の内容を自分の体内に取り込んで、自分の視点で得た学びを言語化する。その過程で、普段よりも深くインプットできる。これが帯づくりなのかな〜と。

言語化にはその人自身が反映されるので、複数人で同じ本の帯をつくるワークにしてみたら違いが明確になっておもしろそうだなと思い、「帯ワーク」を提案しました。

「帯づくり」の学びを最大化するための条件設定

この「帯ワーク」のアイデアをもとに、ペアになった藤原さんとワークを設計。道場の1時間半を使って、6人+師範で学びをどう最大化できるかな、と考えました。

今回の課題図書は、上野郁江さんの著書『才能に頼らない文章術』。

実践的な文法チェックシートから、発信における「正しさ」に関する考察、メディアマインドをテーマにしたインタビューまで。抽象にも具体にも触れられていて、「ノウハウ本」にとどまらない書籍です。

この書籍に書かれていた、文章を書くための3つのポイントがこちら。

① 誰に
② 何の目的で
③ 何を伝えるか

ワークでは参加者が「③ 何を伝えるか」に注力できるように、「① 誰に」「② 何の目的で」を絞ることに。

① 帯を届けるターゲットを絞る(どんな課題を持っている人?)
② 帯のゴールを明確にする(①の人にどうなってほしい?)

そもそもこの道場の目的をさかのぼると、チームに新卒入社しているメンバーのスキルアップ。というわけで今回は、

① ライターになったばかりの新入社員・辻野さん
② 帯をきっかけに、この本を本屋で手にとってもらう

と条件設定しました。

そして、自分の帯がターゲットにきちんと届いているかを判断してもらうために、辻野さんに一番響いた帯を選んでもらうことに。

ここまでの内容をワークの前に参加者に事前告知しておき、全員にしてもらった準備は以下の2点。

・辻野さんに、実際に今どんな課題を抱えているかを共有してもらう
・「辻野さんに本をおすすめするなら、どんなポイントを伝えたい?」という視点で本を読んでくる

これに加えて、ワーク担当である私たちは以下の準備もしました。

・別の書籍を使って、実際にワークをやってみる
・詳細なタイムスケジュールを設計
・「このワークはどこを目指しているのか」「今は何をする時間なのか」などが分かる簡単なスライドを作成

タイムスケジュールを考えていたら、せっかく道場の場を活用するので、この場でやる意味を持たせたいとの思いがむくむくと。

というわけで個人ワークの時間を短くし、フィードバックをその場で反映できるようにワークを二段階に分割しました。

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そして自分でワークをやってみたら、書き言葉だけなく話し言葉にすると学びの身体化が進むと実感したので、プレゼンの時間も足しています。

これでワークの設計完了。流れをまとめてみました。

個人ワーク①:まずは帯に入れるコピーを考える(10分間)

➡︎中間発表:考えたコピーを1人1分で発表、お互いにフィードバック

個人ワーク②:コピーをブラッシュアップし、自分が書店員さんだったらターゲットに対してこの本とコピーをどう紹介するのかを考える(10分間)

➡︎最終発表:完成させたコピーを発表。そしてターゲットに本を手に取ってもらえるように、この本はどんな課題を解決してくれる本なのか、なぜそのコピーでおすすめしたいのか、1人3分で発表

➡︎審査:ターゲットである辻野さんに響いたものを「辻野賞」として選んでもらう。特別に、この道場の師範にも「西山賞」も選考

➡︎発表 & 師範からのフィードバック

ちなみに画用紙やペンを全員に用意してもらうと大変かなと思い、今回は手を動かして実際に帯を作成する工程を外しています。

帯のコピーを20分で考える「帯ワーク」をやってみた

微調整した結果、最終的なタイムテーブルはこのようになりました。

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当日はこのタイムスケジュールを、参加者が見えるところにぺたり。

あらためて今日のゴールを最初に共有し、

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「今どこにいるんだっけ」と迷子にならないよう、今日の流れも参加者が見えるところに貼っておきました。

