見出し画像

夏の食卓

枝豆が好きだ。母が枝豆を家庭菜園で作っているので、
夏の食卓には一人一つボールいっぱいの枝豆が並ぶ。
一般的な大のボールだ。お皿には移さない。茹で上がってボールのまま食卓に並ぶ。私も父も母もそれを黙々と食べる。

手を止めない。枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、とうもろこし、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、トマト、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、ナス漬け、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、冷奴、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、枝豆、ナス漬け

枝豆ととうもろこしとナス漬けとトマトと冷奴でお腹がいっぱいになる。
至福である。
この夏の食卓が大好きだった。
母が元気で枝豆をいつまでも作り続けてほしい。今年も作っている。ナス漬けも大好きだ。ナスは買ってきていたが、母の浅漬け具合が美味しい。
弟は枝豆もナス漬けもあまり食べなかった。私が見るときは、肉とご飯しか食べていない。私が「枝豆、美味しいよ」と言うと、一つ食べて「うん」という。食べ方は人それぞれだ。

この夏の食卓を自分で作れるようになりたい。枝豆は買うと高いので1人分をたくさん食べるには自分で作れるようになりたいと思う。
今年はもう食べる時期になったので来年の目標だ。
ナス漬けも自分で作れるようになりたい。
梅シロップは美味しくできるようになった。
とうもろこしもふっくら蒸すこともできる。

少しづつ少しづつ。大事なものは無くしたくない。
母に対して思うことはいろいろあるし、上手く話せなくても、笑顔で返事をすることに決めた。

祖母が亡くなって後悔したことがある。
なんでも許してもらえることをいいことに、不機嫌をぶつけていた。
亡くなってから、もっと笑顔を見せていたらよかったなと思った。
私はおばあちゃんが好きだった。めんどくさいことや、部屋に勝手に入って私の本を持って行ったり、口が悪かったりしたけど、大好きだった。
時々祖母のお布団に入って、本を読んでいる隣で寝た。祖母のふわふわの柔らかい二の腕を触っても嫌がらなかった。
怒ることはあまりなかったような気がする。覚えていない。私がぎゃあぎゃあ怒っても「なにお〜!」とか言って怖くなかった。何も話さなくてもよくて、居心地がよかった。

祖母が亡くなってから一度だけ夢に出てきてくれたことがある。
私の名前を呼んでいた。何度も。朝起きて、姿というより祖母の声が頭に残っていた。ただ名前だけ呼んでいた。私が会いたかっただけなんだろうか。
祖母の笑顔が好きだった。
私が笑えば、祖母も笑った。もっと笑えばよかった。
もうこの後悔はしたくない。だから笑っていようと思う。
まだ間に合う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?