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ワークの最初に、「誰に」「何の目的で」帯をつくるのか、この2点を復習。

① 誰に:ライターになったばかりの新入社員・辻野さん
② 何の目的で:帯をきっかけに、この本を本屋で手にとってもらうために

続いてワークをスタート。コピーを考える時間を「10分」に設定したら、個人的にはちょうどよかったです。

中間発表でコピーと一緒に「どんなことを考えてこのコピーにしたのか」も話してもらったので、このあと大きく方向転換する人も。

2回目の個人ワークを経て全員のコピーが揃い、賞を選んでもらいました。

木村さん
「ライターに向いていない」と呟くことをぐっと堪えているあなたへ
稲葉さん   ★道場の師範・西山賞★
サブキャッチ:文法、構成、表現…、どんな悩みもどんとこい!
メインキャッチ:文才が足りないと感じるときに読む一冊
藤原さん
3年分の現場経験が、この1冊で会得できる。
基本的な文法や論理展開、読者の感情分析からマインドセットまで、この1冊で丸わかり。

中塚さん
『伝える術』を、前から読む、後ろから読む。
編集者の文章術をまとめ直した一冊
辻野さん
文字であふれる今、
構成力を鍛えると、
あなたの文章が届いてく

■ 菊池   ★駆け出しライター・辻野賞★
「論理」の力で、読者に届く文章を

同じ本で、同じ条件設定から、これだけ多くのコピーが出てきました。

加えて、帯のコピーとプレゼンに個性が表れたり、本の読み方や書店での本の選び方の話も出てきたり。ずっと盛り上がっていたように思います。


ワークを終えたら、最後は師範である西山さんから全員にフィードバック。

一瞬で手に取ってもらうための帯は、ローコンテクストであること、見た目の印象付けが求められるよね、ターゲットは自分の課題をこんな解像度で分析しているだろうから、こういう言葉が響きそうだよね、など。一同「ターゲットの読み込みが深い……」としみじみしました。

最後に、西山さんからも自作コピーを発表!

西山さん
読みにくい、わかりにくい、つまらない……
だけど原因がわからない!
そんな“迷文”を“明文”に変える、
ライターズマニュアル決定版!!

わかりやすすぎ〜〜!


ちなみに、実際のコピーはこちら。

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表紙との情報のバランス、文字を実際に配置してみたときの強調。帯って奥深いですね。

「帯ワーク」で、自分の傾向を知れる

終わった後、参加メンバーからはこんな感想があがっていました。

仲間と比較できるから自分の傾向を把握でき、次に活かせる。自分を卑下するのではなく、どんな特徴があるのかを理解し、自分と上手く付き合っていきたいなと思いました。

私はワークが終わってから、自分のコピーを帯にしてみました。

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自分でつくってみたら意外と時間がかからなかったので、コピーを考えた後にみんなで帯を実際につくる工程まで入れたワークもおもしろそうです。


制限時間内に、いつもと違う頭を使って、ひさしぶりに手を動かして、自分が学んだことを話し言葉で伝えて。

お互いの違いをおもしろがって、学び合って。

みんなで一緒にやってみる「帯ワーク」、とても楽しかったし、ここでの学びがしっかり身体に染み込んでいきました。



「ライターになるための技術を、どうやって勉強したんですか?」

この質問をされたら、帯ワークをおすすめしてみよっと。


引き続きライティング関係のノウハウ本と向き合っているので、「こんな読み方をしたら、学びになったよ!」という発見があったら、ぜひ聞かせてくださいね。


* * *


今回のワークでアイデアをお借りしたエッセイスト・ライターの中前結花さんは、「#わたしが帯を書いたなら」というシリーズで自作の帯をnoteに投稿されているので、こちらもぜひ。

帯だけでなく丁寧な紹介文も読んでいると、中前さんが楽しく帯をつくっている様子が伝わってくると思います。

中前さん、ご自分の取り組みをnoteで共有してくださってありがとうございました! 

言葉をつむぐための時間をよいものにするために、もしくはすきなひとたちを応援するために使わせていただこうと思います!